製作国 日本 製作年 2001 上映時間 132分 監督 是枝裕和 脚本 是枝裕和 |
評価:★★★★ 4.0点
静かなドキュメンタリー映像のような語り口で積み重ねられる、リアリティーに満ちた表現によって、その場に立ち会っているかのような臨場感を見ていて感じる。
そんな語り口で語られる、カルト教団のテロ実行犯達の遺族の思いを描いた作品。
実行犯の命日に集まった、加害者家族4人と元信者1名が共に過ごした一夜の情景を、実行犯との回想をまじえつつ表現される中で、遺族の胸中がいつしか浮かび上がる。
あまりにリアルで、見ていて偶然生まれた会話や動きのように感じられ、どこに演技があるのか判らなくなる。
ここには、現実と見間違うが如きリアリティーが生まれていると感じた。
そして、その「リアリティー=現実」が暴き出したものは、現代日本の「家族」の姿だったと思える。
とある無人駅に1人の若者、敦(ARATA)がいた。そこに勝(伊勢谷友介)実(寺島進)きよか(夏川結衣)らが、三々五々集まって来た。
映画『DISTANCE/ディスタンス』ストーリー
彼らはカルト教団「真理の箱舟」が起こした、無差別殺人の実行犯達の家族だった。その実行犯達は教団により殺害され、教団教祖も自殺した。その事件から3年後の夏、故人の命日に集まった4人の加害者遺族は、遺灰を撒いたとされる山間の湖に花を手向け手を合わせた。
ところが、林道に停めておいた彼らの車が盗まれてしまった。4人が途方に暮れていると、そこに坂田(浅野忠信)という男が現れ、彼もバイクを盗まれたと言う。
実は坂田は教団の元信者で、自らも命日に哀悼に来ていたのだった。坂田は4人を近くの教団施設であるロッジへ案内した。5人はそこで一夜を明かすことになる。そこで、お互いの事を語り、坂田に教団の事を尋ねるうち、喪った家族や、その当時の状況など、5人の思いは事件当時の記憶へと戻って行った。予備校の教師をしているきよかは、夫・環(遠藤憲一)が教育の理想を追求し、教団に入信した時のことを思い出す。学生である勝は、兄(津田寛治)が出家前日に訪ねて来た時のことを鮮明に覚えていた。会社員の実は、妻(山下容莉枝)が宮村(杉村蝉之介)という男と教団へ行くと告白された日の怒りを噛みしめた。敦は花屋で働いていたが、サイレント・ブルーという特別な時間について語っていた姉・夕子(りょう)の横顔を忘れられなかった。そして、実行犯の1人として選抜されながら、事件直前に脱走した坂田は、警察に取調べを受けていた時のことを思い出していた。そして、教祖のことを尋ねる敦に、彼が感じたその人物像を語るのだった。
そして夜は明け、5人は何とか駅までたどり着くと、電車に乗り込み東京を目指した。
3人が泥のように眠る中、坂田と敦は眠らずにいた。
そして坂田は、敦に「本当は誰なんですか?」と尋ねた――――
映画『DISTANCE/ディスタンス』予告
ARATA(敦)/伊勢谷友介(勝)/寺島進(実)/夏川結衣(きよか)/浅野忠信(坂田)/りょう(夕子)/遠藤憲一(環)/中村梅雀(菊間刑事)/津田寛治 (勝の兄)/山下容莉枝(実の元妻)/杉村蝉之介(宮村)/竹花梓(勝のガールフレンド)/木村多江(老人ホームのヘルパー)/平岩友美(実の妻)/中村育二(実の上司)
映画『DISTANCE/ディスタンス』出演者
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映画『DISTANCE/ディスタンス』感想・解説 |
この映画は、『ワンダフルライフ』で導入した「ドキュメンタリー手法」を、更に大胆に取り入れており、その試みは見事に成果を上げていると感じた。
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この映画は、撮影の際に劇中の台詞の多くが俳優自身から生まれているという通り、その現場で生まれる予想外の展開を記録するという撮影だったという。
それはまさに、ドキュメンタリーとフィクションの接点を模索したものだったろうし、そうせざるを得ない必然性が「オウム事件」によって作られたと是枝監督は言っている。
つまり「オウム事件」という現実が「ディスタンス」という映画世界に影響を明らかに与えている場合、映画の中で現実に何事かを発生させるという方法によってのみでしか、「映画内の現実」を作りえないということだったろう。
その演出に応えて、見事に「日常」を演じて見せた、出演者達の力に感動した。
また、その演技性を廃し、虚構ドラマ性を極力排除した、この「フィクション」によって、ドキュメンタリー作家としてその基礎を持つ是枝監督にとって、自らの表現のスタイルが、「ドキュメンタリー調」にこそあるのだと再確認したのではないかと想像した。(右:是枝裕和(著)『DISTANCE -映画が作られるまで』)
しかし、ここまで現実にこだわる理由を考えたとき、これは現代日本の物語で、現実の日本の家族、つまりは、平成の家族の真実を描いたがゆえに、必然的に求められた手法だったと思える。
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それは、「オウム事件」の背後に、日本的な家族の形、紐帯が喪われつつある現代において、「宗教」という「疑似家族」が必要とされたという、ドキュメンタリー作家是枝の透徹した眼があった感じる。
そして、「オウム事件」が象徴する、現代社会の現在進行形の問題として「家族の距離=ディスタンス」描写するためには「ありのままの光景=日常」を切り取ったような、この映画の手法は非常に効果的だと思った。
この作品を眼にしたとき、観客はこの映画で描かれた家族の断絶の悼みを見つめ、そのまま自らの家族の関係を問うだろう。
そして、この映画で顕れる「家族」の断絶の痛々しさを、まるで他人事と言える者がどれほどいるだろうか。
この実行犯達とその残された家族の心理的「距離=ディスタンス」は、同じ家に住みながらあまりにも遠い。
その事件によって現代家族は血族でありながら、あまりにもその絆が脆弱であるという事実が、無残にも暴き出される。
もはや、結婚や、血縁、地縁など、かつての家族制度を形成していた関係性に収まっていれば、そのまま無条件で家族として成立し、幸福と思えた時代は、すでに過ぎ去ったことがここには示されていただろう。
この人間関係の寂寥、虚しさ、やるせなさ、断絶の先に、家族という単位を離れて生きざるを得ない、孤独な日本人の絶望こそが、この映画の語る主題だったろうか・・・・・・
私は違うと思う。
ここには希望もあると信じている。
確かにこの映画では、実行犯家族という例を持って「血縁的な家族」が、もはや機能不全に陥っている姿を描いている。
しかし同時に、赤の他人でありながら遺族の間には、明らかに家族的な絆を形成する姿が描かれていた。
さらに教団内部が仲良く家族的であったという劇中のセリフで語られたのは、「血縁に因らない家族」という形が有り得るというその事実を、さらに裏付けているものだろう。
結局、遺族達の「実行犯=自らの家族」が何を考えていたのかという共通の想いや、教団内の宗教という共有すべき価値によって、赤の他人が「家族」となりえた。
つまりこの映画が真に語った物は、「家族」という集団が血縁関係に因って形成されるだけではなく、共通の「想い」を持つことによって「家族」として成立し得るという希望だったように思う。
それは同時に「血」よりも大事なのは、そのメンバー間の相互を思いやる「距離」なのだと言われているように感じた。
考えてみれば、「血縁に依らない家族」というこのテーマは、『そして父になる』『海町ダイアリー』の家族に引継がれ、より鮮明になって行くだろう。
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映画『DISTANCE/ディスタンス』ネタバレ・ラスト |
敦に「あなた、ほんとは誰なんですか?」訊ねた坂田。
彼は、敦が姉だという夕子から、教団在籍時に弟は自殺したと聞いていたのだ。
敦は答えないまま、五人は東京に着き、来年の命日での再会を約束した。
そしてある日、敦の姿は再び湖にあった。
敦の脳裏に教団の服を着た背中が、家族写真を焼く姿が浮かぶ。
敦は水面に向かって「父さん」と語りかけた。
そして桟橋に火を放った。
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映画『DISTANCE/ディスタンス』結末感想敦の正体 |
残された敦は、自らを捨て、新たな「家族=教団」に入って行った、父の行動に混乱し苦しめられ続けてきたと思える。
そんな敦がラストで見せた、炎を背に立ち去る姿。
それは「血族のしがらみ」を超えて、新たな関係性に向かい歩き出した姿だと信じたい・・・・
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未見なので見てみたいと思います(*‘∀‘)
なかなか面白そう〜
静〜〜かな、長回しの、ナンデそんなセリフ出るという、チョットとっつきにくい映画なんですが、私は面白かったです(^^)
あ、眠たくなるかもしれません( ゚ ρ ゚ )ボーーーー
加害者家族も被害者家族も同じ痛みを抱えてるって事ですかね〜・・
かなり真面目でっせ!
ありがとうございます。地味な映画ですけど、いい映画だと思いました。ヴィレッジのようなホラー感はありませんが、よろしければ(*´-`)