2020年05月18日

映画『私をスキーに連れてって』バブルに大スキーブームを生んだヒット作!/あらすじ・感想・解説・ネタバレ・ラスト・時代を描いた映画

ブームは絶好調、映画は?

英語題Take Me out to the Snowland
製作国 日本
製作年 1987年
上映時間 98分
監督 馬場康夫
脚本 一色伸幸
原作 ホイチョイ・プロダクション


評価:★★★  3.0点



この作品は、日本が空前の好景気を迎えようとしているバブル期が、始まったころに取られた映画です。

日々資産価値が上がり、社会に新たな富が溢れだし始めたころ、若者たちもその恩恵に預かり楽しく日々を過ごしていたのでした。

そんな時代に、若者達のレジャースタイルに革命を起こしたのがこの映画でした。
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<目次>
映画『私をスキーに連れてって』ストーリー
映画『私をスキーに連れてって』予告・出演者
映画『私をスキーに連れてって』感想
映画『私をスキーに連れてって』解説/バブル期とレジャーと青春映画
映画『私をスキーに連れてって』評価
映画『私をスキーに連れてって』ネタバレ・結末

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映画『私をスキーに連れてって』あらすじ

矢野文男(三上博史)は総合商社「安宅物産株式会社」に勤めているが今一つうだつが上がらない。しかし、週末には大学の部活で鍛えたプロ級の腕前を、ゲレンデでスキー仲間の佐藤真理子(原田貴和子)、小杉正明(沖田浩之)、羽田ヒロコ(高橋ひとみ)、泉和彦(布施博)、らと共に発揮していた。文男の滑りは秀でていても、異性との交際は苦手で、女性にも興味をもてないでいた。そんな彼が、クリスマスイブに志賀高原で滑走していると、転んでいる女性・池上優(原田知世)を見つけ心惹かれる。偶然にも優は文男と同じ安宅物産の秘書課に勤める同僚だった。
二人はヒロコの取り持ちもあって、大晦日の夜スキー場で互いの気持ちを打ち明けた、優と文男の交際が始まった。その時期の文男は、先輩と慕う田山雄一郎(田中邦衛)が企画した、スキー用品「SALLOT(サロット)」の新発売を、他部署ながら手伝い、自分の仕事も含め大忙しだった。しかし、付き合い出した優とは会えない日が続く。そんな二人のために、ヒロコ達仲間はバレンタインデーに志賀高原スキー場でのスキーを計画した。バレンタインデー当日、文男はみんなと発表前のSALLOTのスキーウェアを着てスキーを楽しんだ。 そんなさなか、万座温泉スキー場で開催されるSALLOTのプレス発表イベントが開かれる予定になっていた。しかし田山と対立する所崎(竹中直人)の策略によって、見本製品が会場に届いていなかった。イベント会場からの電話で、これを知った真理子とヒロコはその着ているウエアをイベント会場に届けようと、雪道をトヨタセリカでラリー車のように急ぐものの、無理な走りで横転事故を起こした。一方の優は、志賀高原の山頂を越えれば万座が直ぐだと気付き、自らスキーで危険な山越えに飛び出す―
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映画『私をスキーに連れてって』予告

映画『私をスキーに連れてって』出演者

池上優(原田知世)、矢野文男(三上博史)、佐藤真理子(原田貴和子)、小杉正明(沖田浩之)、羽田ヒロコ(高橋ひとみ)、泉和彦(布施博)、恭世(鳥越マリ)、ロッジのオーナー(上田耕一)、ゆり江(飛田ゆき乃)、課長(小坂一也)、所崎(竹中直人)、田山雄一郎(田中邦衛)

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映画『私をスキーに連れてって』感想



え〜っと、です。

ヤッパリ映画としては、お金もかかってなさそうだし、ストーリーはマンネリだし、予定調和の結末だし、画面のそこここに隙間があるし、ドラマの魅力としては月並みで、映画技術として優れているとは感じませんでした。
もうちょっと詳しく言えば、三上博史演じる主人公のキャラクターはスポーツは得意でも女の子は苦手という「硬派」で、原田知世演じるヒロインは一歩引いて男を立てるような「良妻賢母」型です。
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今考えれば硬派も良妻賢母も死後に近いですが・・・・
その当時は、このタイプが理想形とされていました、で、そのままナンのひねりもなく描かれています。

ということで、キャラクターの設定がプロトタイプ過ぎるという気がします。
また、ストーリーのクライマックスは、先輩のスキーブランドの発表会のため危険を省みず、発表会場に向かうというものですが、これも良くある熱血パターンの筋立てに見えます。

更に言えば、映画全体の中でこのシーンが長すぎるため、おしゃれなスキー映画として見ていたら、なにやら汗臭くなってきてしまい、最後にはスポーツで勝利したようなヘンな後味となってしまいました。

けっきょく、映画が語るイメージははスキー場のおしゃれな恋物語だったはずなのに、特に後半は熱血スキー物語になってしまい、映画として混乱したように思います。

そういう意味では、製作者側がどういう映画にしたいという、完成形が不明瞭だったということだったのでしょうか?

または、出来上がりのゴールは見えていたのに、その通りに出来上がらなかったのか・・・・・イロイロ考えられるとは思いますが、いずれにしても映画のテーマと物語のマッチングが十分では無い様に感じました。

まぁ〜とはいうものの、そんな技術的にイカガナモノカという点があるにせよ、私はこの映画を高く評価したいと思います。

この映画は間違いなく、バブル時代の若者達に一つのライフスタイルを供給し、たいへんなレジャーブームを巻き起こしたのですから。

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映画『私をスキーに連れてって』解説

バブル期とレジャーと青春映画

ユーミンの歌と、週末のスキー。

この映画はバブルが始まり出した時代に、社会にお金が溢れていた頃の若者達の「娯楽」を求める心に照準を合わせ、完璧なプレゼンテーションを見せています。
バブル景気(バブルけいき、英: bubble boom)は、好景気の通称で景気動向指数(CI)上は、1986年(昭和61年)12月から1991年(平成3年)2月[2]までの51か月間に、日本で起こった資産価格の上昇と好景気、およびそれに付随して起こった社会現象とされる。情勢自体はバブル経済と同一であり、バブル経済期(バブルけいざいき)または、バブル期(バブルき)や平成景気(へいせいけいき)、平成バブル(へいせいバブル)とも呼ばれる(wikioediaより)

トレンディーでファッショナブルな恋愛スタイルとして「彼女ができたらスキーデート」をする。
ゲレンデは彼女を見つける場。

そんな、若者世代のマストアイテムとしてスキー場は求められたのでした。

特に女性にとっては、そのゲレンデはスキーの娯楽性以上に、自分をファッショナブルに華麗に見せる事に労力を注ぎ、恋の社交場と化し、男達も女性陣の心をつかむために、スキー場に向かうのに4WDの車を購入し、女性達の要望に応えようとガンバッタのです。
<映画内で走るセリカ>

この映画のおかげで、リフトに乗るのに何時間も待つなんて、とてつもないスキー渋滞を巻き起こすことになってしまったのです。

クリスマスは彼氏と、スキー場のホテルに行くなんて話も、実際よく聞かれたようです。
<ユーミンの『恋人がサンタクロース』>
そんなの映画の観客層10代後半から30代前半に向けて、確実に彼らが求めているレジャーをプレゼンテーションした、マーケット力に敬意を表しての評価です。

たとえば古くは1977年『サターデーナイトフィーバー』のディスコ、1986年『ハスラー2』のビリヤードや、最近で言えば2009年からアニメ放送された『けいおん!』のガールズバンドブームのように、何か楽しい事を求めている若者達の心に訴えかけるコンテンツを持った映画は、商業的な成功を手に入れられるという好例だったでしょう。
関連レビュー:トムクルーズ主演の大ヒット作
『ハスラー2』
第2次ビリヤード・ブームを生んだ映画
ポール・ニューマンのアカデミー賞受賞作

そんな若く感受性イッパイの時に見た、青春期の映画は「永遠の命」を持つものだったりしないでしょうか。
この映画は、劇としての力を十分に持ち得なくても、人々の憧れを描きえるという稀有な例とも思えるのです。
その実態以上に過大にイメージされた世界とは、けっきょく表現物を見た鑑賞者の中で結ばれた、心の中の理想像で在るように思います。

こんな対象と鑑賞者の間に結ばれた、現実を超越した絶対的な価値を持つものを「アイドル」と呼びはしないでしょうか・・・・
つまりは映画の持つ情報以上に、自分の夢や理想を、観客の心の中で「輝ける偶像=アイドル」として結ぶことに成功した作品だと感じました。

そういう意味では、この映画は時代を象徴する「アイドル映画」としての力を、明らかに持っているように思います。

その「アイドル力」が、当時19歳の知世ちゃんの笑顔に、鮮烈に表れていると思います。
有名なシーン<バーン>
しかし実力を十分に持たない「アイドル」が、「旬」を越え輝く時期を過ぎると急激にその力を減じるように、映画もまたシッカリした内容を持ってないと「時代」を越える事ができないのではないでしょうか。

今見ると、祭りの後の寂寥感に似たものを感じます―

もっとも、見た人々にな〜んも残せない映画が山ほどあることを考えれば、ある世代の心に「青春の象徴」となる、永遠の輝きを与えただけでも成功と言うべきでしょう・・・・・・・

この映画には、明らかにその時代が持つ「時代感」が、意図せず埋め込まれているのも、その時代を肌で感じられる貴重な一本だと思います。
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映画『私をスキーに連れてって』考察

時代を反映した日本映画


映画には、図らずも、時代が映り込む事が有ります。

ここでは過去のレビューから、そんな時代を代表する映画を紹介したいと思います。

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平成時代の青春群像

いずれも、時代感が乗り移った作品群だと思います・・・・

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以下の文章には

映画『私をスキーに連れてって』ネタバレ

があります。
(あらすじから)優が万座までの危険な山越えルートを目指したと手紙で知った文男は急いであとを追い優を捕まえた。泉、小杉も加わり4人は、夜の暗い山中を万座を目指し必死に滑走する。しかし、たどりついた万座の屋内会場は無人だった。間に合わなかったと、落胆した四人だったが、外のステージでは車で駆け付けたヒロコと真理子がカメラに囲まれポーズをとっていた。
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映画『私をスキーに連れてって』結末

カップルの「SALLOT」モデルとして、舞台に上げられた二人。ステージの上で優は文男にバレンタインチョコを渡し、手で銃を作り「バーン」と狙い撃ち、笑った。
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posted by ヒラヒ at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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