原題 Windtalkers 製作国 アメリカ 製作年 2001 上映時間 134分 監督 ジョン・ウー 脚本 ジョン・ライス 、ジョン・バッティーア |
評価:★★ 2.0点
ニコラス・ケージとジョン・ウー監督のコンビで送る、本格戦争映画。
第2次世界大戦、太平洋での日本軍との激戦地を舞台に繰り広げられる、様々な要素が含まれたドラマである。
この映画は、アメリカ軍の暗号部隊コードトーカー(暗号通達者)を担ったナバホ族隊員の、歴史的実話を元に描かれている。

<目次> |
映画『ウインドトーカーズ』簡単あらすじ |
第二次世界大戦のさなか、1943年の南太平洋ガダルカナルではアメリカ軍と日本軍の詩等が繰り広げられていた。
その凄惨な戦場でエンダーズ伍長(ニコラス・ケイジ)は、小隊指揮官の戦死により部隊を率いたものの、自分1人生き残った。
戦場を離れハワイの軍病院に送られたものの、心身ともにに深い傷を負い苦しむ。
しかし、部隊壊滅の責任を感じるエンダーズは、すぐにも最前線に出たいと訴え、病院スタッフの助けもあり戦線復帰を果たす。
そんなエンダーズに戦場復帰が認められたが、その新たな任務は奇妙なものだった。
ナバホ族の暗号通信兵であるヤージ(アダム・ビーチ)とホワイトホース(ロジャー・ウィリー)を護衛し秘密暗号の死守を命じられたのだ。彼等は、ナバホ語を元に作られた暗号"ウインドトーカーズ"を理解できる存在であり、彼等が日本軍の手に落ちればアメリカ軍の機密情報は、全て解読されかねなかった。軍は暗号の秘密が流出するぐらいなら、敵の手に落ちる前に暗号保持者の命を奪えと命じられていた。
任務に悩むエンダーズは自分が守るべきナバホ族のヤージ(アダム・ビーチ)と距離を置いていた
1944年6月16日エンダーズはもう1人の護衛オックス(クリスチャン・スレーター)と、2人の通信兵からなる第2偵察隊として、サイパン島に上陸し日本軍との激しい銃撃戦に遭遇する。
そして日々、激戦を共に切り抜ける中、互いに信頼と連帯感が生まれていった。
だが隊が日本人村で奇襲され、危機に陥ったホワイトホースを助けようと、オックスは戦死した。
ついにホワイトホースが日本軍に拉致されようとした時、エンダーズは軍の命令に従い、苦渋の決断で手榴弾で爆殺した。
仲間を喪ったヤージーは、エンダーズが自分が殺したと告白したため、激怒しその頭に銃を向けた。
エンダーズも撃てと促したが、ヤージーは撃てず、以後戦場の中で命を投げ出すように敵陣に無謀な突撃を繰り返すー
映画『ウインドトーカーズ』予告 |
映画『ウインドトーカーズ』出演者 |
ジョー・エンダース(ニコラス・ケイジ)/ベン・ヤージ(アダム・ビーチ)/オックス・ヘンダーソン(クリスチャン・スレーター)/チャーリー・ホワイトホース(ロジャー・ウィリー)/イェルムスタッド(ピーター・ストーメア)/チック(ノア・エメリッヒ)/パパス(マーク・ラファロ)/ネリー(マーティン・ヘンダーソン)/ハリガン(ブライアン・ヴァン・ホルト)/リタ(フランセス・オコナー)/メリッツ少佐(ジェイソン・アイザックス)/マーテンス(キャメロン・ソール)/軍医(ケビン・クーニー)/キトリング(キース・キャンベル)/ハスビー(クレイトン・J・バーバー)/タワラキャンプの2等軍曹(スコット・アトキンソン)/ナバホの教官(ビンセント・ホイップル)/SGTコード教官(クリス・デヴリン)/三等曹長(ジェフ・デイヴィス)/曹長(新垣樽助)/衛生兵(くわはら利晃)/小隊付軍曹(中村俊洋)

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映画『ウインドトーカーズ』感想 |
この映画の題材になった、ナバホ語による暗号部隊は実在しており、史実の物語でもある。

そして、暗号を死守するためにはナバホの兵士を殺しても良いとの、軍上層部の命令が有るとき人種差別の問題と、軍隊という組織の非情さを告発するものだ。
つまり、この映画には戦争の悲惨と、人種差別と、アメリカ軍部の犯罪と、そして主人公の苦悩が語られ、正直何一つ解決されない。
結局この映画は、本来であればソレだけで一本の作品になるべき、テーマや素材をごった混ぜにして語ってしまったがゆえに混乱が生じたように思える。
その点では脚本が、第一の戦犯として断罪されるべきだろう。
しかし実際の映画を子細に見てみると、主題の錯綜はあるものの登場人物の感情的な流れは破綻を生じてはいないのだ。
そこで気がついたのは、全体のストーリー以上にこの映画を分かりづらいものとしている要素の存在だった。
それは「アクション=戦闘シーン」だ。
本来ドラマのアクションというのは、その登場人物の感情的な抑揚の結果として、その怒り、正義、邪悪、狂気が爆発する場として在るはずだ。
しかしこの映画におけるアクションは、それまでの心理的なシークエンスと乖離した形で表わされているように感じられてならない。
この映画全体のストーリーや登場人物はその心理的な葛藤を真摯に語っているにもかかわらず、その感情の流れに関係なく登場人物たちはアクションにおいては、英雄的で超人的な大活劇が始まってしまう。
例えば、一見、ただ過激なだけに見える戦闘シーンを持つ、スピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』にした所で、そのアクションを過激に描く理由があったのだ。
関連レビュー:衝撃のノルマンディー上陸シーン 『プライベート・ライアン』 第二次世界大戦を舞台にした、ヒューマニズムの物語 監督スピルバーグ主演トム・ハンクスのアカデミー賞受賞作品 |
やはりアクション映画の元祖と言うべき、ジョン・フォード監督『駅馬車』が証明したように、大事なのは人間ドラマが生む必然としてアクションが生まれると言う事実だったはずだ。
関連レビュー:アクション映画の元祖 『駅馬車』 ジョン・フォード監督の古典「西部劇」解説! アクション映画の人格化とは? |
結局この映画のスーパーヒーロー的な活躍が、映画全体の文脈と相反するベクトルとして存在するために、映画としてどう見るべきかが観客に伝わらないという結果になったのであろう。
そして、映画の成立過程を見ると、結局大作映画として売りたいメジャースタジオの意向によって、この作品が本来持つメッセージが歪められてしまったのが真相のようである。
静かな人間ドラマがいい雰囲気だっただけに、それに見合うアクションシーンを演出できたならば、説得力を持った映画になったとおもうと、ジョン・ウー監督にとって残念な横槍だったろう・・・・・・・

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映画『ウインドトーカーズ』解説映画実話紹介・ナバホ族「コードトーカー(暗号伝達者)」 |
コードトーカー(暗号伝達者)とは、秘密通信の手段として未知の言語を利用するために戦時中に軍に採用された話者で、現在では通常、第二次世界大戦中のネイティブアメリカン言語を基礎としてコード化された暗号送信の従事者指す。合衆国海兵隊には約400〜500人のネイティブアメリカンがいて、その主な仕事は秘密の戦術メッセージを送信することだった。
コードトーカーは、彼らの母国語に基づいて構築・開発された暗号(コード)を使用して、軍事電話または無線通信網を通じ暗号を伝達した。
第二次世界大戦中に使用された暗号は2つのタイプがあり、一つは、コマンチ族、ホピ族、メスワキ族、ナバホ族の言語に基づいて公式に開発され、英語のアルファベットの各文字に彼らの言語の言葉を使う方法だった。例えば”A”は英語の”Ant(蟻)”とし、その”Ant”のナバホ語”wo-la-chee”を”A”を表す語として使い、同様の方法で全てのアルファベットをナバホ語にし、変換発信および翻訳受信できた。
2つ目の暗号は非公式なもので、英語をネイティブアメリカンの言語に直接翻訳するタイプで、この場合、英語の言葉の相応しい語彙が母国語にない場合、コードトーカーは言い換えて表現し、たとえば、ナバホには潜水艦という言葉がなかったので、彼らはそれを鉄の魚と翻訳した。
コードトーカーという名前は、特に、太平洋戦争中の通信部隊で任務に就いた、米海兵隊バイリンガルのナバホ語話者が有名なため彼等を指す事が多いが、上で述べた通りネイティブアメリカンの各部族が、欧州も含め各戦線で活躍した。
結成の経緯はロサンゼルス市の退役軍人であるフィリップ・ジョンストンが、第二次世界大戦の初期に米国海兵隊にナバホ語の暗号使用を提案したとされる。ジョンストンは、ナバホ族居留地の宣教師の息子で、流暢にナバホ言語を話す少数の白人の一人だった。
正式に暗号として採用されると、多くのナバホ族は真珠湾の直後に参加し、戦争に貢献することに熱心だった。
しかしコードトーカーのアルバート・スミスは「ナバホ族内で社会的対立が起きた」が「母なる大地を守る戦い」として協力する者が多数を占めたと言う。
ナバホ族には複雑な文法があり、同じNa-Dene語族(ネイティブアメリカン語類)内の最も近縁語ですら、十分に相互理解が可能ではない。当時は文字を持たない言語であり、軍はナバホ語が解読不可能な暗号だと確信した。方言の多さと、複雑な構文と音韻規則は、長年の教育と訓練なしには誰も理解できないものだった。
一説では、第二次世界大戦の勃発時に、ナバホ族以外で、その言語を理解できたのは30人未満だったと言う。
1942年の初め、ジョンストンは軍幹部を前に実証実験を行い、海兵隊はナバホ族200人の採用を決め、1942年5月には最初の29人を徴集しペンドルトン基地にでナバホ語暗号を作成した。
ナバホ族のコードは、いくつかの用語、概念、戦術、および現代戦の作戦に、独自の命名法が与えられ、例えば、サメは駆逐艦を指し、シルバーオークの葉は中佐の階級を示していた。
暗号帳は新兵訓練で教本として開発され、テキストは教室のみで使用され、戦地には決して持ち込まなかった。コードトーカーは全てを記憶し、ストレス下でそれらを迅速に行えるよう訓練された。ナバホ族のコードトーカーは、戦争を通じてその能力を発揮し、スピード、正確さで顕彰された。
彼らの仕事は、特に太平洋戦線では非常に危険で、日本軍は故意に将校、医者、無線士を標的とし、コードトーカーは送信する間移動を余儀なくされた。
硫黄島の戦いの最初の2日間は、6人のナバホ族のコードトーカーが24時間体制で働いた。
この6人は、800以上の電文を送受信し、すべて正確だった。指揮官は後に「ナバホ族がいなかったら、海兵隊は硫黄島を占領することはなかっただろう」と述べた。
太平洋戦域全体の暗号の一貫性を確保するため、海兵隊のコードトーカー部門は、暗号の更新と改善に取り組み、コードトーカーの代表者は暗号の更新のためハワイで会合を持ち、その代表者が他のコードトーカーを訓練した。
戦争が進むにつれて、暗号語が追加され、プログラム全体に組み込まれ、またある時には特定の作戦だけに適用される暗号が考案された。
戦争が勝利で終わり、その長期に渡る貢献にもかかわらず、コードトーカーはその業績を秘すことを米政府によって強いられた。
彼らは家族にすら口外できなかったが、米軍及び米政府はその暗号が将来の戦争で再び必要になる可能性を考え、コードトーカー情報を1968年まで機密事項としたからである。
実際、ナバホ族のコードトーカーは、朝鮮戦争時も、ベトナム戦争の初期にも軍務に就かされていた。
コードトーカーが社会的に認知されるのは、2001年、連邦議会金メダルが贈られ、広くその功績が明らかにされまで待たなければならなかった。(上:ブッシュ大統領から顕彰を受けるコードトーカー)
この暗号を開発した、最初のナバホ族29人の最後の一人チェスター・ネスは、2014年6月4日に死亡した。
2019年には軍務についたコードトーカーのうち4人が亡くなり、存命する戦争従事者は5人となった。(下:トランプ大統領から顕彰を受けるコードトーカー)
ナバホ語の暗号は、発話暗号としては、その全期を通じ未解読だった唯一の軍事的暗号とされる。

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以下の文章には 映画『ウインドトーカーズ』ネタバレがあります。 |
(あらすじから)
そんな危険なヤージーの戦いぶりに危険を感じるエンダーズだったが、ついに日本軍の中に突進したヤージーを守ろうとエンダーズが敵陣に乗り込んだ時、日本軍に完全に包囲され絶体絶命の危機に立たされた。
しかしエンダーズはヤージーを守るため、リスク覚悟で日本軍の無線機を奪い、味方への通信を可能とし援護を受ける事に成功する。
その時、胸を撃たれたエンダーズは、ヤージー看取られながら、その人生を終えた。

映画『ウインドトーカーズ』結末 |
自らの故郷モニュメント・バレーに帰ったヤージーは、妻と息子を前に伝統的な祈りでエンダーズを弔うのだった。
<エピローグ>
ナバホ族のコードは太平洋戦域の対日本勝利にとって極めて重要であり、戦争中、他のすべてのネイティブアメリカンのコードと同様に、ナバホ族のコードは決して破られなかった。
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