評価:★★★★★ 5.0点
ヒッチコック映画の真髄を、ヌーベルバーグの旗手トリュフォーがインタビューを通し追求する1冊。
「重要なのはスクリーンをエモーションで埋め尽くすことだ」
「迷ったら全て捨てて元に戻る」
「スクリーンに映ったものがすべてだ」
「観客が望むものを見せるのだ」
など、など、ヒッチコックが自作の映画について語る言葉は、そのまま映画の秘事を伝える聖書のように、珠玉の言葉に溢れている。
映画に限らず、人にモノを伝えるという事に関わる、根本的な精神と技術が詰まった一冊だと思った。
また、ハリウッドの人気監督だっただけに、映画好きの人にとってオモシロいゴシップやエピソードがいっぱい。
あの名作「ダイヤルMを回せ」に関して尋ねられて「話すことはない次に行こう」と言ったり、「白い恐怖」でイングリッド・バーグマンが色々なアイディアを毎朝持ち込むのに対して「たかが映画じゃないか」と答えたり、「ロープ」に関して「あんな馬鹿な事は二度としない」と反省したり。
そう「サイコ」については少ない制作費でたくさん儲けたと自慢する。
あ〜そうそう、トリュフォーの「アメリカの夜」という映画は、この本の中でヒッチコックがあげたアイデアだったりします。
そういう意味ではこの本自体が、映画史上における事件でもある。
豊富な写真と詳細なデーターで本当に役に立つ、そして、オモシロい一冊。
たとえば「鳥」のヒッチコックの絵コンテが有ったり、「裏窓」のモンタージュを図版入りで解説したり。
至れり尽くせりで、眺めているだけでも幸せな気持ちになる。
それにしても、トリュフォーって映画おたくだな〜と。
ヒッチコックの映画の重箱の隅を嬉しそうに突っついてる・・・・・
考えてみれば、自分の大好きな監督にその映画の話をしてもらうなんて、こんな幸せな事はないですね。
トリュフォーの映画愛が溢れています。
そういう意味では、トリュフォー好きの人も"マスト"の一冊。
老婆心ながら申し上げれば、この本はもう一般書店ではまずお目にかからない。
しかもこの手の図版のいっぱい入った本は、版を重ねることがナカナカ難しいという事情もあるようだ。
入手できるうちに購入されることをお勧めする。
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