2018年03月18日

映画『レッズ』ロシア革命を生きたアメリカ人/ネタバレ・感想・あらすじ・解説・ラスト

引き裂かれた20世紀

原題 Reds
製作国 アメリカ
製作年 1981年
上映時間 195分
監督 ウォーレン・ベイティ
脚本 ウォーレン・ベイティ、トレバー・グリフィス


評価:★★★★    4.0点



この映画は二つの印象的な曲を持つ。
一つは、共産主義の闘いに参加を呼びかける、勇壮なマーチ「The International」。
<1929年頃、佐々木孝丸と佐野碩による和訳・1番の歌詞>
たて 飢えたるものよ
いまぞ 日はちかし
さめよ 我がはらから
あかつきは きぬ
暴虐の鎖 断つ日
旗は 血にもえて海をへだてつ
我らかいな むすびゆく
いざ たたかわん いざ
ふるいたて いざ
インターナショナルわれらがもの

そして、もう一つは、アメリカの子守唄「I don't want to play in your yard」だ。
<ペギー・リーの歌う"I don't want to play in your yard">

20世紀は「The Internatinal」に謳われた、壮大な理想「人類の平等な社会」の実現が共産主義によって成し遂げられると信じる人々が、少なからずいたのである。
むしろ当時にあっては、資本家の搾取に代表される不公平な社会を憂える、純粋で、先進的な、「理想に燃えた」青年達にとっては、唯一の希望の思想であったと言うべきだろう。
それはこの映画の主人公、ロシア共産革命の歴史的ルポルタージュ『世界を震憾させた十日間』を書いたジャーナリスト、ジョン・リードの志した理想でも有った。

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映画『レッズ』ストーリー

1915年に結婚した社交界のルイーズ・ブライアント(ダイアン・キートン)は、オレゴン州ポートランドで急進的なジャーナリストのジョン・リードの講演を聞き、彼の理想主義に興味を持った。彼女も女性解放運動に参加し、結婚という不合理と戦おうとしていた。
熱弁をふるっていたジョン・リード(ウォーレン・ベイティ)はハーバード大学卒業後、ジャーナリストとして第1次世界大戦時の欧州で、国際労働者同盟の盛り上がりを肌で感じ、自ら労働運動の活動に身を投じた。アメリカに戻ったリードは雑誌『民衆』に、第一次世界大戦へのアメリカ参戦に、労働者の立場から反対だと論陣を張り、各地で公演をしていたのだ。
ルイーズとジョンの2人は、お互いの意思を尊重する関係を保つという約束のもと、ニューヨーク市のグリニッジ・ビレッジで同棲し、『民衆』編集長マックス(エドワード・ハーマン)、アナーキストでウーマンリブ主義者の作家エマ・ゴールドマン(モーリン・スティプルトン)、劇作家ユージン・オニール(ジャック・ニコルソン)など、その地の活動家と交流を持った。その後、2人はマサチューセッツ州のプロヴィンスタウンに移り、その主張を論文として発表し続けた。ルイーズはフェミニズムとアナーキズムの活動をし、ジョンはアメリカの共産主義団体「レッズ」に入党し、労働争議に関わるようになる。
世界を変えようと志す彼は、セントルイスの1916年の民主党大会で組織運営者として関わる。ルイーズはジョンが家を留守にしている時、ユージン・オニールと親密な関係を持った。それを知ったジョンは、自分がルイーズを愛している事をあらためて知り、2人は密かに結婚した。
そして二人は、革命が勃発した直後のロシアに渡り、社会主義運動家として参加した。ペトログラードで体験したロシア革命の歴史上の大事件を、ジョンは『世界をゆるがした十日間』という形で世界に知らしめた。アメリカに帰ったジョンは、米国内の社会党の改革を目指すが、対立する右派と左派の争いにより、運動は分裂解体の危機に瀕した。ジョンは自ら立ち上げたアメリカ共産労働党の公認を、ソヴィエト共産党から勝ち取ろうと、ルイズの反対を押し切って混乱の最中のロシアに再度潜入した。
しかし、ソヴィエト共産党はジョンの求めに応じなかった。ロシア革命の背後にある醜い権力争いの姿を見たジョンは、失意のままロシアを後にする。しかしその道中、共産主義拡大を恐れるフインランド当局によって逮捕、投獄されてしまった。
遠くアメリカで、ジョン逮捕の知らせを受けたルイーズは、必死の思いでフィンランドに密入国したものの、そのときにはすでにジョンは釈放されていた。
ジョンがロシアに再び戻ったと知ったルイーズは、ジョンの姿を求めロシアに向けて旅立った・・・・・

映画『レッズ』予告


映画『レッズ』出演者

ウォーレン・ベイティ(ジョン・リード)/ダイアン・キートン(ルイーズ・ブライアント)/ジャック・ニコルソン(ユージン・オニール)/エドワード・ハーマン(マックス・イーストマン)/イエジー・コジンスキー(グリゴリー・ジノヴィエフ)/ポール・ソルヴィノ(ルイス・フレイナ)/モーリン・ステイプルトン(エマ・ゴールドマン)/ジーン・ハックマン(ピート・ヴァン・ウェリー)/ジェリー・ハーディン(ハリー)/ニコラス・コスター(ポール・チューリンガー)/M・エメット・ウォルシュ(自由党クラブ議長)

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映画『レッズ』感想・解説


結局のところ東西冷戦が、ソ連という共産主義国家の敗北で終わったが故に、共産主義は失敗だと語られがちだ。

しかし、産業革命以後に年々広がる産業構造の歪みにより、1800年後半より資本主義社会の労働者は劣悪な条件の下で、過酷な日々を強いられる悲惨な被害者だった。
その虐げられた者たちを救う理論こそ共産主義であって、その時代の進歩的な人々や、ヒューマニズムに駆られた人々の、希望の理論であり、政治思想だったのである。
それは間違いなく20世紀を突き動かした、世界の理想であり希望だった。

そんな輝かしい人類の勝利が「ロシア革命」だと、当時の人々が感じていただろうと個人的に確信したのは、1925年に製作・公開されたソビエト連邦のサイレント映画『戦艦ポチョムキン』を見た時だった。
関連レビュー:映画と共産主義、2つの革命!
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その映画に出演した、ほぼシロウトの出演者(ロシア市民)達の誇らしげな顔を見るとき、この映画の7年前に起きた1917年のロシア帝国の革命運動が、事実、兵士・労働者を開放したのだと信じさせる。

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しかし結局、その理想が現実世界で機能しなかったのは、あまりにに人工的で理性的に過ぎたためだったろう。

この映画で語られるように理想を高く持てば持つほど、主義・主張が強くなり他者を排斥しなければ、理想を実現できなくなって行くだろう。
共産主義、社会主義は、労働者大衆が自ら権力を持ち平等な社会を作るという崇高な目標を掲げたものの、結果的には政治的には権力の集中を生み、テクノクラートという特権階級を生んだ。

さらに、計画経済という名のもとに進められた産業政策は、労働成果が個人評価として反映されない仕組みだったため、勤勉な者も怠惰な働き方へと流れ産業効率が低下していったという。
実を言えば、ソ連型の共産主義とは「戦時統制的共産主義」と名付けるべきもので、戦争中の国家存亡・個人の生死の崖っぷちで機能する政治経済体制だったと感じられてならない。

つまり、全ての人々、国家構成員が黙っていても国家のために献身する、非常時であれば有効に機能した。
しかし、平和が訪れ、生命の危険がなくなれば、人々は個人の幸福を求め、個人の幸福とは大体において他者との比較によって生じるものだろう。
その時、他者と関わりなく、自ら最大限の奉仕行為を成すはずだとする考え方は、人間の感情を無視した、あまりにも理性が勝った考え方だと言わざるを得ない。

つまるところ共産主義に限らず、人が夢想する「理想世界」という人工的な構築物は、たとえばアメリカの民主主義にしたところで、人間本来が持つ生物としての本能・情動を裏切る形で存在するものなのかとも思う。
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いずれにしても、この映画の主人公は米国人でありながら、英雄としてクレムリンに葬られているほど、共産主義に全てを捧げた人生だと言っていい。

しかしそれゆえ、共産主義の大義に全身全霊を捧げようと努力すればするほど、人間本来の情動が抑え難く込み上げてくると描かれていると感じる。
更にその情動は、理想に限界を感じ始めれば、とめどなく人としての押さえ難い感情が溢れだし、止めようがない。

結局この主人公が現したのは、崇高な理想に生きたいと願いながら、理想では収まりきれない人間の真実だったろう。
そして、人類は20世紀を通じて、この真実を学んだと言えるだろう。

その人間の抜き難い「生命の理=ことわり=情」を表したものこそ劇中の曲「I don't want to play in your yard 」というアメリカの子守唄だったと思える。
<"I don't want to play in your yard"歌詞和訳>
I don't want to play in your yard(わたしはあなたの庭で遊びたくない)
I don't like you anymore(私はもうあなたが嫌い)
You'll be sorry when you see me(あなたが私を見るときに後悔するでしょう)
Sliding down our cellar door(私の家の地下室には入らせない)

You can't holler down our rain barrel(私の家の雨桶の上で、あなたを騒がせない)
You can't climb our apple tree(私の家のリンゴの木で、あなたに木のぼりはさせない)
I don't wanna play in your yard(わたしはあなたの庭で遊びたくない)
If you can't be good to me(あなたが私に優しくしないなら)


このノスタルジックな曲は、人が子供の頃に感じるセンチメンタルな愛憎を表して、聞く者を切なくさせる。
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この曲は主人公の理想ゆえに感ぜざるを得ない人間的な苦悩を、エモーショナルに表していると感じる。

しょせん人は嬰児に与えられる無条件の愛情を、我が物としたくて足掻き続けるものではなかったか。
特に男にとっては、社会の中で己の価値を証明しようと奮闘するのも、母の愛を求める心理に源を発していると思えてならない。

結局「The International」の男の強がりとは、「I don't want to play in your yard 」に表される、幼子の愛の充足を求めるがゆえだろう。
この切なさこそ、人が命を抱えて生きていくということに他ならないのだと、この映画は語っているように思う。

そんな人間の「情=生物の理」と「理性=人工的理想」の「せめぎあい」が歴史であり、その歴史と個人との関係が「運命」と呼ばれるのだろう。

映画『レッズ』受賞歴

この映画はアカデミー賞の7部門で候補となり、ウォーレン・ベイティに最優秀監督賞をもたらし、他2賞でウィナーとなった。
第54回アカデミー賞:最優秀監督賞(ウォーレン・ベイティ)、最優秀助演女優賞(モーリン・ステイプルトン)、最優秀撮影賞(ヴィットリオ・ストラーロ)受賞。
第39回ゴールデングローブ賞:最優秀監督賞(ウォーレン・ベイティ)

第54回アカデミー賞受賞式スピーチ

プレゼンターはジャックレモンとウォルターマッソーで、ノミネート者を紹介。
ルイ・マル(アトランティック・シティ)、ヒュー・ハドソン(炎のランナー)、マーク・ライデル(黄昏)、スティーヴン・スピルバーグ(レイダース/失われたアーク《聖櫃》)、ウォーレン・ベイティ(レッズ)。勝者はウォーレン・ベイティ。

<ウォーレン・ベイティ、スピーチ大意>
ありがとう。キートンさん、私は、こんな形式ばった表現が時としてきまり悪く、そして、後で個人的に会って話す時が素晴らしいと知っています。私は、全ての監督が素晴らしい仕事をしたと、ぜひ言わせて頂きたい。そして、私が思うに、今夜彼ら(監督)が示しているのは、神に感謝します、私が飛び抜けた者ではないという事です。ニコルソンさん、私がここにいることを、あなたが私以上に喜んでいると、私は知っています。
私は、私が得た良き人々に、一つの事をしなければなりません。(関係者の名前を列呼し、謝意を述べる)
そして、私は紳士の皆様にぜひ言いたいのは、時としてお互いどれほど揉めようとも、ガルフ+ウエスタンという資本主義の塔が、3時間半に及ぶ米国初期の共産主義と社会主義のロマンスに投資するという、あなた方の決定が、単にあなた方の信用だけでなく、ハリウッドと映画産業の信用を高めたということです。
そして、私が思うに、それが反映するのはアメリカ社会の言論の自由と、政府と資本家の人々が検閲をしていないと示すものです。感謝します。


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以降の文章には

映画『レッズ』ネタバレ

があります。ご注意ください。

(あらすじから)
ジョンを追ってロシアに入ったルイーズは、しかしジョンに会えなかった。ジョンは、ソヴィエト共産党でコミンテルン執行委員の地位を与えられ、その体は腎臓病を病んで日々衰弱していたにもかかわらず、ロシアの辺境の地へ演説旅行に赴いていたのだ。
ルイーズはジョンの行方を求め探すうちに、フェミニストでアナーキストのエマと思わぬ再会をし、昔を懐かしんだ。
そして数週間後、モスクワ駅に遠征から戻った列車が到着した。
そこでルイーズは、ついにジョンを見つけると、彼の元に歩み寄り固く抱き合った。
(意訳)ジョン・リード:一緒にいてくれ・・・・・置き去りにしないでくれ。

映画『レッズ』ラストシーン

だが、ジョンの体はすでに病で限界に達しており、ついに病院へと運び込まれた。
その傍らには、ルイーズが看病する姿があった。
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しかし、ルイーズの看護もむなしく、ジョンは生まれ故郷のアメリカを夢見ながら、ロシアで世を去った。
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ジョンの遺体はソ連の革命英雄として、モスクワに赤の広場にあるクレムリンの壁に埋葬された。



posted by ヒラヒ・S at 17:11| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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