
評価:★★★★ 4.0点
この作品には、ビックリしました。
戦争が終わった直後の日本にありながら、ここには間違いなく明日への希望と光に満ちた輝かしさが感じられます。
こんな、オシャレでスマートで洗練されたロマンチック・コメディーが、1949年に公開されていたことに驚きます。
映画『お嬢さん乾杯!』ストーリー
自動車修理工場を経営する青年・石津主三(佐野周二)は弟の五郎(佐田啓二)と2人暮らし。そこに、元華族の令嬢・池田泰子(原節子)との縁談が持ち込まれた。圭三は初めは乗り気でなかったが、お見合いで泰子と会ってみると美しく優雅な彼女を気に入ってしまう。デートを重ね、結婚の承諾を受けた圭三は、ある日に池田家を訪問する。しかし、そこで泰子の父が詐欺事件の巻き添えで刑務所に入っていることと、池田家が抵当に入っていることを知る。そして、泰子が斜陽になった家のために、圭三の援助を得る目的で結婚に同意したことを知り、落胆する。しかし、今は泰子を愛している圭三は、一つの決断をする・・・・・・
映画『お嬢さん乾杯!』オープニング
(製作国 日本/製作年1949/上映時間89分/監督 木下恵介/脚本 新藤兼人)
映画『お嬢さん乾杯!』出演者
佐野周二(石津圭三)/原節子(池田泰子)/佐田啓二(高松五郎)/坂本武(佐藤専務)/村瀬幸子(バーマダム)/
永田靖(泰子の父)/東山千栄子(泰子の母)/森川まさみ(泰子の姉)/青山杉作(泰子の祖父)

映画『お嬢さん乾杯!』感想 |
この映画が、どれくらいすばらしい映画か物語る後日談があります。
この映画は1949年、戦争終結して4年後に公開されました。
当時GHQに占領されていた日本は、すべての映画を「GHQ民間情報教育局」が検閲していました。
そして、この映画を見た当時の情報教育局長カーミット・R・ダイク准将がその出来栄えにビックリして、アメリカ本国で上映会を開いたそうです・・・・・そこに、オブザーバーとして出席していた映画監督がいました。
その監督ビリーワイルダーもこの映画に感動し、貴族的なヒロインと庶民的なヒーローという組み合わせを使って、1953年に一本の映画を撮り上げました・・・・・そう「ローマの休日」です。

というのは・・・・・ゴメンナサイ・・・・
嘘です。
でも、こんなウソがまんざら無い話じゃないと思えるぐらい、良くできてるし、原節子クライマックスの決意表明のセリフなんか「ローマの休日」のアン王女の最後のセリフとほんと似ているんです。
原節子はオードリーとだっていい勝負です、佐野周二、佐田啓二もいい味出しています。
新藤兼人のオリジナル脚本は、フランク・ダラポンにだって引けをとりません。
何より、木下恵介のこのセンスはビリーワイルダーに負けていないと思います。
いっそ日本の「ローマの休日」と言わせて頂きましょう。
物語のあらすじは、華族の令嬢である池田恭子(原節子)が斜陽となった一家の為に、新興成金の自動車工場の青年社長(佐野周二)と見合いをし、無事結婚できるかというようなお話です。
このストーリーの中には、第二次世界大戦後の日本の世相が織り込まれています。
この映画は戦争が終結して4年後だと申しましたが、激しい社会的な構造変化の真っ只中で、貴族のお嬢さんが身売りしたとか、成金が名家の令嬢を愛人にしたりというような悲劇がソコココにあったそうで・・・・
そういう点では、 もう過去の価値観は壊れて、金銭以外は信じられなくなっている世の中です。
また、この頃の結婚は基本的に、親同士が決めた相手と結婚するというのが、当然のことでした。
それに背けば勘当されても文句は言えません。
結婚とは当人同士の愛情によって成立するものではなく、基本的には家と家との結びつきです。
そういう意味では古い因習は変わらず有って、人々を縛っています。
しかし、そんな時代背景にあって、この映画では名家のお嬢様に対して一貫して伝える、成金の青年実業家のメッセージと基本的なスタンスに感動します。
彼は言います。
「僕はあなたを見た瞬間に好きになった。あなたは、どうなんですか?僕を好きですか?」
「心から好きでなければ、不幸になります。」
「お金はいくらでも援助します。でも結婚は気持がなければできません。」
・・・・・今現在聞いてもシビレるセリフです。
終戦直後の焼け野原の時に、お金が全てで、結婚と恋愛が結びついていない、この時代に「お金じゃない、結婚に必要なのは愛だ」という言葉を聞いた観客の驚く顔が目に浮かびます。
そして、映画のストーリーは「愛」をハッキリ口にしない「お嬢様」の為に、「僕よりもっとふさわしい人がいる。」からと、青年はお金の援助だけをして身を引くのです・・・・・ただ「お嬢さんに乾杯」をして。
この映画には、戦後の荒れた世相に向けて、木下監督が訴えたい高い理想が決して押しつけがましくなく、表現されていると思います。
戦後4年の混乱期に、あえて、こんな都会的なロマンチック・コメディーを撮ったのはホントに奇跡だと思いますし、この映画を苦しい中で作り上げた日本映画界に心から賛辞を贈りたいと思います。
そんなこんなで、もう一度言わせていただきますが、いっそ日本の「ローマの休日」と呼ばせて頂きましょう。

映画『お嬢さん乾杯!』解説 |
ここから先は「こんな古い映画なんて興味ないよ」なんていう皆様に向けて、少しでも興味を持っていただこうという、この映画に出ていた日本の映画スターのご紹介です。
この映画に出ていた、昭和の大女優「原節子」
小津安二郎監督に出ている彼女の美しさは、神々しいほどです(『晩春』レビュー)
<原節子トリュビュート>
もう一人の主役「佐野周二」は、善良な青年の役が良く似合います。



この映画には、主役の佐野周二の弟役で「佐田啓二」が出ています。佐田啓二は二枚目の役が良く似合います。



だんだん面白くなってきましたので、この映画を離れて昭和のスター列伝を続けたい所ですが・・・・またの機会に。
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ありがとうございますm(__)m
「最後から二番目の恋」ありましたね〜(^^)
古い映画で恐縮です・・・日本映画史を代表する監督と俳優陣ですので、何となくオススメしたくなったということですm(__)m
真面目にそうなんだ〜と読んでいました(笑)
昔の映画の方が深みがあって良さそうですね。
ありがとうございます(^^)
ウソつきで申し訳ありませんm(__)m
木下恵介監督はファミリードラマの元祖のような方で、歴史的な一本としてご紹介です。