原題Black Dog 製作国アメリカ 製作年1998年 上映時間 88分 監督ケヴィン・フックス 脚本ウィリアム・ミケルベリー、ダン・ヴィニング |
評価:★★★☆ 3.5点
この映画は、B級映画として秀作だと思います。
ちょっと人が死にすぎるのは気になりますが、映画として破綻もなく、キレイにまとまっていると思います。
アクション映画が好きな方なら、決して見て損したという気にはならない、地味ながら面白い作品ではないでしょうか。

<目次> |

映画『ブラック・ドッグ』ストーリー |
ジョージア州アトランタで、超大型トレーラーの運転手をしていたジャック(パトリック・スウェイジ)は、真夜中のハイウェイで運転手仲間で伝説となっている“ブラックドッグ”と呼ばれる幻影を見て事故を起こした。刑務所に服役後、仮釈放中の彼は保護監察士のカトラー(グレアム・ベッケル)から呼び出され、運転免許を再交付する代わりに、謎の積み荷を乗せた超大型トレーラーを運転することを求められた。いったんは断ったものの、借金や今後の生活を考え、家族である妻メラニー(ブレンダ・ストロング)娘トレーシート(エリン・ブロデリック)の生活を守るため仕事を引き受ける。
しかし翌日、ジャックは依頼主レッド(ミート・ローフ)からアール(ランディ・トラヴィス)、ソニー(ガブリエル・カソーズ)ウェズ(ブライアン・ヴィンセント)の3人を連れて行く事を条件として出された。彼らはジャックの護衛兼監視役としてカマロに乗り並走した。事故の記憶を引きづりながらも、ジャックは3人と共に目的地へ出発する。そんな彼を謎の武装集団が襲い、更にジャックの妻メラニーと娘のトレーシーを誘拐し、トレーラーの積み荷を翌日9時までに引渡せと要求される。
執拗に追ってくる敵、さらに州警察、FBIの追跡を受けながら、ジャックは大型トラックを駆りハイウェイを必死に疾走する・・・・
映画『ブラック・ドッグ』予告 |
映画『ブラック・ドッグ』出演者 |
ジャック・クルーズ(パトリック・スウェイジ)/メラニー・クルーズ(ブレンダ・ストロング)/アール(ランディ・トラヴィス)/ソニー(ガブリエル・カソーズ)/ウェズ(ブライアン・ヴィンセント)/レッド(ミート・ローフ)/カトラー(グレアム・ベケット)/ビンス(シリル・オライリー)/ATF捜査官マクラーレン(スティーヴン・トボロウスキー)/FBI捜査官アレン・フォード(チャールズ・S・ダットン)/エイブリーチーフ(ロレイン・トゥーサント)/トレイシー・クルーズ(エリン・ブロデリック)

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映画『ブラック・ドッグ』感想 |
しかし実際は、キレイに整理され、シンプルに走るトレーラーと追いすがる敵という形にスッキリまとめ上げているのは脚本の秀逸さだと思います。
カーチェイスも迫力があり、ダレた所もなく、パトリック・スウェイジのいかにも労働者階級を代表する風貌も、この映画と良くマッチしています。
<カーチェイスシーン>
この映画の監督は、むしろTVドラマが主要舞台のようで、『LOST』『24 -TWENTY FOUR-』『プリズン・ブレイク』など、人気ドラマの監督を務めています。
こんな、良く締まった、小品ながらキレのいい秀作を撮れたのは、そんなTVドラマのタイトな話法が活かされているのかとも思います。
個人的には、こんな完成度の高い「B級作品」を見ると、昔良く見た「B級作品」を想い出し、嬉しくなります。

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映画『ブラック・ドッグ』解説B級映画の紹介 |
B級映画(ビーきゅうえいが、B-movie及びB-Pictures)とは、1930年代のアメリカで始まった短期間の撮影、低予算で、上映時間も限定されたなかで製作された映画のことである。1932年からアメリカ合衆国の映画界で二本立て興行の中で添え物として上映されて、やがてハリウッド映画が大作主義となり、製作本数が激減する頃には消えていった。しかし1950年代半ば以後は、低予算の特定の観客層の受けを狙った作品に対してB級映画との呼称が使われるようになった。(wikipediaより)
上にもあるとおり、かつてのハリウッドでは大作映画(A級映画)の、おまけとして二本立て興行の一本にB級映画を上映していました。
しかし、興行形態も変わり、50年代TVが映画のライバルとして出現すると、メジャー映画スタジオはスペクタクルな大作作品で生き残りを懸けました。
大作映画『べン・ハ―』と『クレオパトラ』 |
しかし、そのビジネスモデルもTVが娯楽の主役に躍り出る60年代となると、当たり外れの大きい大作映画はリスクを伴うため、映画スタジオ自身がTVドラマを作る状態となります。
そんな60年代後半の映画界に現れたのが「アメリカンニューシネマ」です。
それは見事に「B級映画」のスタイルを見せ、それまでのハリウッド映画と一線を画すものでした。
関連レビュー:アメリカンニューシネマ 『イージー・ライダー』 60年代サブカルチャーの代表作 ハリウッド映画の新たなビジネスモデルとは? |
そんなハリウッド映画界は、1970年代に入ると『ポセイドンアドべンチャー』や『タワーリングインフェルノ』のパニック映画が成功をおさめ、制作費をかけても元が取れるという自信を生みました。
そしてそんな大作映画の呼び名「ブロックバスター映画」が、1975年のスティーヴン・スピルバーグの『ジョーズ』から使われ出したように、ハリウッドメジャーは再び大作映画を作るようになりました。
そして今では「ブロックバスター映画」と較べて、制作費の安い、マイナーな映画監督、映画俳優が出るような映画を、今では「B級映画」と呼ぶことが多いようです。
ハリウッド大作化の傾向は、シネマコンプレックスの時代に入りより鮮明になります。
しかし、そんな膨大な製作費をかけた映画の間隙を縫うように、新人監督による低予算の「B級映画」が発表されています。
その価値は大作映画が刺激と破壊量で鑑賞後の印象が同一化する中にあって、独特のテイストを産み次の映画トレンドの礎にすらなっているように思います・・・・・・
ここでは、そんな『B級映画』の秀作を紹介させて頂きます。
クリントイーストウッドとコンビを組み、今では名匠と呼ばれるドン・シーゲルも『B級監督』でした。
製作費41万ドルSF映画の古典的名作『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』
アメリカ映画: 1956年 『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』 ドン・シーゲルのSF映画の古典! B級映画とハリウッド映画界の底力 |
巨匠スティーヴン・スピルバーグの、映画デビュー作もこじんまりと45万ドル!
傑作『激突!』
アメリカ映画:1972年 『激突!』 スピルバーグ監督の映画でデビュー作 あおり運転の恐怖!巨大トラックの正体とは? |
ジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ映画の元祖!
製作費12万ドル足らずで撮られた『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
アメリカ映画:1968年 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』 ジョージ・A・ロメロ監督の世界初のゾンビ映画 ゾンビの誕生と近代文明と神の喪失 |
今や大監督ジェームス・キャメロンのデビュー作。
制作費600万ドルで作られた『ターミネーター』第一作
アメリカ映画:1984年 『ターミネーター 』 シュワちゃんをスターにした傑作アクションの第1作。 ターミネーターのヒットとシュワちゃんの訛りの関係とは? |
社会派監督オリバー・ストーン。
これも製作費600万ドルの『プラトーン』
アメリカ映画:1986年 『プラトーン』 ベトナム戦争を深く描く自伝的映画 ベトナム戦争とアメリカの罪 |
本当に驚きのコスト!3万ドルの製作費ながら、擬似ドキュメンタリー(モキュメンタリー)映画の元祖!
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』
アメリカ映画:1998年 『レア・ウィッチ・プロジェクト 』 POV、モキュメンタリー「ホラー」の元祖。 映画表現とリアリティーの関係とは? |

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映画『ブラック・ドッグ』解説アクション映画のアクション量 |
ここからは、この映画を見て感じた現代のアクション映画について気がついた点を書かせて頂こうと思います。
おヒマな方はお付き合い下さい・・・・
ま〜この映画は実際B級映画として、そこはやはりお金を掛けられないと言う点で余分な贅肉が削ぎ落とされた分、アクション映画の骨格が明瞭になったように思います。
そういう目線でこの映画を見ると、全編に渡ってアクション量が、ほぼ飽和状態にあるという事実に驚かされます。1998年の製作年度ながら、大よそ映画の8割〜9割を疾走するトラックや、格闘、銃撃の場面が占めるのです。そして、派手な爆発シーンや、スピード感のあるカーチェイスが全編に渡って繰り広げられています。
実際これは、例えばかつてのアクション映画と較べて、圧倒的なアクション・シーンのボリュームを持つていると感じます。
仮に1960年代にこの『ブラック・ドッグ』が公開されていれば、この映画は大ヒットしたに違いありません。
振り返って見れば、アクション映画こそが、最も映画的なジャンルであるように感じられてなりません。
ハリウッドの初期のニッケル・オデオン(5セント劇場)の昔から、『大列車強盗』 (1903年:下記動画) などの西部劇とともにハリウッド映画は歩んできたといえます。
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初期の映画は庶民のチープな娯楽として、もっぱらアクションを主体にした映画だったようです。
それは、モノクロ、サイレントという技術的規制の中で、最大限見栄えがするものを作ろうとしたら、連続映像として観客を喜ばせるためには、右へ左へ動き続ける映画が一番だということだったでしょう。(その証拠にコメディーも動き中心の「ドタバタ・コメディー」になっています)
そんな「活劇=アクション」の歴史は、『駅馬車』や『荒野の決闘』『真昼の決闘』などの西部劇が名作として残っていますが、今見れば、そのアクション量は本当にここぞというときに銃が撃たれるぐらいのものです。実際、『荒野の決闘』など十数発しか発射されていない印象です。
関連レビュー:西部劇のアクション 『荒野の決闘』 ジョン・フォード監督の西部劇の古典 西部開拓を描いたアメリカ合衆国の神話 |
しかし、それでも、当時は十分衝撃的なシーンだったのです。
それはたぶん、初期の西部劇が現実をドラマにしたものであるがゆえに、決闘シーンや銃撃シーンというのは、現実の死を目の当たりにしたのと同様の衝撃を持っていたのではないかと想像します。
それが、ドイツで西部劇や、マカロニ・ウェスタンが作製されていったとき、根も葉もない西部劇ですから、現実の呪縛を振り切って「ファンタジー」としてのアクションを生む事が可能になったということだろうと思うのです。
関連レビュー:西部劇のファンタジー化 映画『荒野の用心棒』 マカロニ・ウェスタンの傑作! アクションのファンタジー化の構図とは? |
現実の重みから開放された西部劇は、「刺激シーン=アクション・シーン」を、これでもかと増やしていく事になりました。
これは西部劇だけではなく、警察官が悪党を撃ちまくる映画のパイオニア『ダーティ・ハリー』だって44マグナムを持っていながら、実はそんなに撃っていないのです。
ヤッパリ警官が、たとえ悪党とはいうものの、撃ち殺すというハードルは相当高いハードルだったようで、それこそ慎重に言い訳しながら、殺している印象が強いのです。
それが、あっという間に『ダイ・ハード』の大騒ぎですから、現実離れするスピードは飛躍的に上がっていると言えるでしょう。
そして、刺激を増やしてみれば、人間ドラマや正義などのテーマは不要だという事実に、観客も製作者側も気づいてしまったように思います。
その行き着く先は、タランティーノ映画ということになるかと思いますが・・・・・・・ともかく、現代のアクション映画にとってはアクション・シーンが多い事はすでに必須条件だということであり、ヒットするためにはもっとビッグ・ネームの俳優を使うか、特殊効果に凝るとかという、さらに大盛りにしなければ満足できないという、現代の映画ファンの欲張りな事実だったでしょう。
以上の事を考えれば、お金をかけなければアクション映画は売れないということで、その傾向は益々加速するのでしょう。
でもミナサン、よ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜く考えて見てください、「アクション・シーン」て、モノを壊すのはまだしも、暴力で人を殴ったり、人を刺したり、人を斬ったり、人を撃ったり、人を殺したりする、と〜〜〜〜〜っても痛い行為じゃなかったですか?
あえて野暮な事を言えば、暴力って「悪」でしょ?
人は刺激に慣れると、更なる刺激でなければ反応しなくなる動物ですので、売るためにはアクション量を増やすと言う方向性は変わらないでしょう・・・・・ま〜しかし、あんまり悪い事を売り物にするというのもイカガなモノかという主張でした。
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それは、本当に正しいと思います。
ブルースリーによってアクションの独立性が生まれたと、私も信じています(^^)
白黒は独特の味があっていいですよねぇ・・・・小津監督「晩春」オススメですm(__)m
実際にできない様な事を映画を観て満足する・・
ある種のストレス解消かも?
正義ネタが出過ぎて飽きたのかも知れません。
「デッドプール」の様なダークヒーローが喜ばれる時代ですからね。
有り難うございます。
ストレスが多いは本当ですね・・・・しかし、ここまでアクション量が増えてくると、今後は相当お金をかけないと、キツいかと(^_^;)