評価:★★★★★ 5.0点
最初の一音から美しい。
ジャズピアニスト、キース・ジャレットのピアノ・ソロ演奏です。
ただバックグランドミュージックとして流しておいても、自然にその空間は癒しの場に変わるでしょう。
しかし、ここに収められた音楽は、コンサートで演奏された一期一会の響きです。
楽譜もなく、出てきた一音、フレーズを元に、次の音が繰り広げられる綱渡りのような展開を追っていくうちに、最後の一音の消え行く響のなかに、深く静謐なリリシズムを見出すことでしょう。
できれば、初めて聴くときには、この演者が次に何をするのか予想できないという状況を想像しながら、コンサート会場の席に自分が座っていると思って、紡がれる一音一音を丹念に追いかけて見てください。
この演奏が、緊迫感に満ちて、スリリングなバランスの上で、奇跡的な完成度を持っていることに同意していただけると思います。
ピアノの持つロジカルでいながらヒューマンな、まさに音楽が形になったような楽器のポテンシャル。
キース・ジャレットの音楽的素養の蓄積を基に、誕生し消滅するリリシズム。
静かな深い森の中に明滅する光のような、音の連なり。
その演奏を聴き―
西洋文明にとって、音楽とはこういう事なのだなぁと・・・なぜか、そんな感慨を持ってしまいます。
この音の前ではただ黙るしかありません。
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ラベル:キース・ジャレット