原題 VICKY CRISTINA BARCELONA 製作国 アメリカ スペイン 製作年 2008 上映時間 96分 監督 ウディ・アレン 脚本 ウディ・アレン |
評価:★★★★ 4.0点
海外旅行の話をしていて一人の女性が、フランス人てばロマンチックでと呟くと、別の女性はイタリアを歩いただけで男から情熱的な声をかけられて感動するとおっしゃいます。
するともう一人の女性が、いいや、それはスペインのほうがトンデモナイといったあと、30秒ほど遠くを見つめて無言でした。
彼女の身に何事があったのでしょうか・・・・・・・
この映画はそんな、スペインのバルセロナを旅する二人のアメリカ人女性が経験する、ひと夏のアバンチュールを描いた映画です。
<目次> |
映画『それでも恋するバルセロナ』簡単あらすじ |
真面目なヴィッキー(レベッカ・ホール)と大胆派のクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)は学生時代から親友同士で、アメリカからひと夏のバカンス先としてスペインのバルセロナに来た。ある日画廊のパーティーに参加した2人は、セクシーな画家フアン・アントニオ(ハビエル・バルデム)と出会う。クリスティーナはたちまち一目惚れし、ヴィッキーも婚約者ダグ(クリス・メッシーナ)がありながら、少しずつ彼に惹かれていった。ヴィッキーの苦悩をよそに、クリスティーナとフアン・アントニオは互いに愛を確かめ合う。しかし、そこにフアン・アントニオの元妻で、恋に人生を賭けたようなマリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)が自殺を企て、彼を頼って来る。そして、不思議な共同生活が始まり、1人の男と3人の女を巡る運命は予想外の方向へ・・・・・・・・
映画『それでも恋するバルセロナ』予告 |
映画『それでも恋するバルセロナ』出演者 |
フアン・アントニオ(ハビエル・バルデム)/ヴィッキー(レベッカ・ホール)/マリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)/クリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)/ジュディ・ナッシュ (パトリシア・クラークソン)/マーク・ナッシュ(ケヴィン・ダン)/ダグ(クリス・メッシーナ)/ナレーター(クリストファー・エヴァン・ウェルチ)
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映画『それでも恋するバルセロナ』感想 |
はっきり言って世界観が違うのです。
アメリカ側は、真面目な女性と、恋に積極的な女性の2人。
スペイン側は、画家の男と、その恋人です。
このスペイン代表が、ま〜いやらしい事。
動くだけでフェロモンが1km四方撒き散らされるぐらいの、濃厚さです。
この人たちは本気で「愛=欲望」の為だったら何でもするという覚悟がにじみ出てます。
いっそ清清しいくらい明確に、「エッチが好きだ〜〜〜〜〜〜〜〜」と絶叫しているようなモノです。
多分この人たちは、生まれてこの方「エッチが好きだ〜〜〜〜〜〜〜〜」という両親に育てられ、「エッチが好きだ〜〜〜〜〜〜〜〜」という友達に囲まれ、「エッチが好きだ〜〜〜〜〜〜〜〜」という彼女と「エッチが好きだ〜〜〜〜〜〜〜〜」と言いながらエッチをするのでしょう。
それがその文化圏の標準なのですから、よその人がとやかく言う筋合いではありません。
不思議なことに、見ているうちにタンパクな日本人であるこの私ですら、だんだんこんな生き方をして何がいけないんだろうという気になってきます。
エッチ、エッチと連呼しましたが、スペイン人に成り代わって言えば、人を愛するというとき「精神的な愛」なんてひじょ〜〜にうそ臭いと思いませんか。
お互いの心も体も貪りつくしてこそ、本当の愛だといわれれば否定できますでしょうか?
ということで、その文化にはその文化なりの正義が在るという事です。
ただし、問題なのは(全ての外交問題に共通しますが)そう考えない人々、文化圏もあるという事です。
たとえばこの映画のもう一方の主役、アメリカ文化の公序良俗というのは「キリスト経的禁欲」をベースにしています。
多少ユルくなってきたとはいうものの、基本的には人生の幸福とは、勤勉によって生活の糧を得て家族皆でつつましく暮らすというものです。
つまりは欲望を抑えて、勤勉で慎ましやかに生きるという人生観で生きているのです。
そんな、「エッチが好きだ〜〜〜〜〜〜〜〜」という人と「エッチが嫌いだ〜〜〜〜〜〜〜〜」という人が、ぶつかったときどうなるか、折り合いが付くかという問題が出てくるのです。
そしてこの映画で語られているように、だいたい、文化衝突の結果は「好きだ〜〜〜〜〜〜〜〜」という欲望・要求が強いほうに引っ張られるモンです。
ですから本来は、世界中がラテン系で埋め尽くされても不思議ではないのですが・・・・
じっさいはそうなっていないのは、ラテンの人の移り気な性格のおかげと、もうひとつはラテン文化で生まれ育っていない人々にとって、四六時中フェロモンシャワーを浴び続ける事が苦痛に感じてくるんじゃないかと、かってに想像してます。
それにしても、スペインもアメリカも同じキリスト教を文化の基礎においていながらこんなに違うんですから、文化交流っていうのはホンとに難しいことですね。
ましてや、東洋と西洋なんていえば・・・・・
関連レビュー:東西文明の衝突としての戦争 映画『戦場のメリークリスマス』 第二次世界大戦の東西文明の相克 大島渚監督、デヴィッド・ボウイ, 坂本龍一, ビートたけし出演 |
ということで、アメリカ人の「禁欲的なキリスト文化を背景に持つ」二人は、世の中には違う価値観で暮らしている人もいるんだな〜と感嘆しつつ、エッチばっかりではない国に帰っていきましたとさ。
「めでたしめでたし」ということかと・・・・・
しかし、この映画を見て「えっ?ホントにウッディアレン」とビックリしました。
正直、冴えないオタクっぽいあのウッデイ・アレンが、こんなセクシーでこんなフェロモンたっぷりの映画を撮れるなんて。
もっともユダヤ人ていうのも、欲望の量で言えばスペイン人に負けてないのかもしれませんね・・・・対象が「お金」か「エッチ」かの違いだけで。
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映画『それでも恋するバルセロナ』解説受賞歴 |
第81回 (2008年)アカデミー賞・助演女優賞/ペネロペ・クルス
第74回 (2008年)NY批評家協会賞・助演女優賞/ペネロペ・クルス
第34回 (2008年)LA批評家協会賞・助演女優賞/ペネロペ・クルス
第66回 (2008年)ゴールデン・グローブ・作品賞(コメディ/ミュージカル)
第62回 (2008年)英国アカデミー賞 助演女優賞/ペネロペ・クルス
第81回アカデミー賞・助演女優賞スピーチ |
プレゼンターはティーダ・スィントン、ウーピー・ゴールドバーグ、アンジェリカ・ヒューストン、 ゴルディン・ホーン、エバ・マリー・セイント
ティーダ・ウインストンは我々5人は助演女優賞の候補者を祝うためにここに立っています。エバ・マリー・セイントは『ダウト/あるカトリック学校で』のヴァイオラ・デービスを子供を愛する母を演じ素晴らしかったと紹介。アンジェリカ・ヒューストンは『それでも恋するバルセロナ』のペネロペ・クルスを紹介して美しく、魂があり、真のコメディアンと紹介。ウーピー・ゴールドバーグ、は『ダウト/あるカトリック学校で』のエイミー・アダムスを紹介し尼さんは大変(自身『天使にラブソングを』で演じる)だが、感動的だったと述べた。ゴルディン・ホーンは『ベンジャミンバトン』のタラジ・P・ヘンソンを紹介、素晴らしい演技だと賞賛し、ティーダ・ウインストンは『レスラー』マリサ・トメイに働く母に勇気を与えたと紹介し、受賞者を読み上げる。
受賞者はペネロペ・クルス(それでも恋するバルセロナ)
【受賞スピーチ・意訳】
これは45秒では無理です。誰かここで気を失いました?私が最初かもしれない。アカデミー協会に感謝します。これを候補者の皆や、この映画で一緒に仕事をする特権をくれた素晴らしい俳優の皆と共有したいと思います。ウディ(アレン)、この美しいキャラクターを私に託してくれてありがとう。ここ数年間で、女性にとって最高の役をいくつも書いてくれて感謝します。そして私は、素晴らしい女性キャラクターに関して、友人のペドロ・アルモドバルが数々の冒険に参加させてくれたことに感謝せずに、語ることはできません。ビガ・ルナ、フェルディナンド・トルバ、最初の2つの映画を与えてくれてありがとう。ハーベイ・ワインスタイン、ありがとう。私はこれを私の両親と私の兄と妹、亡くなった私の友人のロベルト・カルロ、そして最初から私を助けてくれたすべての人に、心から捧げたいと思います。
私はアルコベンダスという場所で育ちましたが、これはあまり現実的な夢ではありませんでした。私はいつもアカデミー賞の夜、私は授賞式を見るた起きていました。そして、私はこれがいつも、この式が世界が一つになる瞬間だと常に感じていました。その命を守ります。だから私は本当に感謝します。そして私はスペイン語で何かを言うべきです。(以後スペイン語)この瞬間を私と共有していて、これは皆のものであると感じているスペインの全ての方々へ。私は皆様と母国の全ての俳優に捧げます。どうもありがとうございます。
関連レビュー:オスカー受賞一覧 『アカデミー賞・歴代受賞年表』 栄光のアカデミー賞:作品賞・監督賞・男優賞・女優賞 授賞式の動画と作品解説のリンクがあります。 |
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映画『それでも恋するバルセロナ』考察恋愛映画紹介 |
各国の恋愛映画を見てみると、恋愛に対する国民性が見えるように思います。
フランス映画といえば恋愛映画です。
ほとんど肌も見せずに、この匂い立つような官能。もはやめまいすら感じます。
フランス製・官能恋愛映画 『髪結いの亭主』 フランス的官能としての恋の行方 パトリス・ルコント監督、衝撃のラストの語る真実 |
フランス映画が描く恋愛は、お互いどろどろになるまで感情をぶつけ合い、相手を支配し喰らい尽くそうとする凄味を感じる。
恋愛こそ全てに優越するという、ラテン的恋愛至上主義の人生が描かれているだろう。
フランス恋愛至上主義者の恋 『ポンヌフの恋人』 互いを貪りつくすような恋愛の形 レオス・カラックス監督の究極の恋 |
そんなフランス式官能が不倫愛となると、その行きつく先には・・・・・・
「一緒にいたら苦しい・・・・・離れていては生きられない」
フランソワ・トリュフォー監督の描く「不倫愛」 『隣の女』 隣に越してきたのはかつて愛した女だった・・・・・ 恋愛至上主義者たちの不倫の行方 |
しかし70年代に入ると、「フランス=ラテンの恋愛至上主義」は「性愛至上主義」までその自由を拡張します。
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そんなラテン的濃厚な恋愛に較べると、清潔な印象を持つアメリカ製恋愛映画。
切ない映画だが、アメリカ人は、全力で恋愛に向かうというよりは理性が勝っているように感じる。
クリント・イーストウッド監督の不倫劇 『マディソン郡の橋』 イーストウッドとメリル・ストリープの大人の恋 4日間の短くも燃えるような恋 |
そんなアメリカ製恋愛映画は、恋に至上の価値をおいていないように見える。
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更にアジアとなると、恋とは常に社会的な制約下にあるように思います。
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それが恋愛下手な日本人となると・・・・・・
もはや恋愛というよりは、性愛に近いかもしれない。さらに言えば、恋愛を求めているというよりは、社会に対する憤懣を不倫愛にぶつけているようにも見える。
日本製大ヒット不倫映画 『失楽園』 渡辺淳一原作の同名小説を映画化 役所広司、黒木瞳の大胆な性愛描写 |
そんな日本人の不倫愛の極致。
もはやアナーキーな反社会的・破壊活動の様相を呈している。
全体主義社会と闘う不倫映画 『愛のコリーダ』 芸術か猥褻か世界中で論議の問題作 大島渚監督渾身の戦闘的な恋愛映画 |
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