評価:★★★★★ 5.0点
この映画は、1940年公開されました。
ギャグ映画としての面白さと、ナチスの独裁政治や人種差別に対するヒューマニズムの発露が感動を呼ぶ、映画史に残る傑作の一本だろうと思います。
<独裁者あらすじ>
第1次世界大戦・末期、敗色は濃いトメニア軍陣地でユダヤ人の床屋(チャーリー・チャップリン)が兵士として戦っていた。トメニア軍の空軍将校シュルツ(レジナルド・ガーディナー)は窮地を、床屋に救われる。シュルツと床屋の2人は自軍が敗戦したことも知らず、必死に逃げ帰った。床屋は記憶喪失となっていた。数年後トメニアに政変が起こり独裁者ヒンケル(チャーリー・チャップリン)が、国民の熱狂的な支持を得た。彼はアーリアン民族の優越と、ユダヤ人迫害を行った。そのためユダヤ人街に住むジャッケル(モーリス・モスコヴィッチ)やハンナ(ポーレット・ゴダート)も、そしてユダヤ人街の理髪店に帰っていた床屋も、日常的にユダヤ人街に来る突撃隊の乱暴を受けた。ある日床屋が逮捕されようと言う時、今は突撃隊の隊長になったシュルツに助けられる。一方独裁者ヒンケルはオスタリッチ進駐を考え、反対するシュルツは追われる身となり、床屋とともに逮捕されてしまった・・・・・・
(原題The Great Dictator/製作国アメリカ/1940年/126分/監督・脚本チャールズ・チャップリン)
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『独裁者』感想・解説
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『独裁者』感想・解説
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しかし、実際に歴史的な流れからこの映画を見てみれば微妙な点がありまして・・・・
まずは、当時のハリウッド映画界が総力を上げてこの映画を作らせまいとしたという事実。
これは当時、まだ第二次世界大戦に突入前だった、アメリカ政府の事なかれ主義と、ハリウッド自身の中立作品を作るという基本方針があったようです。
当時のハリウッド映画界というのはほぼ100%に近くユダヤ人が創業者で、ユダヤ人達がハリウッド映画界を牛耳っていたのです。
当ブログレビュー:映画『紳士協定』ユダヤ人種差別とハリウッド歴史・あらすじ・感想
この当時はナチスがユダヤ人を差別しているというものの、まさかホロコーストまでの事態とは想像もしていないし、むしろドイツの映画マーケットを失いたくないという意向のほうが強かったようです。
そんな反対にあったチャップリンは、自身の独立プロを持っていたため、ハリウッドの反対を押し切って自腹で制作費を捻出し、完成にこぎつけたのです。
しかし、戦後になってヒットラーの狂気のような政策が明確になって始めて、世間はこの映画を作り公開した勇気に対して、チャップリンに賞賛を浴びせるわけですが・・・・・・
しかし、考えてみるとこれはギリギリでは無かったでしょうか。
言論の自由と言うこともありますが、この映画公開時点でこのナチス批判は、行き過ぎのような気がします。
黒に限り無く近いものの、まだグレーな容疑者の段階だったでしょう。
実を言えば、当初ヒットラーの勢力進捗に対しては、ヨーロッパ各国を含め融和的でした。
多少強引なところは有るが、反共産主義を標榜していましたので、ドイツとソ連で戦ってくれれば都合がいいという位の感覚だったのです。
そんな段階で、ハリウッドを敵に回し、意地を張ったのは、ナチスの悪に対するヒューマリズムからだと言いたいところではあります。
が、ここで戦後のチャップリンが不思議なことを言います。
それは、ホロコーストなどナチスの真の残虐さを知っていたら、この映画は撮れなかったというのです。
え〜と、ヒューマニズムで撮ったンじゃないの?
ジッサイ混乱しました。
ヒューマニズムじゃないとしたらナンダ?
出てきた可能性は三つ・・・・・・・
一つは、チャップリンが共産主義のシンパだったというもの。
この映画を撮っている1939年頃は、ナチスドイツとソビエト共産主義は犬猿の仲だと見なされていました。それゆえ、チャップリンは共産主義を守るために、無我夢中でこの映画を作り上げたと思ったわけです。
しかし、戦後左寄りでアメリカ追放処分を受けたチャップリンですが、明確に共産主義者だという証拠はありませんし、ど〜もそこまで強い思いもなさそうに個人的には感じます。
もう一つは、先ほども言った当時ハリウッドを牛耳っていたユダヤ人たちに対する嫌味なんじゃないのというものです。
映画の内容にまで口出しする彼らに対し、同胞のユダヤ人たちが困っているのに、商売の事を考えてナチス批判もできないなんて、おかしいと言うチャップリンの主張だと思うわけです。
残るもう一つは、コメディアンの意地かなって・・・・・
実を言えば、ヒットラーのちょび髭は、すでに世界的な大スターチャップリンのスタイルを真似たものだという説が当時からあったそうです。
そんな自分の真似をした独裁者ヒットラーの、あんまりの極悪非道の所業に、俺のスタイルを悪に使うなんて許せん!!
徹底的にオチョクって、小バカにしてやる、ハリウッドはヤッチャイケナイっていうけど、俺はぜったい認めない、ええい、ヤッチャエ。これが真相だ!!
この映画には名シーンがたくさんあります。
その一つ、独裁者ヒンケルが地球を手玉に取るシーン
【意訳】
ヒンケル:去れ、一人になりたいのだ(地球儀に近寄り)シーザーでなければ匹夫たれ(皇帝か無か)世界の皇帝・・・我が世界。
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以降「独裁者・ネタバレ」を含みますので、ご注意下さい。
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独裁者ヒンケルに逮捕された床屋とシュルツは、軍服を盗み収容所を脱出します。
そしてヒンケルと瓜二つの床屋は本物のヒンケルと間違われ、ヒンケル軍と一緒にオスタリッチに進軍するはめになります。
そこで独裁者ヒンケルとして、床屋は演説をしなければならなくなるのです・・・・・・・・・
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独裁者ラストシーン
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ラスト、ヒンケルに間違われた床屋が感動的なスピーチをする、映画史上最も有名な演説シーン
Mr.チャップリン、あなたの言葉は人類の希望です・・・・・・・・・・
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1940年とは・・流石にレンタルでもないでしょう?
評価5.0気になりますが・・
あろがとうございます(^^)1940年ですから、時代は感じますが、映画史に残る古典ですので、結構笑えますし、宜しければ・・・・
ありがとうございます(^^)たしかにナチスカブりでした(笑)
もう古典的な評価が確定した作品で、映画で芸術を語った映画史の一本ですので、5.0を付けないわけには行きませんでした・・・m(__)m