2016年08月18日

『フルメタル・ジャケット』天才キューブリックの戦争映画!/意味・あらすじ・感想・解説

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評価:★★★★★  5.0点

この映画は天才スタンリー・キューブリック監督の、ベトナム戦争映画なのだが・・・・ほんとにビックリする!
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映画『フルメタル・ジャケット』ストーリー・あらすじ

ヴェトナム戦時下のアメリカ海兵隊新兵訓練基地に訓練を受ける新兵、ジョーカー(マシュー・モディン)、パイル(ヴィンセント・ドノフリオ)、カウボーイ(アーリス・ハワード)たちが入隊してきた。彼らは鬼のような訓練教官ハートマン(リー・アーメイ)から苛酷で厳しい訓練でシゴきまくられる。特にハートマンは不器用なデブのパイルを嫌い、厳しく責め立てる。遂に卒業前夜パイルはハートマンを撃ち殺し自殺する。そんな事件を経つつも、新兵はベトナムで海兵隊員としてそれぞれの部隊に配属されて経験をつむ。ジョーカーはダナン基地で北ヴェトナム軍の激烈なテト(旧正月)攻撃を受ける。ジョーカーはカメラマンのラフタマン(ケヴィン・メジャー・ハワード)とともに最前線へ向かう。そこで小隊のタッチダウン軍曹(エド・オーロス)、アニマル・マザー(アダム・ボールドウィン)エイトボール(ドリアン・ヘアウッド)、クレイジー・アール(キアソン・ジェキニス)の隊員と、新兵訓練所で同期のカウボーイと一緒になる。一行は最前線の銃火の真っ只中に放り込まれる・・・・・・・・

映画『フルメタル・ジャケット』予告


(製作国 アメリカ/製作年1987/上映時間116分/監督スタンリー・キューブリック/脚色スタンリー・キューブリック、マイケル・ハー、グスタフ・ハスフォード/原作グスタフ・ハスフォード)

映画『フルメタル・ジャケット』予告


ジョーカー(マシュー・モディーン)/レナード・ローレンス(ヴィンセント・ドノフリオ)/ハートマン軍曹(R・リー・アーメイ)/カウボーイ(アーリス・ハワード)/アニマルマザー(アダム・ボールドウィン)/エイトボール(ドリアン・ヘアウッド)


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映画『フルメタル・ジャケット』感想・解説


まずは驚くことの第一が、英語で言ってはいけない言葉のオンパレード、罵詈雑言の雨あられ!
訓練所(ブートキャンプ)で鬼軍曹が、新兵に訓練を課するシーンである。
訓練中ずっと、罵倒し、詰り、蔑み、嘲笑し、怒声を上げ、嘲弄し、憎まれ口を叩く。
映画の前半部分は新兵はひたすら、汚い言葉の乱発に耐え続け、それは見ている観客側も同様だ。
この訓練キャンプの虐待のごとき鍛錬に、映画の半分を費やすのだ。



前半の罵声による口撃に変わって、後半は激しい銃火の攻撃ベトナムでの実戦のシーンである。

この後半の戦場シーンも又、前半にも増して、凄まじい。
まるで口を開くことも出来ないほど、激烈な戦闘が目の前で繰り広げられる。
それはまるで、空気よりも銃弾の方が多いと思われる位の、息つく暇も無い両陣営の銃撃合戦だ。
これを見た時、なるほど、実際の戦争とはこういうものだろうと納得した。
いままで見た映画の戦闘シーンでは、戦う人間を表現する余裕があった・・・・・この映画においては、戦う人間などは描いている余裕すらない。
それはハリケーンに襲われた子供が、泣き叫びながら物陰に隠れている姿となんら変わらない。
この戦闘シーンだけで、見て損はない。

本当に戦争に行きたくなくなる。

見ている間じゅう、前半は汚い言葉、後半は銃弾を、圧倒的な物量で浴び続け、そして見終わってからシビレタ頭で考えざるを得ない。

今見たものは何だったのかと。

ボンヤリと脳裏に浮かんできた想いとは、人間が後半の凄まじい戦闘行為を行うためには、前半の訓練によって人間性を麻痺してしまわなければ、戦場に足を踏み入れる事すらできないだろうという、想像だった。

そこでようやく気が付いたのだ。images.jpg
題名のフルメタルジャケットの意味に。
それは、銃弾の弾頭を鉄で皮膜したものを意味する。
そうする事によって、通常だと変形してしまう弾頭の貫通力を、飛躍的に向上させる。
戦争に行く人間にも、同じ工程が必要だというわけである。

人間性にメタルジャケット=鋼鉄被膜を被せ、戦場を突破可能な兵器に変えてしまうのだ。
 
images (2).jpg戦争行為もそこで戦う人間もホントに異常なのだというのが、変な言い方だが、五感から体に摺り込まれるように感じられる映画である。
この映画を見て思うのだが、戦争が人類にとって最大の罪悪であるのは当たり前の話だが、更に個人にとっては、人格を変革し、強制的に殺人を犯させ、洗脳よりも回復不能なほどに酷いダメージをその人生にもたらすに違いない。
これは人間性という概念をコッパミジンに破壊する行為だ。
基本的人権という言葉に見合う配慮は、この兵士達のどこを探してもない。

間違いなく、世界中の全ての軍隊で人を兵器に変えるために、同じように鋼鉄皮膜で人間性を封じ込めているはずだ― 

人間を破壊して武器に変えるようなことを、必要悪とは言わない。

この映画を見れば明らかなように、ただの『』である。

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posted by ヒラヒ at 17:58| Comment(4) | TrackBack(1) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは!ずっと“ナチもん”を観てきて「人権問題で訴えますよ」なんて言える時代は幸せなんですよね〜しみじみ・・(´・ω・`)クレームなんて贅沢なことですよね(笑)
Posted by ともちん at 2016年08月18日 18:42
>ともちんさん
ありがとうございます。でも、最近の日本はケッコウ怖いです。
マスコミが自由にモノ言えなかったり、アンブロークン位の映画が公開できなかったり・・・・・born to free です!
Posted by ヒラヒ・S at 2016年08月18日 18:58
スタンリー・キューブリックのこの映画気になりますね!
5.0の良作ばかりご紹介していただきありがとうございます!
Posted by いごっそ612 at 2016年08月18日 20:34
>いごっそ612さん
ありがとうございますm(__)m
ベタなトコロばっかりですいません。
実は、検索に引っかかりそうな作品のリニューアル中です(^^;
Posted by ヒラヒ・S at 2016年08月18日 21:20
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『フルメタルジャケット』
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