原題 48 Hrs. 製作国 アメリカ 製作年 1982年 上映時間114分 監督 ウォルター・ヒル 脚色 脚本 ロジャー・スポティスウッド 、ウォルター・ヒル、ラリー・グロス、スティーヴン・E・デ・スーザ |
評価:★★★★ 4.0点
監督ウォルター・ヒルが得意とする夜の街のロケーションにシビレます。
こういう、見ていて爽快なB級アクションを描いたらこの人は、決して期待を裏切りません。

<目次> |

映画『48時間』あらすじ |
常習犯罪者のアルバート・ギャンズ(ジェームズ・レマー)は、刑務所に服役し屋外作業中、仲間のビリーベア(ソニー・ランダム)の助けを得て脱獄に成功した。
看守を射殺すると、2人は車で逃亡した。
サンフランシスコ市警の刑事ジャック・ケイツ(ニック・ノルティ)はホテルで事件が発生したと聞き、ホテルの現場に向かった。
だが、そこには先に来た2人の刑事がおり、ジャックにロビーの見張りを命じ、刑事二人は盗難カード使用容疑犯の部屋に向かった。
しかし突然銃声が響く。
部屋にいたのはガンツ達で、容赦なく銃弾を浴びせ、逃走を図る。
ジャックは犯人を追ったが、ギャンズは女性を人質に取り、ジャックの銃を奪うと、刑事2人を射殺し姿を消した。
銃を奪われ、同僚を殺された屈辱を晴らそうと、ジャックはガンツの調査を開始する。
すると、ガンツの犯罪者仲間のレジー・ハモンド(エディ・マーフィ)という男が、刑務所にいると知る。
レジーはもうすぐ保釈になるため、最初は協力を拒むが、ギャンズが脱獄したと知ると突然協力的になり、ジャックは書類を偽造し刑務所から48時間レジーを借り受けた。
レジーの情報で、ジャックはギャンズの仲間のルーサー(デヴィッド・パトリック・ケリー)を訪ね捕えたが、ルーサーは何も話さなかった。
ジャックはルーサーを拳銃不法所持で逮捕した。
ジャックは恋人エレイン(アネット・オトゥール)と約束していたが、会えないと電話をすると、彼女は怒り電話を切った。
ジャック達はビリーがかつてバーテンダーとして働いていたバーを訪れた。
レジーは自分に尋問させてくれと言って、ジャックから警察手帳を借り足を踏み入れるとると、白人ばかりのバーで黒人のレジーは反感を持った眼に囲まれる。
レジーはバーテンダーにビリーの居場所を問い質すが、バーテンダーが口を開かなかったため、ボトルを投げ店の備品を壊しだした。たまらずバーテンダーは、ビリーに、中華街に住む女がいると教えた。
部屋には女2人がいて、警戒し銃を向けたが、ジャックが警官だと知ると、ビリーとはとっくに別れていて、何も知らないと答えた。
苛立つジャックは、ギャンズとレジーの関係を問い詰めた。言葉を左右するレジーに、ついにジャックは殴りかかった。すると、レジーは華麗なボクシングテクニックを見せ、ジャックを翻弄したが、最後はパワーに押され互角の戦いとなった。
2人が殴り合いを続けていると、警官に見つかり逮捕されそうになり、ジャックは仕方なく警察手帳を見せた。
なおも追及するジャックに、レジーはしぶしぶ仲間と一緒に地下カジノを襲い、盗難届の出ない50万ドルを手に入れたと明かした。
そして、金を自分の車に隠したものの、ギャンズが裏切り刑務所で服役する事になったと語った。レジーは、ギャンズは脱獄した以上、その車に金を回収に行くはずだと語り、ジャックとレジーは金を隠した車を見張ることにした。
すると、その駐車場に現れたのはルーサーだった。
ジャック達が尾行すると、ルーサーは金の入ったバックを持って地下鉄に向かい、ギャンズと合流した。ギャンズはルーサーの彼女を人質にして連れており、ルーサーは命令に逆らえなかった。
ジャックがギャンズを逮捕しようとする前に、警備員がギャンズの銃に気づいた、するとギャンズの相棒ビリーが発砲し、ギャンズ達は逃げてしまう。
一方のレジーは金を追うと言い残し、ルーサーの後を追い姿を消した。
ジャックは署に戻ってレジーの電話を待つ間、彼女のイレインから電話があり、再び彼女を怒らせた。
その間に、レジーから電話があったことを教えられ、ジャックは急いでレジーに電話を掛けた。
するとレジーは金を追って、ルーサーの居るホテルの前のバーにいて、ジャックを待っていると伝えた。
レジーはギャンズ逮捕に協力するため、ルーサーから金を奪うチャンスがあったのにそうしなかった。
ジャックはレジーに感謝すると、レジーはバーでキャンディという女性を誘惑したが、ホテル代が無いと打ち明け、彼に無心した。
レジーが正にホテルに入ろうとしたとき、ルーサーが外に出たため追跡に移らざるをえなくなった。
ルーサーは来たバスに乗り込んだが、運転手はビリーでギャンズがルーサーの恋人ロザリーに銃を向けていた。
金を渡したルーサーだったが、ギャンズに射殺された。
ジャック達は車でバスを追うが、銃撃されショーウインドーに突っ込み、バスを見失ってしまう。
警察署に戻ると、ジャックは署長に激しく叱責され、それを見かねたレジーが言い過ぎだと署長に文句を言った。
レジーを刑務所に戻すため、2人は出かけたが、最後に一杯やろうとバーに入った。
そこで、バスが中華街に乗り捨てられていたと連絡が入った−

映画『48時間』予告 |
映画『48時間』出演者 |
ジャック・ケイツ(ニック・ノルティ)/レジー・ハモンド(エディ・マーフィ)/エレイン(アネット・オトゥール)/アルバート・ギャンズ(ジェームズ・レマー)/ルーサー(デヴィッド・パトリック・ケリー)/ヘイデン(フランク・マクレー)/ビリー・ベア(ソニー・ランダム)/ベン・キーホー(ブライオン・ジェームズ)

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映画『48時間』感想 |
また、エディ・マーフィのキャラクターが際立ち、見ていて単純に楽しめる娯楽作品の秀作です。

エディ・マーフィーはサタデーナイトライブで人気となり、映画界に進出し『大逆転』や『ビバリーヒルズコップ』と、そのキャラクターを活かし、スマッシュ・ヒットを飛ばし、ハリウッド映画界を代表する俳優の一人になりました。
ニック・ノルティも無骨な白人刑事を演じて、良い味を出しています。
そんな二人が、最初は反発しながらも、少しづつ互いの個性を尊重し、最後はお互いの力を合わせて、1+1を3にも4にもする「相棒物語バディストーリー」の秀作だと感じます。
この二人には、法の番人と犯罪者、黒人と白人、ナンパと硬派など、数々の相容れない対立があるにも関わらず、それを乗り越え友情を築く姿に感動を覚えます。
さらにこの作品には、アメリカ社会の現実を反映し、人種間の対立も含んだ物語だと思いました。
そんなストリーでありながらも、黒人も白人もどちらが見ても楽しめるメジャーハリウッド作品になっているのがミソで、黒人代表のエディ・マーフィーが鮮やかな印象で映画の美味しいところを持っていきます。
この作品で彼の役どころは、刑務所に入っている受刑者で、白人刑事(ニック・ノルティ)の捜査に強制的に協力させられます。
ここも黒人社会からすると、白人の警官=黒人の敵に協力なんてトンデモないところですが、受刑者じゃ協力させられるのもしょうがないと見えるでしょう。
また黒人側から見ると、エディ・マフィー演じるキャラクターがノロマな白人を手玉に取るようで、痛快に感じるのではないかと思います。
エディ・マフィーはアルマーニのスーツを着て、ポルシェに乗って、ホントにオシャレでスマートに見えます。
さらに口八丁・手八丁と来ては、ニック・ノルティーも力ずくで腕力に訴えるしかないのですが、そのケンカですら華麗なボクシング・テクニックで翻弄します。
映画館で歓声を上げる黒人たちの声が聞こえるようです。
つまりエディ・マーフィーはメジャー作品で初めて、白人より優位に立った黒人スターとして、成立したキャラクターではないかと思ったりします・・・・・・
白人側にしても、途中イライラする所もあるでしょうが、オセロのように黒と白が入れ替わりながら、ちゃんと双方に見せ場があります。
最終的には男気と正義を元にした決着がつき、紆余曲折があってもお互いを認め合うというバディ・ストーリーとしての王道にのっとり、最後は双方にとって満足できる爽快な一本です。
聞くところによると、アメリカの人種間の軋轢と言うのはまだまだ根深い物があり、黒人居住区と白人居住区が分かれていたり、見る映画、聴く音楽がぜんぜん違うと聞きます・・・・・
そんなアメリカ社会の人種間の格差による歪みは、2019年に警官の黒人死亡事故を発端とした、黒人の人権を守る世界的な運動「ブラックライブズマター」のように、定期的に噴出してしまいます。
そんな、そんなアメリカ社会の対立構造を踏まえつつこの映画を見ると、この二人の友情と言うのが本当に尊いものに思えたりします・・・・・

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映画『48時間』解説ハリウッド映画の中の黒人問題 |
なぜなら、世界を相手に、万人が喜ぶコンテンツを制作し販売するという、ハリウッド黄金期のビジネスモデルからすれば、政治的な主張や、マイノリティーの権利の主張を語るのは得策ではありませんでした。
そんなシリアスなテーマを描くより、誰もが喜ぶ「自由と平等」、そして、それにもとづく「楽天的成功=ハッピーエンド」を発信することで、世界の映画工場としての地位を確立したのです。
そんなハリウッドの姿勢を明文化したともいえるのが、アメリカ映画界の倫理規定『ヘイズ・コード』です。
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そのルールには暴力や性的な表現の規制のみならず、政治的な主張も制限されていたのです。
そんなハリウッド映画界に変化が現れたと思わせるのが、1948年の映画『紳士協定』であり、そこではユダヤ人差別の問題が正面から語られていました。
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それは、一説によれば、第二次世界大戦前ナチスドイツに遠慮して、ヒットラーとファシズムを非難する声をあげれず、結果的にユダヤ人大虐殺を生じさせたのではないかという、ハリウッド映画界の反省があったとも言います。
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当時のハリウッド・メジャーの映画産業とは、ユダヤ人が生み育て支配していた業種だったにもかかわらず、ナチスに宥和的だったために同胞の死を呼んでしまったのだという自己批判が、映画『新誌協定』には込められていると思います。
そんな人種問題をテーマとした映画の登場から、黒人の人権を語る映画の登場はさらに時代を下った、1962年の『アラバマ物語』まで待たねばなりません。
アメリカ映画:1962年 映画『アラバマ物語』 黒人差別問題を取り上げた問題作! グレゴリー・ペックのアカデミー男優賞受賞作 |
そのころには、映画界ではヘイズコードの規制も弱くなり、同時にアメリカ社会では人種差別に反対する公民権運動が高まりを見せていました。
そして、黒人俳優として初めてアカデミー賞を獲得した、シドニー・ポワチエの登場により、その黒人差別問題をさらに正面から見据えた『招かれざる客』が発表されます。
アメリカ映画:1967年 映画『招かれざる客』 公民権運動が最盛期に取られた「反人種差別運動映画」 キャサリンヘップバーンのオスカー受賞作 |
それは、ハリウッドメジャースタジオが60年代の「公民権運動」の高まりに対して示した良心だったと思います。
しかし、それでも、その作品はあくまで「白人側=マジョリティー(多数派)側」から描いた作品であり、真に「黒人側=マイノリティー(少数派)側」からの声が、メジャーコンテンツとして流通したとは言えないものです。
1960年代以降、公民権運動が一定の成果を収め世間が落ち着きを取り戻すと、人権問題はむしろ潜在化していく中で、映画における「黒人(マイノリティー)」の扱いは、黒人側から言わせると「白人に都合の良い黒人像」だと非難されます。
事実1970年代には、黒人の俳優と黒人のスタッフによる映画製作も成されており、その「ブラック・プロティション(黒人キワモノ)映画」と呼ばれるジャンルは、黒人達が悪役白人キャラクターと対決し勝利を収めるという、黒人観客のための映画も作られていたのですが、それは僅かの例外を除いて黒人コミュニティーから出ることはありませんでした。
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しかし、黒人の俳優や歌手など、ショービジネスの世界で真にメジャーな存在として認知されるためには、白人社会で認められなければならず、アメリカのショービジネスで活躍する黒人俳優やエンターティナーにとっては非常に厳しい状況にあったのです。
たとえば、黒人俳優のパイオニア、シドニー・ポワチエも黒人社会からは白人だと言われ、キング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソンですら白人に魂を売ったと非難されたといいます。
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メジャーなショービジネスは白人が支配している以上、白人の意向に適った存在でなければ起用されません。
この映画『48時間』のエディー・マーフィーにしても、さらに例を挙げれば『天使にラブソングを』のウーピー・ゴールドバーグにしても、ハリウッド・メジャー作品に出演する黒人俳優達は、難しい対応を求められるでしょう。
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よしんばそれでメジャーな存在になったとしても、黒人社会の誹謗中傷に耐えねばならない、悲しい現実が待ち受けるのです・・・・・
その不条理は間違いなく、アメリカ社会の根深い人種間格差によって生み出されたものだったはずです。
実を言えば、そんな人種差別的状況に、現実的な方法で風穴を開けようとした俳優こそ、この映画のエディー・マーフィーだと思っています。
彼は、順調にハリウッド映画界でヒットを飛ばすと、ハリウッド・メジャー作品でありながらほぼ黒人キャストの映画、まるで黒人向けブラックムービー『星の王子ニューヨークに行く』を撮り、黒人主体の映画であっても世界的ヒットを生めるのだと証明したのです。
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これは、ハリウッド映画界にあって、黒人が主体となった作品作りを可能にしたという点で、真に歴史的な功績だというべきでしょう。
個人的にエディー・マーフィーは、シドニー・ポワチエと同様、白人社会の壁を突破した俳優として歴史に名を残すべきだと思います。
更に言えば、公民権運動で人種差別の撤廃を「非暴力」で訴えたキング牧師のように、白人社会に対する地歩を静かに実力で獲得した事実は、黒人社会にとっても重要な意味を持つのではないでしょうか・・・・

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以下の文章には 映画『48時間』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)中華街と聞き、前にも訪ねたビリーの彼女の家に居ると確信し、その部屋へ向かう。
ジャックは恋人に銃を突きつけ、ビリー達が中にいると白状させた。中に踏み込むとビリーがナイフで襲いかかり、レジーは発砲し射殺した。その音に、ギャンズが部屋を飛び出したのを、ジャックとレジーは追跡する。
しかしギャンズが逆襲し、レジーを人質に取ると銃をレジーの頭に向け、ジャックに銃を捨てろと言った。レジーは俺に構わず撃てとジャックに言うと、本当にジャックは発砲しギャンズを撃ち倒した。
レジーが本当に撃つ奴があるかと文句をいうのを尻目に、ジャックはギャンズにトドメを刺した。ギャンズを倒し刑務所に戻る期限の僅かの時間で、レジーはバーで仲良くなったキャンディとベッドを共にし、キャンディに出所する半年後に会おうと別れた。

映画『48時間』結末 |
刑事ジャックは金をレジーのポルシェに入れて、俺の分け前は要らないが車を買うから2000ドル貸せと言った。
ジャックがタバコを咥えるとレジーはジャックのライターで、タバコに火をつけた。
【意訳】ジャック:もし、車の金を出すとしても、お前が一線を越えたと聞いたら、その尻をふっとばすからな。/レジー:なあジャック、今や俺達お互い、俺がまっとうな人間になるって分かってるだろ。/ジャック:いいね。/レジー:でも、仮におれが泥棒をすると決心したとして、俺を捕まえられると思うか?/ジャック:俺のライターを返せ。(レジー笑って返す)
2人が乗った車が、夜の町に走り出した。
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