評価:★★★ 3.0点
ひと言、ひと息、ひと鼓動ごとに、暖かさが波のように
あのぬくもりを恋とすれば
このがらんどうを失恋と呼ぶ
もうこの手は君にとどかないから
虚空に散らばる光を集めて
君のぬくもりを作ってみる
本当の君より少し暖かい
本当の君より少し優しい
幻の恋は陽だまりの彼女
幻想の君と過去を抱きしめ
幻の恋は陽だまりの彼女
陽が翳れば消え去るとしても
初恋の君は陽だまりの彼女
・・・・・そんなこのファンタジーは、いろいろと不整合や不合理に満ちていると思いますし、いまひとつ語られる内容も集中力を欠いているように感じます。
映画的な技術で言えば、いい出来栄えとは言えません。
しかしそれでも尚、美しい輝きを保持していると思うのです。
この映画の持つ、切なさ、儚さ、脆さ、透明感、一種のノスタルジックな空気感が、この恋の純粋さを際立たせているように感じます。
<陽だまりの彼女あらすじ>
広告代理店サラリーマンの奥田浩介(松本潤)は、取引先で中学時代の同級生・渡来真緒(上野樹里)と再会する。中学1年生で転校してきた真緒は、勉強ができず人とは違っていたため、クラスでいじめにあっていた。そんな真緒を浩介が庇ったことで、二人はつきあうようになりファーストキスを交わすが、浩介が引っ越すことになりそれ以来会っていなかった。
しかし10年ぶりに対面した真緒は、魅力的な女性に成長しており、浩介は真緒と仕事で会うたび好きになっていく。そして二人は付き合い始め、ついには結婚を考え始めたが、真央の両親に挨拶に赴いた時、彼女がある秘密を持っている事を告げられる・・・・・・。
(日本/2013年/監督・三木孝浩/脚本・菅野友恵,向井康介/原作・越谷オサム)
上野樹里の柔らかで消えそうな佇まいと、松本潤の真直ぐで純粋な言動によって作られる、この二人の「幸福」はどこか不安定で危ういものです。
この映画で語られた「恋」は、結局のところ現実の中の出来事と言うよりは、どこか「幻影の恋」のように映ります。
たぶんこの主人公にとって中学時代に始まったこの物語が現したのは、永遠で唯一の恋、「初恋」を描いたものだったでしょう。
誰かに想い焦がれるという最初の経験が「初恋」だとすれば、その恋は現実の相手を想うというよりは、自らの中の幻想を相手に投影したものではなかったでしょうか。
それゆえ、その恋は非現実的で、過剰に美しい色を帯び、自らの理想の恋愛となり、そして永遠の命を得るのでしょう。
映画の挿入歌、山下達郎「光と君へのレクイエム」
そんな初恋の特別な形を、光や色、声や表情に、この映画で置き換えることができたのは、今が旬である出演者の輝きと、繊細な変化を映したカメラ撮影の美しさが大きな効果を上げていると感じました。
そもそも光とは、現実の物体ではなく、その物体から跳ね返る反射でしかありません。
それゆえ、美しい光に感動すればするほど、その光が常に移ろうと知っているが故に、人はその光景を強く記憶に留めようとするのでしょう。
そしてその光がもつ虚像と実像の相関関係こそ、初恋のもつ心理と共通するものだったでしょう。
それゆえこの映画の恋は、幻のように消え行く事で、初恋の永遠を表現したのだと感じました。
映画の挿入歌『素敵じゃないか(Wouldn't It Be Nice)』
――と書いといて何ですが、
この映画のラストでこんなセンチメンタルな私を嘲笑うようなシーンが描かれ、私の思い入れはナンダッタノという虚脱感に、★二つ引かせていただきました。
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上野樹里もなかなかいませんぜダンナ。ま〜美男美女のうらやましい恋物語ですね〜でも、ちょっと「きゅん」としちゃいましたm(__)m
恋愛モノは、見る者がそんなわきゃナイだろうという、照れを越えられるかというのが分岐点のように思いますが、私は結構そこの壁が低いのかもしれません。女子か(^^;