2016年07月23日

マイケル・ジャクソン『ムーンウォーカー』至高のミュージック・ビデオ/感想・あらすじ・解説・黒人差別

アメリカ社会の犠牲者―ラストの意味

18102あげ

評価:★★★★★  5.0点

取り合えずストーリーがぼんやりとありますが、映画ではないです。
ストーリーが在ると思うと、腹立ちますので、初めっからミュージックビデオとして割り切って見てください。

いちおう、ストーリを書いときますと・・・・・・・・・・・・

『ムーンウォーカー』あらすじ


スーパースター、マイケル・ジャクソン。しかしそれは仮の姿で、その正体は愛の守護神コスモから地球に下された「ムーンウォーカー」という名の正義の使者だった。そんな彼は、3人の孤児が邪悪なミスター・ビッグ(ジョー・ペシ)の暗黒組織に捕らわれたのを知り、そのアジトに潜入する。そこでマイケルは子供たちを使った世界征服の野望を知るのだった・・・・・・・・・・

『ムーンウォーカー』予告


(原題 Moonwalker/製作国 アメリカ/製作年1988年/上映時間93分/監督ジェリー・クレイマー、コリン・チルヴァース /脚本デイヴィッド・ニューマン/原案 マイケル・ジャクソン)

『ムーンウォーカー』出演者

マイケル・ジャクソン(ムーンウォーカー)/ショーン・レノン(ショーン)/ケリー・パーカー(ケティー)/ブランドン・アダムス(ジーク)/ジョー・ペシ(ミスター・ビッグ)

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『ムーンウォーカー』感想・解説




ミュージックビデオとしては歴史上の最高傑作だと思います。
全盛期のマイケルが本気で歌い踊っているのですから、キレまくってるダンスとシャウトがパォーで、ホント凄いです。

たっぷり全盛期のマイケルを堪能できます。

しかし、この作品で驚いたのは、エンドロールに、Ladysmith Black Mambazo が出演し「The Moon is Walking」を歌っている事でした。このグループはアフリカ音楽を誇りを持って伝えている人たちです。
いわばブラックミュージックのルーツを現代に表現しようと、使命感と情熱を傾けている人たちです。


この歌を聞きながら、マイケルの事を思い切なくなりました。

ちょっと洋楽を聞き出すと、マイケルなんて・・・とバカにしたりする人たちがいます。
確かに、音楽的にチャレンジが少ないかとも思いますし、ヒット狙いのあざとさも見えますが、それはマイケルがプロのパフォーマとして、最大多数に届くものを作ったからにほかなりません。
つまり、大衆迎合的な「あざとさ」が見えるといわれれば、肯定せざるを得ない部分も有ります。
しかしマイケルには、戦う敵がいて、その敵に打ち勝つためにヒットを飛ばさなければならなかったのです。


その敵とは、アメリカ社会に厳然とある黒人差別です・・・・
たとえばMTVで初めて流された黒人歌手の曲が「ビリージーン」だったなんて、それまでは黒人の曲を流さなかったなんて、信じられますか?
アメリカの音楽雑誌、ローリング・ストーン誌の記者に、黒人は表紙にできないと、マイケルは直接言われたそうです。

現実問題、黒人大統領が生まれた現代でも、黒人社会と白人社会は住む場所も違いますし、数年毎に警察が黒人を射殺して問題になっています・・・・・やはりまだ黒人差別は有るのです。
関連レビュー:黒人差別の歴史
『招かざる客』
人権問題を正面から描いた映画
第40回アカデミー賞2部門受賞の名作


そんな有形無形の壁がある中で、彼は黒人にも白人にも届く、いや、世界中に届く曲とパフォーマンスを作り上げる事で、黒人の地位を向上させるのに貢献したかったのです。
事実「Beat It」の全米1位で、初めて黒人としてローリング・ストーン誌の表紙を飾ったのもマイケルだったことでも分かるとおり、マイケルは黒人アーティストでありながら、少しずつ白人社会の閉ざされた門を開かせていきます。

しかしその結果、黒人社会から「白人に魂を売った」とまで言われてしまいます・・・・彼は何も悪くないのに。
そして白人社会がマイケルを受け入れてくれるわけでもなく、行く場所を失ったマイケルは自分の家に閉じこもるようになります。

どれだけ傷つき、孤独だったかは、とても想像できません・・・・

この作品で、マイケルはビートルズの「カムトゥギャザー」を歌います。
そのビ−トルズ・ナンバーのタイトルを直訳すれば「一緒に行こう」となります。
これは白人社会に対するメッセージの様に思えるのです。


そして、最後をアフリカの魂の響きとも言うべき、Ladysmith Black Mambazoでしめるのです。
マイケルの魂がどこにあるかを示すように・・・・

たぶんマイケルが生きていて元気だったら、これまでの作品以上に、ビートルズの様にPOPの歴史を覆すような作品を作ったように思うのです。
その音楽のベースはもちろんアフリカの誇りとともにあるに違いありません。


しかし、マイケルの関わった最後のアルバム「デンジャラス」は本当に完成度が高い、20世紀を代表するCDだとすら思いますが・・・・・・いかんせん完成度が高すぎる・・・・・・

その完成度の高さゆえに、たぶん完璧主義者のマイケルにとって、それ以降もう「デンジャラス」を超える作品を作るだけの、創造的意欲を持ち得なかったのかな〜とも思います。

そして残念なことに、マイケルはその最後からおもえば、ずっと傷つき不安定だったのでしょう・・・・
そして、マイケルの精神的不安定さとは、実はアメリカ社会における黒人アーティストに、常について回る問題なのです。

願わくば、天国には黒人も白人もなく、マイケルの魂が安らかでありますように・・・・


関連レビュー:ゴスペル音楽の魅力いっぱいの映画
『天使にラブソングを』
ウーピー・ゴールドバーグの代表作
ゴスペルソング名演


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posted by ヒラヒ at 11:59| Comment(6) | TrackBack(0) | ロック音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは!マイケルさんは天才ですわ〜(^ω^)「THIS IS IT」は映画館にわざわざ行ったくらいです💦珍しいのだ・・・そして泣くシーンじゃないのに泣いた私がいますよ〜もっと生きていて欲しかったですね。
Posted by ともちん at 2016年07月23日 11:56
>ともちんさん

「THIS IS IT」は私も行きました。ラストに拍手が起こりました・・・マイケルを含めアメリカの黒人は大変です、魂の安らかならん事をm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年07月23日 12:01
『ストーリーが在ると思うと、腹立ちます』で爆笑しました(笑)
アメリカの黒人はやはりまだまだ大変なんですね、平等な社会になるのはまだまだ難しいのでしょうか・・(~_~;)
Posted by いごっそ612 at 2016年07月23日 17:50
>いごっそ612さん

ありがとうございます(^^)本当に映画だと思って見ちゃダメですよね^^;
ほんとに差別は根が深い・・・・今も黒人が警官に撃たれたっていうので、黒人の警官襲撃がニュースになっていますよね。残念な事です。
Posted by ヒラヒ・S at 2016年07月23日 18:06
NHKのアナザーストーリーで「ムーンウォーク誕生の夜」を紹介していました。
本当に凄い出来事だったのだなぁ、と見ていて震えました。
そして、「ムーンウォーカー」の重力を離れる撮影場面なども紹介してくれて、どの場面も見ながら泣いてしまいました。
本物はいつまでも色褪せないなぁ、と・・・・・
マイケル・ジャクソンは永遠ですネ。
Posted by Dantess at 2016年07月23日 22:10
>Dantessさん

>マイケル・ジャクソンは永遠ですネ。
本当にそう思います。
彼はブラックミュージックをポップスのスタンダードにした点で、偉大なパイオニアだったのだと、音楽史の上で位置付けられると思います。
Posted by ヒラヒ・S at 2016年07月24日 10:22
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