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評価:★★★ 3.0点
正直、現代は夢のような恋愛を描くには困難な時代だと、言えるのではないでしょうか。
そんな中で敢えて、古典的なジュリエットを持ってきたトコロに、作り手の心意気を感じ否が応でも期待は高まります。
物語は、アメリカの結婚適齢期の女性が、彼氏とイタリア旅行に旅立つところから始まります。
彼氏はイタリアレストランの準備と、イタリア料理の勉強のため、彼女そっちのけでレシピ研究に熱中しています。
主人公の女の子は前から興味のあった、ヴェローナの町にある「ロミオとジュリエット」の舞台を訪ねます。
そこには、世界中からジュリエットに向けた恋の相談の手紙が集まってきており、地元の有志がその回答を返信しています。
そんな恋愛相談の回答者たちと仲良くなった主人公は、英語スタッフとして手助けをすることになります。
そんなおり、主人公は50年前のイギリス女性の恋愛相談を見つけます。
そこには駆け落ちまで決意したイタリア男性がいたのに、約束の場所にいかずに後悔している事、会って謝罪したいが会わないほうがいいようにも思え、どうしたらいいか悩んでいるという内容が書かれていました。
その相談に対し、主人公は会うべきだとの返信をします。
その手紙を見て、今は老婦人となった相談者が、孫と一緒にかつての恋人を探すためにイタリアにやってきます。
その老婦人の恋の行方と、主人公の女性の恋の行方は?
なんてストーリーです。
老婦人の恋は、なかなかドラマチックで「運命の恋」として描かれるに相応しい題材でしょう。
主人公とその恋愛相手の若いカップルも、キレイでフレッシュでいい感じです。
イタリアの美しい風景と、ジュリエット、そして二つの恋を並べて描くなど、サービスもたっぷりです。
そしてもちろん、観客の期待を裏切らない決着は、恋愛ドラマ好きの若い女性だったらキット楽しめる一本だろうと思います。
と書いてきて、個人的におしいな〜というイチャモンを言います。
再び言いますが題名からも明らかなように、古典的なメロドラマを現代にどう表現するかが、この映画の見せ所でしょう。
最近の「恋愛劇」は、夢も希望も、ミもフタも、無いものが多くて・・・・・
実際現実の恋愛で失望した恋人たちを、再び奮い立たせるような「恋」は、なかなかハードルが高いのも事実で・・・運命を前面に出しすぎれば、せいぜい夢見るローティーン程度の観客にしか届かないでしょうし、リアルな恋愛模様を描けば、離婚や、失恋の痛みを描かざるを得ないでしょう。
恋愛映画が今まで描いてきた「運命の恋」とは、つまるところ「いつか王子様が私を迎えにきてくれる」という、女性たちの理想であり夢だったでしょう。
つまりは、かつての自らの運命を人任せに決められてしまった、弱い女性たちの切実な願いであり祈りではないでしょうか?
ままならない人生に起き得る「奇跡」こそ、「恋」であり、それゆえ「恋愛」は運命足りえたのです。
この映画では、その古典的恋を「老婦人の恋」で描きます。
反面、現代の先進国の女性たちは(日本はまだまだのようにも思いますが)すでに自らの人生を選べるだけの力を持っていますので、こんな不確実な運命を待つという「いにしえの恋」に構っているヒマはありません。
下手をすれば、男なんてブッチギッてでも自分の人生を生きるというのが、現代女性というものでしょう。
現代における「恋愛」とは、冷徹な計算に基づく「現実問題」だということを、何度か恋を重ねれば、否が応でも理解せざるを得ないでしょう。
結局は「恋愛」に「夢や理想」を求める必然が弱ければ、「恋愛ドラマ」は劇としての「力」が弱くなるのも、必然です。
しかし、そんな現実を生きていながら、なお夢のような恋を求めてしまうのはなぜでしょう?
もしかすると、この「理想の恋愛」「ロマンス」こそ、過去の恋愛映画が営々と築き上げてきた「夢」だとしたら、映画界の自業自得だといえるかもしれません。
つまり「美しい愛」の物語を映画が表現し、それを見た男女が自由恋愛に走り、今やハイティーンですら恋の実態の「ミモフタも無さ」を知ってしまうと言う構図です。
いずれにしても、過去の映画の作り上げた「恋の輝き」は、今や一種ファンタジーのような、もっと悪く言えば「恋のゴースト」とすら呼ぶべき「幻影」だと、ミンナ知ってはいるけど・・・・・でも夢を見ずにはいられないというところでしょうか・・・・・・
そんな恋愛の亡霊を求めるのが、主人公の女性の役だと言えるでしょう。
それゆえ、この映画の「古い恋」の輝かしさに比べ、主人公の「現代の恋」がオマケの様な扱いなのも、そんな事情を反映しているのだと思うのです。
ま〜そんなわけで、「恋愛映画」として評価すれば、恋愛劇の矛盾を内包した「ゴースト」が出没する分、低くせざるを得ませんでした。
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