2018年10月24日

映画『ブーリン家の姉妹』イギリス王朝の女達/あらすじ・感想・解説・ネタバレ・ラスト・タイトル意味

ブーリン家の別の少女

原題 THE OTHER BOLEYN GIRL
製作国 イギリス・アメリカ
製作年 2008
上映時間 115分
監督 ジャスティン・チャドウィック
脚本 ピーター・モーガン
原作 フィリッパ・グレゴリー(「ブーリン家の姉妹」集英社文庫)


評価:★★★☆ 3.5点




家族の確執と執着。
血族というものが、宿命的に、否応なく、不可避の形で持たざるを得ない、強い「関係」が作り出す、個人の愛憎と欲望によって、世界や歴史が動かされて来たのだというメッセージが、説得力を持って伝わってきます。
そしてまた、過去の歴史の中で「女性ジェンダー」が、どれほど傷付けられてきたかという実例のようにも感じました。

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<目次>
映画『ブーリン家の姉妹』ストーリー
映画『ブーリン家の姉妹』感想
映画『ブーリン家の姉妹』解説
映画『ブーリン家の姉妹』ネタバレ・結末

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映画『ブーリン家の姉妹』ストーリー

16世紀、テューダー朝のイングランド。権勢をふるう王ヘンリー8世(エリック・バナ)にも、王妃キャサリン(アナ・トレント)に世継ぎが生まれないという悩みがあった。そこでヘンリーは妾を置くこととした。そこに眼を付けた、新興貴族のトーマス・ブーリン卿(マーク・ライアンス)は、アン(ナタリー・ポートマン)とメアリー(スカーレット・ヨハンソン)という二人の年頃の姉妹を持っていたため、アンをヘンリーに選ばせようとノフォーク公(デヴィッド・モリッシー)とも謀り画策した。首尾よく王を狩に連れ出しアンに引き合わせた。しかし王が落馬し看病に努めた妹メアリーの方に興味を持った。メアリーは既に結婚していたが、父や一族の栄達のため王の妾となり、元の夫ウィリアム(エディ・レッドメイン)も宮廷に仕えた。一方のアンは、メアリーに負けた事に傷つき勝手に貴族と結婚してしまう。しかし当時の法律では王の許可なく貴族の結婚は許されていなかった。父と叔父のノフォーク公は、王の眼を恐れアンをフランスへと追いやった。
ブーリン一族は、メアリーが王の子供を懐妊したことで、出世し宮廷で重きを成してゆく。しかし、メアリーが体調を崩し、静養が必要となると、王はメアリーに興味を失ってゆき、ブーリン一族の立場も軟くなる。危機感を抱いたブーリン卿とノフォーク公は、王の寵愛を得るためにアンをフランスから呼び戻した。宮廷に出入りするようになったアンは、フランス仕込みの洗練された振る舞いで王を夢中にされる。王に迫られたアンは焦らしながら、ついにその野心を告げた。男子ヘンリー・キャリーを出産したメアリーを宮廷から追い出し、王妃キャサリンと離婚すること。そして自分をイングランド王妃にすること。それはメアリーに対するアンの復讐でもあった。離婚を認めないカトリック教会を前にヘンリー王は逡巡する。しかし、アンの求めに応じて自らをイングランド国教会の長とするとともに、カトリック教会から離脱した。だが、それは英国全土を揺るがす大きなスキャンダルとなり、ブーリン家の姉妹を巻き込んで行く・・・・・・・
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映画『ブーリン家の姉妹』予告

映画『ブーリン家の姉妹』出演者

アン・ブーリン(ナタリー・ポートマン)/メアリー・ブーリン(スカーレット・ヨハンソン)/ヘンリー8世(エリック・バナ)/ジョージ・ブーリン(ジム・スタージェス)/トーマス・ブーリン(マーク・ライランス)/エリザベス・ブーリン(クリスティン・スコット・トーマス)/ノーフォーク公(デヴィッド・モリッシー)/ウィリアム・ケリー(ベネディクト・カンバーバッチ)/ヘンリー・パーシー(オリヴァー・コールマン)/キャサリン・オブ・アラゴン(アナ・トレント)/ウィリアム・スタッフォード(エディ・レッドメイン)/乗り手(トム・コックス)/医者(マイケル・スマイリー)/侍女(モントセラト・ロイグ・ド・ピュイグ)/ジェーン・パーカー(ジュノー・テンプル)/トマス・クロムウェル(イアイン・ミッチェル)/フランシス・ウェストン(アンドリュー・ガーフィールド)/ブランドン(マーク・ルイス・ジョーン)/ジェーン・シーモア(コリーヌ・ギャロウェイ)/王の使者(アルフィー・アレン)/若いヘンリー(ジョゼフ・ムーア)/メアリー・タルボット(ティファニー・フレイスバーグ)/クランマー大司教(ビル・ウィィス)
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映画『ブーリン家の姉妹』感想


出演は姉アン役にナタリー・ポートマン、妹メアリー役にスカーレット・ヨハンソン、ヘンリー8世役にエリック・バナという豪華なもの。
脇を固める役者たちも重厚感があって、作品に説得力を与えています。
特に、今やイギリスを代表する男優に育った、ベネディクト・カンバーバッチと、エディ・レッドメインの2人も出ています。
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左から:エディ・レッドメイン、ナタリー・ポートマン、ジム・スチュワート、スカーレット・ヨハンソン、ベネディクト・カンバーバッチ

boling-ana.jpg個人的にはブーリン家の姉妹によって追い落とされる、元王妃キャサリン・オブ・アラゴン役のアナ・トレントも懐かしい。
かの名作『ミツバチのささやき』『カラスの飼育』の子役が、こんなに立派になって・・・・・

また、『ブリッジ・オブ・スパイ』でアカデミー賞助演男優賞を獲得した、マーク・ライランスも渋い演技を見せています。
関連レビュー:マーク・ライランスのオスカー受賞作
『ブリッジ・オブ・スパイ』

東西冷戦時代のスパイを描く
トム・ハンクスとスピルバーグ監督のコンビ作品

歴史の動乱に果敢に立ち向かう姉妹の運命を、ナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンの2人が演じて鮮烈な印象を生んでいます。

ただ、過去のイギリス王朝モノ歴史劇に較べると、シェークスピア俳優が演じてきた重厚さと較べ軽い味付けとなっていたため、個人的にはこの評価としました・・・・・・
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映画『ブーリン家の姉妹』解説



この物語は、イングランドの王ヘンリー8世の寵愛をうけ英国の歴史を変える事になったブーリン家の姉妹の物語です。
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ヘンリー8世(肖像)はブーリン家の長女アンが王妃の座につきたいとの望みに応えるため、現王妃キャサリンを離縁しようと画策します。

基本的に当時の結婚は神の前で交わした神聖なる契約ですから、未来永劫不変の関係です。
当時のローマ・カトリック教会は神の名において、離婚を認めませんでした。
そこでヘンリー8世は、ローマカトリックと喧嘩し破門されたため、イギリス国教会というキリスト宗派をでっち上げ離婚を成立させます。

この強引な王の施策は、国内外から非難を浴びる事になります。

しかし、この映画内では語られていませんが、実はこの時代は薔薇戦争やプロテスタントの興隆など、多事多難の時期でありそれゆえ後継者として男子が相応しいという、ヘンリー8世の強い思いがこんなスキャンダルを生み出した側面もあるようです。
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たしかに、この映画で語られるブーリン家のアン(肖像)は権力を欲しいままにして、専横を重ねるように見えます。

しかし、注意深くみればこの姉妹は、家族の繁栄の為や、ヘンリー王の色欲や政治的野心の道具として使い捨てられたりと、当時の権力構造で優位に在った男達や、その父権社会の犠牲者だったと言えないでしょうか。
この王ヘンリー8世は好色であると同時に、精力的に仕事もし、人々からカリスマ性を認められていた、言うならば英雄的男性だったのです。
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こういう人物が英雄としてもてはやされる時代に、その周囲で生きた女達は、真に幸福ではいられないように思います。(肖像はマリー)

自分の人生を自分で選べない当時の女性達の悲しみや憤りが、アンの行動を駆り立て突き動かしているように見えます。
アンのように虐げられた立場の者が権力を持っていくとき、自らを虐げた者たちに対する復讐や、自らの狂おしいばかりの欲望に、遂にはその身を破滅させるまで走リ続けるしかなくなるのでしょう。
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しかしその過剰な情念に滅ぶのが、持って生まれた生来の質というよりも、外部的な要因によってもたらされるとき、これは被害者と呼ばずに何と呼ぶべきでしょうか。


そう考えれば、多かれ少なかれ、歴史上も現在でも、女性とは社会的被害者だったに違いありません。

そんな悲劇を象徴するブーリン家・アンが残した忘れ形見が、結婚もせずに男よりも強くイングランドを世界を支配したのは歴史的必然というべきです。

この映画の原題「the other boleyn girl」=「ブーリン家の別の少女」とはこのアンの娘、バージンクィーン・エリザベス一世(肖像)を指していると思います。

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以下の文章には

映画『ブーリン家の姉妹』ネタバレ

があります。
王は英国内のカトリック教徒たちからの批判にさらされるが、アンが世継ぎを産めば丸く収まると期待していた。しかし生まれたのは女の子で、さらに次に懐妊した子を流産すると、王の気持ちはアンから離れて行った。追い詰められたアンは、何としても世継ぎを生みたいと、弟ジョージの子種を求める。しかし、それが王の知れるところとなり、2人は逮捕された。
アンは姦通罪、近親相姦罪、魔術を用いた罪で逮捕され、裁判にかけられ死刑宣告された。
それを知ったメアリーは隠棲地から宮廷に向かい、王にアンの助命を嘆願した。
しかし、それはメアリーの命の危険を伴う直訴だった。

映画『ブーリン家の姉妹』結末

結局、ヘンリー8世はメアリーは許したが、アンの死刑を執行した。

【大意】ヘンリー:メアリー、そなたは命の危険をおかして宮廷に来た。それゆえ命を助けよう。我が尊敬とそなたへの愛着ゆえに。そなたに二度はないと忠告する。そなたは再び同様の仁慈を見ることはあるまい。神の加護をそなたと、我が子に。そしてアンの魂に神の慈悲を。/アン:慈悲深きイエス様。我が魂をあなたの御手に委ねます。

メアリーはアンの一人娘を抱き王宮を後にした。

不名誉のうちに、トーマス・ブ―リン卿は2年後没し、ノフォーク公は3代に渡り処刑された。
ヘンリー王のイギリス国教会の設立は、英国を永遠に変えた。
メアリーと夫ウィリアム・スタッフォードは、残りの一生を宮廷から離れて幸福に暮らした。
ヘンリーの心配した跡継ぎは、強力な後継者を得ることになった。
それは男の子ではなく、アンの残した忘れ形見。
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その子は女王エリザベス1世となり、その45年に渡る統治によって、英国史上最も偉大な君主の1人となった。




posted by ヒラヒ・S at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | イギリス映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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