原題 Todo sobre mi madre 英題 All About My Mother 製作国 スペイン 製作年 1999年 上映時間101分 監督ペドロ・アルモドバル 脚本 ペドロ・アルモドバル |
評価:★★★★ 4.0点
このスペイン映画は、派手さは無いけれども実直な、作家の良心が伝わる作品だと感じた。
ただ真正面に映画のテーマに向き合い、真実を求め、客観的に、記録しようとすればこの映像表現になるのだと思う。
映画『オール・アバウト・マイ・マザー』簡単なあらすじ |
移植コーディネーターのマヌエラ(セシリア・ロス)は、マドリードで女手ひとつで作家志望の息子・エステバン(エロイ・アソリン)を育てた。その息子の誕生日に、大女優ウマ・ロッホ(マリサ・パレデス)の「欲望という名の電車」の舞台を観に行く。終演後ウマ・ロッホにサインをもらおうと道路に飛び出した息子は自動車事故で死ぬ。マヌエラは息子の死を告げるため、息子を身ごもった時に別れた夫をバルセロナへ探しに来る。そこで、マヌエラは、性転換した明るいゲイの娼婦・アグラード(アントニア・サン・フアン)、エイズの相手と恋に落ちエイズに罹患し妊娠した純朴なシスター・ロサ(ペネロペ・クルス)、そして女優ウマと出会い息子の話をすると、ウマに付き人になって欲しいと頼まれる。ウマの側にはウマのレズビアンの恋人で麻薬中毒の若手女優・ニナ(カンデラ・ペニャ)もいた。シスター・ロサ(ペネロペ・クルス)は、母(ロサ・マリア・サルダ)と折り合いが悪く病状も悪化したためマヌエラが同居し面倒を見る。ロサの元恋人とは実はマヌエラの元夫だったのだ。まもなく赤ん坊が生まれ、そしてそれぞれの人生が変転を迎える・・・・・・
映画『オール・アバウト・マイ・マザー』予告 |
映画『オール・アバウト・マイ・マザー』出演者 |
マヌエラ(セシリア・ロス)/ウマ・ロッホ(マリサ・パレデス)/シスター・ロサ(ペネロペ・クルス)/アグラード(アントニア・サン・フアン)/ニナ(カンデラ・ペニャ)/ロサの母(ロサ・マリア・サルダ)/ロサの父(フェルナンド・フェルナン・ゴメス)/エステバン( エロイ・アソリン)/ロラ(トニ・カント)
映画『オール・アバウト・マイ・マザー』受賞歴 |
アカデミー外国語映画賞/カンヌ国際映画祭 監督賞/ールデングローブ賞 外国語映画賞/英国アカデミー賞 監督賞、外国語映画賞/セザール賞 外国映画賞
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映画『オール・アバウト・マイ・マザー』感想 |
この映画は喪失の痛みに満ちている。
主人公は息子を喪った母親だ。
主人公は息子の死を告げるため、息子の父親を探す。
その父親はオカマながら、見境なく欲望を撒き散らすロクデナシだ。
その主人公と旧知の友が、男根と女性の体を持つドラッグクィーン。
主人公の息子が愛した女優は、レズビアンで交際相手と不安定な日々を過ごす。
そして主人公が助ける、修道女もまた喪失に向かう。
実はこの映画の登場人物は「女性」か「女性になりたい男=ドラッグクィーン」だ。
唯一の男である息子は、登場そうそう死んでしまう。
小説家志望の彼が「我が母の全て」という文章を書き終えずに。
なぜなら、この青年には理解できないのだ。
母親の全てを告げられていないのだから。
父親が誰で今どうしているのか
知らないのだから。
母親がかつて何を愛し、何に傷ついたか。
何を求め、何を犠牲にしたか。
多かれ少なかれ、そんな不可知の関係が、全ての母と子の間に闇としてあるだろう。
さらに根源的なことを言えば・・・・・
母と子は、本来完璧に一つの命だった。
一つの命だったという事実は、あらかじめ別離が約束されていることを意味する。
母と子は一心同体の蜜月から、永遠の別れを経験するのだ。
一つの命を裂くときに、流れた血の量だけ、人は人を愛するだろう。
この映画を見るとき、愛を求めるという希求が「欲望という名の電車」で語られるように、かつて住まいした楽園を追放された者たちの、狂おしい衝動であることがわかる。
人が生まれる時に必然として課せられた
「楽園からの追放」が、全ての人に愛を生む。
そう思えば、全ての愛は母の喪失より生じるであろう。
かくのごとくに「我が母に関する全て」を決して二度と、回復しえない運命であるがゆえに、「私の母に関する全て」を求めて全ての生命は彷徨せざるを得ない。
決して見つからない、母との完全な統合という「楽園の道」を探して。
彷徨し愛を求め、ついに人は気づくのだ、命を宿すことこそが「喪われた楽園」と近似であることを。
それゆえ女たちは「母」となる。
男たちの中でも繊細な、幼子のような感受性を持ってしまった者は、楽園の喪失に耐えられなくなって、どうしようもなく女を演じる。
そして「母」になることを楽園の代償とすることを潔しとしない女たちは、永遠の喪失の鏡像(女性の恋人)を見て、自らを愛するだろう。
全ての命が捜し求める「私の母に関する全て」は、永遠に不可知であるがゆえに新しい「命」を紡ぐのだ。
その新しい命が、新しい可能性が、いつか完璧な楽園を創生する日を信じて。
そんな命の「理」を、誠実に描いた作品だと思う。
『オール・アバウト・マイ・マザー』テーマ曲
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お褒め頂き恐縮ですm(__)m
時々、こういう何がなんだか分からないような映画を、どっぷり見たくなることがありまして・・・・・面白い内容になっているかどうか・・・・アクセスには結びつかないだろうなぁ・・・・(^^;
ありがとうございます(^^)良いお母様ですね〜素晴らしい・・・・尊敬しますm(__)mこの映画は実は母の物語です。母として、子を喪うこと、母になれないもの、母になるのに死んでしまうもの・・・・そういう意味では「彼女を見れば分かること」に近い映画とも思います・・・・お母様と末永くお幸せにm(__)m