2018年01月14日

傑作映画『マカロニ』イタリア式人生讃歌/感想・あらすじ・解説・ネタバレなし

人情話の教科書。

原題 Maccheroni
製作国 イタリア
製作年 1985
上映時間 106分
監督 エットーレ・スコラ
脚本・原案 エットーレ・スコラ、ルッジェーロ・マッカリ、フリオ・スカルペッリ


評価:★★★★★  5.0点



私は、この映画を愛して止みません。
傑作です。
この映画のウェットな情感と、一種奇跡を含む物語は、イタリア映画の持つノスタルジックな味わいが心に沁みる作品です。
人生に疲れた大人が見ると、明日もまた生きてみるかと思える、応援歌のような物語です。

映画『マカロニ』ストーリー


maca-remon.jpgマクダネル・ダグラス社の副社長ロバート・トラベン(演:ジャック・レモン)が、イタリアはナポリの空港に降り立った。
アリタリア航空で、難航する交渉をまとめるために、この地に出張でやって来たのだ。
数十年前、彼は第二次世界大戦の際にイタリアに進駐し、ナポリの地で現地の娘マリアと恋に落ちていた。
maca-maruche.jpg
その娘の兄、アントニオ・ヤゼロ(演:マルチェロ・マストロヤンニ)がロバートを訪ねてホテルに来る。
ロバートは会社の出世争いで窮地にあり、イライラして旧交を温めに来たアントニオを追い返した。

しかしロバートは、戦時中のことを思い出すうちに、若き日の自分を確かめようと、アントニオの住む町を訪れる。40年ぶりに再会するマリアは孫達に囲まれて幸せそうだった。
訪ねた町の人々から思いがけずに歓迎を受け、英雄扱いされ面くらう。
それは愛を誓ったロバートに去られた妹を慰めるため、アントニオがロバートに成り代わって、架空の冒険談を手紙で送っていたためだった。
その話は町の人々も知るところとなり、町ぐるみでロバートの活躍に喝采を送るようになっていたのだ。
驚いたロバートだが、町の中で時間を過ごすうちに、いつしか自分もかつての情熱と希望の心を蘇らせる。
更にアントニオの人生を楽しむ姿に、自らの仕事漬けの人生を省みる。
maca-morte.gif
(上:人生は生きる価値のあるものだ。だから死に打ち勝つんだ。)

しかしロバートは、会社での地位が危うくなり、急遽帰国することとなった。
しかし時を同じくして、アントニオの息子ジュリオがマフィア絡みのトラブルに巻き込まれる。
ロバートはアメリカに帰り保身を図るか、ナポリに残りアントニオ親子を救出するヒーローになるか、自らの心に問いかける。
彼が選んだ人生は・・・・・・・・・・・

映画『マカロニ』予告


映画『マカロニ』出演者

ロバート・トラベン(ジャック・レモン)/アントニオ・ヤゼロ(マルチェロ・マストロヤンニ)/ローラ(ダリア・ニコロディ)/カメリーナ(イサ・ダニエリ)/ポルテーラ(マリア・ルイーザ・サンテーラ)/ヴァージニア(パトリツィア・サッキ)


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映画『マカロニ』感想



俳優はジャック・レモンマルチェロ・マストロヤンニ
往年の映画ファンなら、これだけでも見たいと思うはず。
米伊を代表する実力派スターの夢の競演です。
ジャック・レモン(Jack Lemmon, 1925年2月8日 - 2001年6月27日)は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン出身の俳優。本名はジョン・ユーラー・レモン三世(John Uhler Lemmon III)。戦後アメリカ映画界最高の喜劇俳優と言われた。Jack-Lemmon.jpg
1954年に映画デビューを果たし、まもなく1955年の『ミスタア・ロバーツ』でアカデミー助演男優賞を受賞。1959年に『お熱いのがお好き』に起用されてからは、ビリー・ワイルダー監督作品の常連となる。当初は単なるコメディアンと見られたが、1960年の『アパートの鍵貸します』のうだつのあがらないサラリーマン役や、1962年の『酒とバラの日々』でのアルコール依存症患者役などのシリアスな演技も見せて、現代人の持つ性格的ひ弱さを演じては右に出るものはいないとまで言われる。1973年の『セイブ・ザ・タイガー』でアカデミー主演男優賞を受賞し、主演、助演を獲得した最初の俳優となった。(wikipediaより)

マルチェロ・マストロヤンニ(Marcello Vincenzo Domenico Mastroianni, 1924年9月28日 - 1996年12月19日)は、20世紀のイタリアを代表する映画俳優。maca-maruche.jpg
第二次世界大戦が終結した1945年に演劇の世界に入り、ローマで映画の制作スタッフとして働くとともに、ローマ大学の演劇センターで俳優のレッスンを受け始める。その後イタリアを代表する巨匠、ルキノ・ヴィスコンティ監督に才能を認められ、1947年にイタリアで公開された『レ・ミゼラブル』(原題:『I Miserabili』)で俳優としてのキャリアをスタートさせる。その後は『バストで勝負』(1955年)や『女と男』(1957年)、 ルキノ・ヴィスコンティ監督の『白夜』(1957年)などに出演し、1959年に公開されたフェデリコ・フェリーニ監督の名作『甘い生活』(原題:『La Dolce vita』)で、ローマの上流階級を舞台に退廃的な生活を送るゴシップ記者を演じ、世界的な名声を得る。(wikipediaより)


監督がエットーレ・スコラ。
「イタリアの山田洋次」と勝手に思っています。
「星降る夜のリストランテ」「BARに灯ともる頃」「特別な一日」など、人生の機微を描いて名人の域にあるお方です。
そんな、ツボを抑えた演出にシビレること請け合いです。
関連レビュー:エットーレ・スコラ監督を紹介
『ル・バル』
ダンス・ホールで繰り広げられる無言劇
ベルリン国際映画祭銀熊賞・受賞作品

この映画も、もちろん期待に違わず笑わせてくれてホロリとさせて、本当によく出来た映画です。
Film.jpg
第二次世界大戦当時、イタリアに駐留したアメリカ兵で、数十年ぶりで仕事でイタリアに来た男の役がジャック・レモン。
そのジャック・レモンと恋に落ちたイタリア娘の兄が、マルチェロ・マストロヤンニ。
ジャック・レモン演じるアメリカ兵は、恋に落ちた娘にいつか帰ってくると約束をしながら、その約束はスッカリ忘れています。
それなのになぜか、彼はマルチェロ・マストロヤンニの歓迎を受け、その妹とかつて駐留した村で自分が英雄になっている事を知る・・・・・・・

どうですか、この導入部?
いい感じでしょう?
この映画は、若き日の夢が現実に侵食された、哀れなアメリカ人の中年男をジャック・レモンが演じ、説得力があります。

日々の仕事にストレスを抱え、余裕を喪っている彼は、自らの人生を必死に走って来た、その先に見える未来に破滅の予兆を感じ慄いています。

一方のマルチェロ・マストロヤンニはイタリア式人生を謳歌し、仕事よりも恋や趣味に喜びを感じつつ生きています。
そんな、余裕のある「快楽式人生」を悠々と生きる姿を、いぶし銀の演技力で表現します。


そして、イタリア的快楽人生が、アメリカ的な仕事人生に影響を与え、ついにはキャリア以上に大事な「人生の幸福」を見出すという物語です。

そんな、人生の再生を描いて完璧な映画だと感じました。

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映画『マカロニ』解説

ハリウッド映画へのオマージュ


この映画はジャック・レモンがかつて演じてきた、シャレた都会派コメディに対するオマージュのような作品です。
エットーレ・スコラ監督は、アメリカの明るいヒューマン・コメディを愛してきたのでしょう。
それはかつてのハリウッド映画が表わした、明るく自由で元気なアメリカという国に対するオマージュでもあります。
この映画のアメリカ人が苦しみ疲れているのは現実のアメリカを反映した姿であり、このイタリア監督は自らの喜びを生み出してくれたアメリカ映画とアメリカに対して、イタリアからエールを送っているように思います。

そんな物語をイタリア映画特有のウェットな情感と、良い意味で予定調和的な世界観で、見る者の心を感動させ共感を呼びます。

しかし、実はそんなハリウッド映画に対するオマージュを描いた欧州映画がたくさん有ります。
関連レビュー:ハリウッド映画のオマージュ
『ジンジャーとフレッド』
フェデリコ・フェリーニのノスタルジックな映画
マルチェロ・マストロヤンニ主演
関連レビュー:フランス発ハリウッド映画の憧憬
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関連レビュー:イタリアの語る「映画こそ天国」
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ジュゼッペ・トルナトーレ監督の語る映画の快楽
旧き映画のノスタルジー



欧州映画の消失



こんな人情話のお手本のような、このお話の最後には、落語のような見事なオチまで付いています。

絶対に見て損はないですが、問題は手に入るかどうかです・・・

ホントにヨーロッパ映画は見たい作品が・・・・・・

どんどん消えていく・・・・・

Film2-GrenBar.png



posted by ヒラヒ at 18:44| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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