2016年07月25日

『となりのトトロ』ファンタジーの成立とアニメの力

トトロの永遠



評価:★★★★★  5.0点

深い森の中、私は飢えている。
深い森の中、私は痛んでいる。
深い森の中、私は迷っている。


そんなとき、トトロは私を守ってくれる・・・・・・・・・

都市の中、私は孤独でいる。
都市の中、私は苦しんでいる。
都市の中、私は殺される。


そんなとき、ネコバスは私のもとにやってくる・・・・・・・


人が人として生きるとき、不安や恐怖とともに生きていかざるを得ない。
なぜなら、生き物とは生きる努力をしなければ死んでしまう運命だからだ。
それゆえ人は勤勉さや誠実さで、少しでも生きる可能性を高める努力をする。
しかし努力しても誠実であっても、思いどおりにならないのが現実だ。
ややもすれば、がんばれば、がんばるほど、ますます結果が悪くなっていく。
理性や意思の力だけではどうにもならない、冷酷な世界が人を追い込む。
どれほどがんばっても、光が見えず、もうダメだと、もうつかれたと、暗闇の中静かに沈みたいと望む。

しかし、それでも、生命は、生物としての本能は、生き続けろと光をともす。
飢えても、痛んでも、迷っても、孤独でも、苦しんでも、殺されそうになっても、それでも生きろと光をともす。

そんなとき、トトロは私を守ってくれる・・・・・・・・・
そんなとき、ネコバスは私のもとにやってくる・・・・・・・


人の心がアキラメて折れて消滅する瞬間、それでも輝く命の灯火は生き物の本能の迸りが起こす、奇跡だったろう。

メイの目の前に現れた、トトロとはそんな存在だったと思われてならない。
メイの明るく元気な姿の影に、母の不在による、孤独と絶望を見る。
子供にとっての世界とは、閉ざされて小さな範囲で完結し、その小さな世界における「さざ波」ですら容易に子供を絶望に導くだろう。

そんなとき、トトロは私を守ってくれる・・・・・・・・・
そんなとき、ネコバスは私のもとにやってくる・・・・・・・


子供達が、しばしば河童やお化けの、この世のものではない存在=ファンタジーを見出すのは、彼らの脆弱で無垢な心が容易にパニックに陥るからに違いない。
しかし、この自らの世界の崩壊は、この映画で気丈なさつきが直面したように、むしろ強い理性で不安や恐怖を押さえ込もうとする「大人」にこそ致命的なダメージをもたらすはずだ。

つまり、ファンタジーの本質が、人が理性でコントロールできない絶体絶命の事態における、最後の砦だとすればこの世にファンタジーが消え去る事はないだろう。しかし、そんな人間存在としてギリギリの状態に見るものであるがゆえに、ファンタジーというのは同時に「死」のイメージも必然的に生むのだろう・・・・

宮崎駿はメイという少女に子供のむき出しの感情を持たせ、さつきに大人としての理性を持たせた。このことによって、子供と大人の両方の魂を救うことが可能になったし、同時に世界が人の持つ感情や理性以外の何物かによって支えられているという事実を提示しえたのだと感じる。

つまりこの世は、人間が知りえる「人間世界」よりも、更に大きな広がりの「自然世界」を持っているのだという真実を宮崎は語ったのだろう。
「人間世界」が限界に達し袋小路に突き当たったときに、「自然世界」がその力で世界の歪みを修復し始めるはずだ。
その「人」と「自然=宇宙」を結ぶものとして、ファンタジーが成立するのだ。

そんなとき、トトロは私を守ってくれる・・・・・・・・・
そんなとき、ネコバスは私のもとにやってくる・・・・・・・




そもそも、古来より人は人間の五感では知り得ない「自然世界を見る力」を持っており、危機に陥った時頼ってきたのではなかったろうか。
それこそがファンタジーの本質だとすれば、実はファンタジーとは、人が自然世界を知覚可能な形に擬人化した、いわばコンピューターと人間を結ぶウインドウズのような存在だといえるだろう。

そう考えたとき、アニメーションが「自然世界の使者=ファンタジー」と相性が良い理由が分かるように思う。
アニメーションという言葉が、ラテン語のアニマ「霊魂」「魂」を語源とするように、アニメとはそもそも人の理性を超越した「自然世界」を描き出す事を運命付けられているのであろう。

そういう意味では、人は、アニメは実体を持たない絵空事だと考えがちだが、実はそんな自然界の「霊魂」「魂」が、作家の心を通じて現れたものだと思うのだ。



あっれ〜💦映画の内容にほとんど触れてないような💦〜
これはまずいぞ💦〜


そんなとき、トトロは私を守ってくれる・・・・・・・・・
そんなとき、ネコバスは私のもとにやってくる・・・・・・・



スポンサーリンク
ラベル:宮崎駿
posted by ヒラヒ at 19:05| Comment(4) | TrackBack(0) | アニメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは!トトロはぁ〜何回も観たけどですね🎵グッズですよね!ハンカチやノートやコップや(^◇^)美しい自然がとうもろこしが。
サンダルが違った時の緊張感はものすごかった💦ホッとしてちからが抜けました・・・永遠の名作ですね。よ〜く見ると怖い生き物でっせ・・・大人になるとそう思ってしまいます。
Posted by ともちん at 2016年07月25日 19:22
>ともちんさん

そ〜なんです(^^)ファンタジーは、恐怖と紙一重なんです。
見えないものが見えるのがファンタジー、ほら!後ろに!
Posted by ヒラヒ・S at 2016年07月25日 20:25
トトロかあ〜まさかレビュアンさんところでこういう映画にお目にかかれるとは思いませんでした。
名作ですよね〜夢があります。
子供たちに見せるDVDでよく見ますが、やっぱいいよなあ(*‘∀‘)
Posted by いごっそ612 at 2016年07月25日 20:34
>いごっそ612さん
ありがとうございます。
も〜これだけ傑作に成っちゃうと、言葉が見つからないというか・・・今まで書けなかったんですけど。
なんか、これも逃げてるみたいで・・・チョット反省してますm(__)m
Posted by ヒラヒ・S at 2016年07月25日 20:39
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック