評価:★★★ 3.0点
大島監督の作風が、垣間見えるので+☆一つ。
ゲイ=衆道の雰囲気がよく出ていると思ったので、+☆一つ。
坂本龍一の音楽が、この映画をよく象徴していると、思ったので+☆一つ。
スミマセン・・・・・・ツッコミです。
この物語は、新撰組の内部で美少年を巡って、隊が浮き足立つ様子を描いています。基本的には、男性同性愛の世界を描写していますが、これは実際に肉体関係が有る無しを越えた広がりを想定しています。
例えば、沖田荘司が劇中で言う「土方さんと近藤さんはどうなんですか?二人の間には誰も入れないな・・・」というセリフに表された、人間関係の愛憎に含まれる、執着やアンビバレントな有り様を表現しようとしたと、思われます。
これは大島監督が従来から追い求めてきた、テーマでもあります。
しかし、残念ながら充分に表現出来ていないように、個人的には思いました。
前提条件として申し上げますが、この映画の松田龍平に「戦場のメリークリスマス」のデヴィッド・ボウイほどの怪しい魅力をかんじませんでしたし、感じていれば確実に評価はもう一つは上がったと思います。
それを差し引いたとしても、この映画には混乱があって、それが何度見ても解消できなかったのです。
まずは、役者陣の演技の距離感とでも言うべきものが、統一されていないと思いました。
たとえば、松田龍平と沖田荘司役の武田真治の棒読みに近いせりふ回しと、自然な発声のセリフとが、バラバラに統一感なく続くので見ていて困りました。
棒読みのセリフに合わせて鑑賞すれば、より舞台的=リアリティよりもドラマが強調され、自然なセリフに合わせれば、ドラマに潜むニュアンスが強調されるでしょう。
いずれにしても統一されていなければ、観賞する上での立ち位置がぶれてしまい、上手く読み取れないと思うのです。
さらに、職業的役者と、映画監督(ビートタケシ・催洋一)、お笑い芸人など、多種多様な人たちが出演し、更に複雑になまります。
特に監督経験者は、自分なりの演出プランを無意識のうち表現しているように、感じられ、ますます錯綜は深まります・・・・・
いずれにせよ、見る方は無意識のうちにその混乱を感じて、劇に入り込めないのではないでしょうか・・・
大島監督は、過去の作品でも同様に素人を使って映画を作っています。
しかし、これほど混乱はありませんでした。結局、この映画では大島監督の演出力が落ちていると考えざるを得ません。
これが最後の作品となった事を考えれば、何がしかの衰えが在ったのでしょう。
そう感じられた以上「マックスモンアムール」や「戦場のメリークリスマス」を愛する私としては、この作品の評価を高くするわけにいきません。
それは、大島監督と、その過去の作品に敬意を表すればこそです。
そして同時に、 この映画の中でもゾクッとするようなシーンが、そこここに表現されていて・・・もし、 映画監督として万全のコンディションで、この映画のテーマが表現されたとしたら・・・ その作品を夢想し、陶然としてしまうのです。
監督がお亡くなりになったことが、本当に残念です・・・
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