2016年08月12日

『不屈の男 アンブロークン』日本捕虜収容所・この実話は反日か?/あらすじ・感想・公開中止問題



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評価:★★★    3.0点

この映画は、旧日本軍の捕虜収容所に収監されたアメリカ兵が、虐待に耐える姿を通じて人間の決して折れない魂の尊厳を描いた作品です。
しかし、日本軍の捕虜虐待に対する描写により反日映画だと言われ、日本公開が危機に陥ったという「いわく」付きの作品です。

<あらすじ>
1936年のベルリン・オリンピック5000メートル走でオリンピック記録を打ち立てた、ルイ・ザンペリーニ(ジャック・オコンネル)の物語。彼は第二次世界大戦が始まると、爆撃機のパイロットとなり日本本土の爆撃作戦中に、日本軍に撃墜される。海上に不時着した彼は47日間も海の上をボートで漂流するが生き抜く。しかし、日本軍の捕虜となり南方から、東京大森の捕虜収容所に送られる。そこで「バード」と呼ばれる収容所長(MIYABI)がルイに異常に執着し、肉体的、精神的に虐待をする。そんな中、日本軍の反米プロパガンダ・ラジオに出演させられ、今後も協力すれば収容所に戻らなくとも良いと言われるが、日本軍に協力するのを拒否した。しかし、再び収容所に戻ると更に苛烈な仕打ちが待っていた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


この映画は、アメリカで200万部売り上げた、ルイ・ザンペリーニの体験を描いた原作を、アンジェリーナ・ジョリーが監督した一本で、『名もなき塀の中の王』などのジャック・オコンネルや日本人ミュージシャンのMIYAVIらが出演した。脚本は、ジョエル&イーサン・コーエンも参加したといいいます。



映画の出来としていえば、個人的には★3っつです。
伝記モノに往々にしてある、事実を正確に伝えなければ成らないという点で、物語を極端に脚色しずらいと言う事情もあり、ドラマとしての強さに欠けるように思いました。
また、敵役のMIYABIの線が細く、ヒステリックなキャラクターなのも、ドラマを弱くしているように感じます。

さらに誤解を恐れずにいえば、この映画の捕虜収容所は日本本土の施設で、捕虜にとっては条件が良い環境にあったため、劇としては力が無いと感じました。
実際はもっと旧日本軍の過酷な捕虜虐待事件が起きていたわけで(参考<「旧軍における捕虜の取扱い」−防衛省防衛研究所:www.nids.go.jp/publication/kiyo/pdf/bulletin_j10_1_3.pdf)そんな状況を元して描けば、脚本としての強さがでたと思います。
つまりは厳しい状況であればあるほど、苦難に立ち向かう人間の強さと、そんな苦難を生み出した戦争と言う状況の不条理を、更に強く表現できたのではないかと個人的には思います。

そういう意味では、原作の本の状況から逸脱し得ないドラマの弱さを感ぜざるを得ませんでした。
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さて、ここからは、この映画に対する日本公開を巡る『どたばた』について語らせて頂きたいと思います。

そもそもは、この本の原作本ローラ・ヒレンブランド著の原作に一因があったようです。
そこには捕虜が「人食いの風習で生きたまま食べられた」などという誤った記述があったことで、そんな原作の映画化をするとは何事かと言う意見があり、その製作報道が伝わるとアンジェリーナ・ジョリーは「反日家」などと批判する声が大きくなります。
当初は、東宝東和が配給し日本全国ロードショウの予定の公開が見送られました。
結局、配給会社のビターズ・エンドが渋谷シアター・イメージフォーラムの上映にこぎつけ、以降各地で小規模ながら公開されたという事でした。

しかし、先に述べたように、この映画はそんなに強い反日的な内容を描いた映画ではありません。
映画の専門家である東宝東和のスタッフは、その事実に気が付いたはずです。
しかし公開を見送ったその理由は、いろいろ探してみても見つかりませんでした。

それゆえ仮定の話ですが、もし、配給会社が右翼にせよ左翼にせよ、いずれかの反対意見を慮って、公開を中止したのだとしたら、そんな会社が映画を取り扱う資格はないといわせていただきたい。
映画という文化を守り、その自由を守り、その価値を認めない者が、映画を商売にしてはいけないと思うのです。

映画を愛するものとして、映画に携わる仕事をしている人たちには、映画の栄光と尊厳のために努力していただきたいと切に願います。

もし、右翼だろうと、左翼だろうと、暴力団だろうと、そして政府だろうと、映画の独立性を危うくする勢力に対して、映画を守るために戦う会社であれば私は心の底から応援します。

そして、それは全ての映画ファンが同じ気持ちだと思うのです。
今回の騒動は「反日映画」か否かというよりも、明らかに反映画的、反民主的問題だと言わざるを得ません。

こんなつまらない話が、今回だけであることを心の底から望みます。
多様性が無くなり、意見が偏りだして、戦争につながった過去の経験を忘れてはならないと思うのです。

コールド・プレイの歌う主題曲には、「あなたの瞳の中に美しい世界が見える」という歌詞が有ります。
映画にも、好むと好まざるとに限らず、この世界の真実が映っていると思うのです。
それを世間から隠すというのは、世界に対する冒涜ではないでしょうか・・・・・・・




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posted by ヒラヒ・S at 20:19| Comment(4) | TrackBack(1) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは( ̄ー ̄)戦争は勝っても負けても悲惨なのは同じですね。人間を狂わせる。アンジェリーナ・ジョリーさんて意識高い人なのかな?
Posted by ともちん at 2016年08月12日 20:42
>ともちんさん
忙がしいのに❗すみません(*≧∀≦*)
そうですね、真面目な映画で好感を持ちましたm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年08月12日 20:58
反日映画であれ良い映画なら公開してほしいですね。
アンジェリーナ・ジョリー監督作品があったとは知りませんでした。
いつも勉強になります。特に今日は読みやすかったです!何か書き方変えました?
Posted by いごっそ612 at 2016年08月12日 21:30
>いごっそ612さん
>反日映画であれ良い映画なら公開してほしいですね。
本当にそう思います。文化に対する裏切りだと思うんですが・・・
アンジェリーナ・ジョリーは今後監督でやっていきたい意向のようです。
>特に今日は読みやすかったです!何か書き方変えました?
自覚がありませんm(__)m画面上で区切りよく何か入れるということを何となくしていますが・・・・限界が見えてきたような(^^;)
Posted by ヒラヒ・S at 2016年08月12日 22:25
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