評価:★★★☆ 3.5点
高校生の恋愛が、水彩画で描いたような、淡い色調で美しい。
主役二人も、自然で、瑞々しく、リア充を見せつけられているにも関わらず、どこか笑って許せる可愛らしさがある。
・・・・・・そんなこんなで
脚本家 北川悦吏子が監督を務めた、高校生のカップルの物語。
北乃きいと 岡田将生が、演技と思えないほど自然にじゃれ合っていて、なるほど恋だなと思う。
アドリブやその場での臨機応変な動きなど、出来る限りナチュラルに見えるように努めていると感じる。
単純に、このキレイな二人が、恋の中にいて揺れてる姿を見るのは、新緑の風に吹かれるように心地よい。
この映画の肌触りは、岩井俊二作品と極めて近い。
岩井はプロデュースと編集に関わっているところを見ると、実作業としてこの映画に相当関与しているとも思える。
カメラマンは「花とアリス」の角田真一なので、映像として透明感があり美しい。
しかし岩井作品に較べれば、映像の細部が荒いというか、フォーカスが曖昧と言うべきか、解像度が低い印象がある。
結局そのシーンに必要な、情感なり情景を過不足無く描くべきにもかかわらず、足りなかったり多かったりすると感じた。
たとえばこのタイトルにしても、カップルの途中経過という意味かと思うが、その恋の途中の逡巡をドラマとして描くにあたって、そのストーリー以外の余分な情報が多いので物語としての集中力がないという印象を持った。
逆に言えば、もっと岩井俊二よりのスタンスに立って、ストーリーを語ることにこだわらず、鮮鋭なビジュアルと新鮮な演技を集積し、つないだ方が映画としてはより力を持ったのではないかと感じた。
しかし、脚本家として長年仕事をしてきた事を考えれば、ストーリーを伝える事を「ないがしろ」にできないであろうし、さりとて瑞々しい映像を捨てるのも惜しいという「迷い」があったのではないかと想像した。
さらに言えば、かつて北川悦吏子が脚本として描いた、大衆受けのする明快な恋の物語を描こうと、この映画はしていないと感じる。
それがこの監督にとって今後表現したい世界だとすれば、従来の脚本家北川悦吏子の「恋のドラマ」の強さによって観客を惹きつけた作品の方向性とは、明らかに違う。
結局この作品の表したものは、監督北川悦吏子が脚本家北川悦吏子に極力頼らない「映像詩」を作るという、試みの一本だったと感じた。
しかし、それでもこのカップルの瑞々しい自然な輝きを引き出したのは監督の演出力ゆえだと思うし、何よりも北乃きい演じる女子高生のアンビバレンツな魅力を抽出し得たのは、女流監督ならではの功績だと思った。
この女子高生の持つ、あまりにも「女」でありすぎる姿は、岩井俊二を含め男性監督には決して表現できない描写ではないだろうか。
映画技術として、十分整理されていない印象を持ちはしたが、そのマイナスを差し引いても、この鮮烈な映画は見る者の心に恋を感じさせる力があると信じる。
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最近の映画かと思いきや、2009年か〜ちょっと前ですね
4.0は良い方なんですよね。借りてみようかな?
ゴメンナサイ・・・・・3の間違いでした。
え〜と、ちょっと胸キュンでしたが、青春恋物語がお好みなら。
でもこんな学園カースト上位同士の恋なんか、見てて腹立つという意見もありましたm(__)m
仰るとおりですね。
ヤッパリ気合が入って、恥が多い季節だから、後々までダメージが・・・Orz