冷戦時代の科学の行方
原題 INDIANA JONES AND THE KINGDOM OF THE CRYSTAL SKULL 製作国 アメリカ 製作年 2008 上映時間 122分 監督 スティーブン・スピルバーグ 脚本 デヴィッド・コープ 原案 ジョージ・ルーカス |
評価:★★★☆ 3.5点
インディ・ジョーンズが、久しぶりに戻ってきました。
考えてみれば『最後の聖戦』から、19年経過してのこのシリーズ最新作です。
アクションもイッパイだし、過去の作品に対するオマージュに満ちているし、ハリソン・フォードだって元気にがんばってます。
製作ジョージ・ルーカス、監督スティーヴン・スピルバーグ、主演ハリソン・フォードのトリオに、『レイダース』のヒロイン、カレン・アレンも出てくるのもオールド・ファンには嬉しいところ。
映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』ストーリー
1957年、アメリカ合衆国、ネバダ州の核実験場から始まる。
ソ連の女諜報部員スパルコ(ケイト・ブランシェット)に捕まって、米軍基地の秘宝倉庫でインディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)は、宇宙の神秘の力を持った南米の秘宝「クリスタル・スカル」を強奪する手助けを強要させられていた。
しかし、原爆実験のさなかインディは逃走することに成功する。
ようやく大学に戻ったものの、インディは当時のレッド・パージ(反共産主義法)の嵐によって、大学教授の職を喪い、仕方なくイギリスの大学に向け旅立った。しかしその途中で、一人の若者マット(シャイア・ラブーフ)と出会い、彼の母とインディの友人であるオクスリー教授(ジョン・ハート)を救う義務があると詰め寄られた。そんな二人をソ連スパイが執拗に追って来たが、二人はオックスリーの手紙を解読し、彼が隠したスカルを求めナスカに渡った。
そしてインディはマットとともに南米に向かい、マットの母とオクスリー教授と合流し、スカルを手に入れるためジャングルの奥深くへと足を踏み入れた。
その後を、なおもソ連スパイ・スパルコが追い続け、激しい攻防戦を繰り広げながらクリスタル・スカルと伝説の黄金都市を巡る冒険は続く・・・・・・・ハリソン・フォード(インディアナ・ジョーンズ)、シャイア・ラブーフ(マット・ウィリアムズ)、レイ・ウィンストン(ジョージ・マクヘイル)、カレン・アレン(マリオン・レイヴンウッド)、ケイト・ブランシェット(イリーナ・スパルコ)、ほか
映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』出演者
映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』予告
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映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』感想 |
え〜っと、たぶん、この一本だけ見れば、★4つは確実だと思うんです。
でも、しかし、このインディはシリーズ作品で、それまでの過去作品以上の出来で無ければ評価されないという宿命を持ってると思うわけです。
そして較べて見たとき、正直言って個人的には、残念ながら過去のどのインディーよりも面白くなかった。
スピルバーグ作品ですから、お金だってたっぷり懸けてるはずだし、キャスティングだって、脚本だって穴はないはずです。
本当に映画は難しい・・・・・・・
何が悪いんだろうという事で、以下追及させていただきます。
関連レビュー:インディー・シリーズの描いた世界 『インディー・ジョーンズ』 ハリソンフォード主演の痛快アドべンチャー ノンストップアクションのハリウッド効果 |

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映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』解説スピルバーグの作家性 |
そもそも、スピルバーグという監督のデビュー作の『激突!』からして、ただ執拗に、理由も分からず追いかけられ、ついに「悪夢世界」に踏み込んで行った傑作でした。
このデビュー作でも明らかなように、その初期の持ち味は、間違いなく理屈抜きで観客を引き込む、強い刺激と、ドラマ性にあったと思います。
つまりはその優れた資質として、何も考えずに楽しめる『エンターテーメント性』を保持していたと思います。
たとえばそれは、初期のヒット作『ジョーズ』や『E.T.』にしたところで、やはり同様の性格を持っていたと感じます。

実を言えばハリウッド映画界は、1950年代から始まる「反トラスト法」を契機に、「スタジオ・システム」が崩壊し、更にTV産業が娯楽の王座に昇り、映画業界はその力を減衰させていく過程にありました。
ハリウッド映画界は、『クレオパトラ』(63年、20世紀フォックス)や、あるいは『ローマ帝国の滅亡』(64年、パラマウント)などの「スペクタクル映画」によって、映画の大作化で対抗しようとしますが、かさむ経費はますます業界を苦しめる結果となります。
更に、そんな過渡期にあって、ベトナム戦争を背景とする社会的な抑圧は『アメリカン・ニュー・シネマ』という、より個人主義的な主義主張を持つ作品群を生み出し、その作り手達こそTV業界出身の独立プロダクション系の映画製作者達でした。
結局、この60年代を通じて、「ハリウッド黄金期」の映画コンテンツが力を失ったのです。
それは、一つには「スペクタクル映画=大作映画」であり、もう一つは「家族映画」と呼ばれるジャンルでした。
ハリウッド映画は、TVに駆逐されるまで、家族みんなが安心して見れる良質な「家族向け作品」を供給し、その黄金期を支えていたのでした。
そして、その失われた「スペクタクル映画」を『ジョーズ』で復活させ、「家族向け作品」を『E.T.』で復活せしめた70年代作家の1人が、スピルバーグだったと信じています。
関連レビュー:スティーブン・スピルバーグ監督作品 『激突』 スピルバーグのデビュー作品 迫りくる恐怖のトラック | |
関連レビュー:家族向け映画の革新『E.T.』 感動の大ヒット映画 SF映画の金字塔 |
そして、更にスピルバーグの革新的なところは「スペクタクル映画」と「家族向け作品」を、一つのコンテンツに融合した点にあると思います。

これは「スペクタクル性作品の力」が、崩壊や破壊の非道徳性の強さと比例関係にあるとすれば、「家族向け作品」の子供も安心して見れるという要素とは、水と油の関係にあるように感じます。
その相反する要素を、スピルバーグは「破壊のスペクタクル性」から道徳律を除去するという手法によって、可能にしたように思います。
そのため、初期のスピルバーグ作品における物語原型とは「おとぎ話=ファンタジー」に依拠していたと感じます。
その最も明確な成功例が、このインディーシリーズのファンタジックなスペクタクル性に表現されていると思います。

映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』解説ファンタジー性の喪失 |
それゆえ、この映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』も、そのファンタジックなスペクタクル性を求めて、観客は劇場に足を運んだはずなのですが・・・・・・・

個人的な印象をいえば、この作品をスッキリ面白くしていないのは、これまでのインディがテーマを持たない「娯楽作品=ファンタジー」として作られていたのに対して、今作は「現実的テーマ」が過去のシリーズより映画に占める割合が多いせいだと感じました。
例えば、インディの家族の問題や、ラストの長いクライマックスや、ソヴィト連邦という敵の存在や、そして冒頭のネバダの核実験の描写などが、全てばらばらで「まとまり」が無いと感じます。
それゆえ、一直線のストーリーとならずに、観客の興味が散漫になってしまったのではないでしょうか。
たとえば、それは『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の割り切りの良さに較べれば、雲泥の差です。

それでも何度か見直して、全体としての意味づけを試みましたが、今ひとつスッキリと構築出来ませんでした。
たとえば、「核」と「冷戦」と「人類の開放」とか、「核=放射能」と「冷戦=イデオロギー」と「生物学的家系の意義」とか、「核=科学」と「冷戦=理想」と「暴走する生命体としての人間」とか・・・・・・・
家族の幸福と世界平和と科学技術とか・・・・・・・
いろいろと想像するに、スピルバーグ監督も「最後の聖戦」で父と子を描き、家族の歴史を描くと同時に、このインディーシリーズで20世紀という歴史的な姿を表現したいと考えているのだろうな〜と考えたりしました。
たぶん、インディーシリーズはスピルバーグ監督の人生を反映したものだと思えば、この1950年代とは監督10歳の頃で、科学による明るい未来を信じていた少年だったでしょう。
同時に科学が東西冷戦の戦いの道具として、人類を破滅させかねないという状況も感じていたはずです。
その少年の日に感じた、科学の矛盾を、インディーという人間味にあふれた存在によって、世界の未来が変革しえるという希望を――――――――
ふと我に返り、な〜んか、バカバカしくなってきました・・・・・・
そもそもインディーは、何も考えずに楽しめる「ファンタジー娯楽作品」の王道だったはずです。
そしてこの映画は、現実を語ることで、その「ファンタジー性を喪失」してしまったと思えてなりません。
いってみれば、今までのインディは無邪気に大騒ぎする子供が遊ぶ姿だったからこそ、何も考えずに家族で楽しめたと思うのです。
しかし、今作については、インディが「俺もう子供じゃねえし」と観客に言っているように感じます・・・・・

もちろん、その後のスピルバーグ監督の映画表現の幅の広がりは凄まじく、『カラーパープル』以後の作品では、現実の重いテーマを正面から語ってアメリカの国民的な映画作家になったと思います。(左:ハリソン・フォード/右:スティーブン・スピルバーグ)
そんな監督の現在を思えば、この映画もインディーシリーズという子供時代を脱し、大人になろうとしているのかも知れません。
しかし、それでも、コレはそんなシリーズじゃないでしょ?
約束と違うよねスピルバーグさん?
ということで・・・・・・・・・・この評価です。
しかし!!!!
『インディ・ジョーンズ』5作目が2019年公開決定!ハリソン・フォードも続投へ
この作品のフラストレーションは、今だ未完の途中経過だからかもしれない!
立派な大人になってくれるはずの、次のインディーを震えながら待て!
関連レビュー:スティーブン・スピルバーグ監督作品 |
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『インディ・ジョーンズ』5作目出ちゃうんすか!
しかもハリソン・フォード続投!
もうおじいちゃんですよ!?アクションは期待できないのでは?
どうなるか楽しみです。
マジっす(xx)
ハリソン・フォードは寝たっきりで、そのままアクションに参加するんじゃないでしょうか(^^;
名作をキレイにまとめてくれる事だけを祈ります。
>ともちんさん
2作目までおもしろかったんです。
その後ゴチャゴチャしだして、でも、まあ〜途中だから最後まで見てみようという。
ハリソンさん、飛行機で事故ったりしてますしね〜いざとなったらミイラの役とか💦