『ショーシャンクの空に』(感想・解説 編)
原題 The Shawshank Redemption 製作国 アメリカ 製作年 1994 上映時間 143分 監督・脚本 フランク・ダラボン |
評価:★★★★★ 5.0点
すでに古典としての風格を持ち始めた、この刑務所を舞台とする映画のラストに向かっての解放感は、何事だろうと考えたりする。
単にこの作品が持つ、牢獄という閉塞状況だけがその開放感の源泉だとするには、個人的にはまだ足りないように思える。
ちなみに、原題『The Shawshank Redemption』とは、『ショーシャンクの贖罪(救済)』を意味するという。
また"Redemption"は経理・会計の用語として「満期」「償還」「買戻し」「回収」など、約束されたものを戻すという言葉だという。
『ショーシャンクの空に』あらすじ
冤罪で罪を得た元銀行員の主人公が、刑務所の過酷な管理と統制の中にあっても、希望を捨てず少しずつ刑務所内で自由を獲得していく。
しかし、その自由獲得の手段が刑務所所長の不正経理の帳簿操作だったがゆえに、主人公の刑が冤罪によるものだとわかっても、刑務所所長は自らの不正の発覚を恐れ、その権限により再審を認めないと主人公に告げる。その時、主人公のとった行動は・・・・・・・・
『ショーシャンクの空に』予告
アンドリュー・デュフレーン(ティム・ロビンス)/エリス・ボイド・レディング(モーガン・フリーマン)/ノートン所長(ボブ・ガントン)/ハドリー刑務主任(クランシー・ブラウン)/ブルックス(ジェームズ・ホイットモア)/ボグズ(マーク・ロルストン)/トミー(ギル・ベローズ)
『ショーシャンクの空に』出演者
1995年 アカデミー賞 7部門ノミネート(賞獲得はなし)
『ショーシャンクの空に』受賞歴
1995年 ゴールデングローブ賞 2部門ノミネート(賞獲得はなし)
1995年度 第19回日本アカデミー賞 外国語映画賞
1995年度 キネマ旬報ベストテン 外国映画作品賞 第1位
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『ショーシャンクの空に』感想・解説 |
この映画が過去の刑務所の物語と違うのは、この主人公が「ホワイトカラー=知的労働者」であることだ。
それまでの刑務所ものの映画であれば、主人公はだいたい労働者階級の出身であり腕力にものを言わせて、自由のための戦いをするというのが定型だった。
そう思えば、この主人公の設定は暴力に寄らず、知性によって理不尽な看守の横暴に対抗するという、新たな刑務所ヒーロー像を示したのではないか。
しかし、基本的にドラマの爽快感とは「水戸黄門」では無いが、不条理に耐えていく正義と、その正義を蹂躙する非道な悪の攻撃が描かれ、正義の者がそれ以上耐えられなくなったり、怒りが頂点に達したときに、正義に立つ者が法も道理も超越して悪を懲らしめる形こそ「王道」であったはずだ。
このとき、正義の側の戦いとは、現実の闘争というよりは「神の鉄槌」として行使されるだろう。
それゆえ悪と同様、もしくはそれ以上の暴力が振るわれたとしても、神の代理人として見る者から許容され得るのである。
そして、上の勧善懲悪を完遂するためには、暴力という形で表現されてこそカタルシスを生んだはずだ。
しかし仔細にこの映画の構図を見てみれば、実はこの知識階級の主人公は、刑務所という悪の場において一方的に攻撃されているわけではない。(右:刑務官の節税対策を手伝いビールを獲得する)
彼はその職能を有効に活用して、刑務所内で一定の利益を享受する。
さらにその利益が、所長の悪事の管理者として働くことで得たものであると思えば、この主人公は実は悪に加担しており、決して正義の使者ではないと分かる。
つまりは、この刑務所と主人公の相克を単純に「勧善懲悪」の物語原型に嵌め込む事が、間違いなのであろう。
それではこの劇中の刑務所とは、何を意味するであろうか。
そこで、鍵を握るのはモーガン・フリーマン演じる「調達屋」の存在である。
彼は刑務所内で、主人公同様、やはり己の職能を持って独自の地位を獲得している。
つまりは、この刑務所内には、権力・金と、特殊技能を持つ管理者と、商品の流れがあることを考えれば、それは小さく見れば会社組織であり、マクロ的に捕らえれば現代社会のアナロジーであったろう。
だからこそ、刑務所を出た老受刑者は社会から見放された者として、自ら命を絶たざるを得なかったのである。
従って現実社会を仮託されたこの刑務所内の生活が、終わりが見えない、ただ耐え続けるだけの暗鬱な描写である理由も、現代社会の閉塞感を表わしたモノとして納得がいくのである。
結局、この主人公は「刑務所=現代社会」に適応しすぎたがゆえに悪に染まり、悪に染まったがゆえに正義に立ち返ることができなかったのであろう。
それはやはり、現代社会というあまりにも加重な法と規制を生きる身になれば、多かれ少なかれルールを逸脱しなければ生きていけないという、現代人が不可避に背負う罪科を代表した存在だったのだろう。
つまるところ、現代を生きる者は、必然的に悪人としての己を生きざるを得ないのだと、この映画を見て我々は追認せざるを得ない。
こう整理してみれば、この映画は、その必然的に悪をはらんだ現代社会からの開放を描いたがゆえに、かくも観客に爽快感をもたらすのではないか。
映画の原題『ショーシャンクの贖罪』とは、「ショーシャンク=現代社会」が個人に対し「贖罪=罪をあがなう」姿を、ラストの青い空に仮託したものとも思えるのである。
『ショーシャンクの空に』解説ラストシーンの解釈 |
しかし、同時に、そのラストの非現実的な空の青さを眼にした時、恐ろしい想像が脳裏をよぎったことを告白しなければならない。
それは現世での受難ゆえに、この二人はすでにこの世の者ではないかもしれないという想定だ。
「ショーシャンク=現代社会」を抜け出すとは、死を意味し、2人がすでに天国に至ったのかと錯覚したのである。
もちろん、それは邪推にすぎまいが・・・・・・・・
老受刑者ブルックが首を吊った部屋に書かれていた文字。
("ブルックスはここに在り。"そして"レッドも在り"と書いている。)
ただ青すぎる空が、私を不安にしたのだろう。
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グリーンマイルとおんなじ監督で、おんなじ原作者「スティーブン・キング」です。
そんな、こんなで「グリーン・マイル」嫌いの私としては、恐る恐る見たんですが、面白かったですm(__)m
まさに名作ですね!BD持っていますよ(*‘∀‘)
『必然的に悪をはらんだ現代社会からの開放を描いたがゆえに、かくも観客に爽快感をもたらす』
まさしくそうだと思います!
名作ですね〜モーガン・フリーマンが効いてますよね・・・・個人的には「グリーン・マイル」が・・・・う〜ん。それはそれとして、モロモロいつもありがとうございますm(__)m