評価:★★★ 3.0点
三船敏郎、勝新太郎、石原裕次郎、浅丘るり子、萬屋錦之助、1970年のトップスターが集まったこの映画、見る前からワクワクします。
で、実際見てみると期待感の割にはウ〜ンという出来栄えで・・・・・・
個人的にこの「なんでこうなっちゃった映画?」は大好物なので、たっぷり突っ込ませていただきます。
監督、脚本、カメラとも当時の日本映画たたき上げの名職人です。
脚本や絵作りに何の破綻もありません。
監督の演出も実直で、的確な作品構想の下まとまっている一作だとおもうのです。
つまり、映画技術的には俳優の演技も含めてゼンゼン問題ナイッスヨ〜です。
しかし面白くない「なんでこうなっちゃった」です。
ハリウッド映画なんかでもそうですが、映画技術としては何も問題がないのになんかな〜?というとき、だいたい問題はプロデューサーの求めている要求に無理が有ることが多いような気がします。
これだけお金かけたんだから、これだけもうけてよねって言うヤツですね。
つまり、この映画は儲けたかったんだろうと思います。
プロデューサーの三船敏郎の名誉のために言いますが、ここで言う儲けるとは、ヒットさせて日本映画界を盛り上げるという意味です。
その目的を皆が共有したからこそ、これだけのスターと日本映画界の名人級スタッフが終結したのです。
TVに押されて映画が斜陽になったこの時期に、TVでは不可能な豪華で派手な、そして楽しい娯楽作を作ろうという意識が、この作品の隅々から感じられます。
それは、芸術作品を撮ろうと言うよりは、かつての映画がそうだったように娯楽の王道としての「映画」の復活を目指した、壮大な目標設定だったでしょう。
オープニングのテーマ曲から西部劇調ですし、映画のヒット要素「スター」も5人揃えて、アクションシーンも無用の殴り合いまで入れてサービスしてくれています。
まさに「痛快娯楽大作」という言葉を体現した作品にしたかったのでしょう。
そして同時にそれは、かつての日本映画界黄金期の映画作品が、観客に提供した喜びに通じるものです。
しかし、その設定目標を高く掲げすぎたが故に、あれもこれもとサービスをしすぎて収まりが付かなくなったように感じます。
そういう意味では、脚本がど〜なの?という意見は当然あろうかと思いますが、スターを見に来る観客の絶対数を考えた時、それぞれのスターのファンを満足させうる見せ場を盛り込んだ脚本を、失敗とも言い難いと思うのです。
本当なら三船敏郎の正義と勝新太郎の悪の対決というのが、一番盛り上がるとは思いますが三船に負ける勝新太郎というのが許されたかどうか・・・・・・・・
勝新太郎の凄み、浅丘るり子の仇っぽい風情、裕次郎のイナセな雰囲気、やはりそれぞれのオーラの強さは素晴らしい物があります。
そして何よりも、三船の本当の武士かと思うほどの腰のすわりと、重厚さと軽妙さの演じわけなど、こんなに演技の幅を持った人だったんだと驚くだろうと思います。
何にもましてラストの殺陣のすごさ、一瞬の内に7人を切り伏せます。
しかし、そんな凄いラストでありながら、なぜか寂寥感が漂います・・・・・
結局、日本映画界の内部でもこの映画のように、一致団結して盛り上げようという意思はあっても、スターシステムや映画界全体の旧弊な構造が、個人の努力を邪魔してしまったと言えるのではないでしょうか。
この映画の「ミフネ」に、そんな日本映画・構造改革の失敗の、痛ましい犠牲者を見るのです。
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