2020年11月10日

映画『エスター』を巡る娯楽作品とテーマとの関係とは?/感想・解説・考察・批判・簡単あらすじ・続編紹介

映画『エスター』感想・解説 編

原題 ORPHAN
製作国 アメリカ
製作年 2009年
上映時間 123分
監督 ジャウム・コレット=セラ
脚本 デイビッド・レスリー・ジョンソン
原案 アレックス・メイス


初見評価 :★★★★  4.0点
2回目評価:★★★   3.0点
3回目評価:★★    2.0点



この映画は一回目を見たとき、傑作かとすら思いました。
しかし、2回目、3回目と見るうちに・・・・・・
すみません、ここから先は、この映画に対する批判的文章が含まれます・・・・この映画を愛する方々におかれましては、お読み頂かない方がよろしいかと思います。

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以下の文章には、ネタバレ及び批判的な内容が含まれます。


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<目次>
映画『エスター』簡単ストーリー
映画『エスター』予告・出演者
映画『エスター』感想
映画『エスター』考察
映画『エスター』解説
映画『エスター』続編紹介

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映画『エスター』簡単あらすじ

妻ケイト(ヴェラ・ファーミガ)と夫ジョン(ピーター・サースガード)のコールマン夫妻は、妻ケイトが3番目の娘を流産し、精神的な落ち込みから回復できずにいた。
そこで夫婦は養子を取ることを決め、孤児院長のシスター・アビゲイル()の勧めもあり、ロシア孤児エスターという娘を養女とした。家では、5歳の娘マックス(アリアーナ・エンジニア)と、12歳の息子ダニエル(ジミー・ベネット)、そしてその面倒を見るジョンの母バーバラ(ローズマリー・ダンズモア)が迎え入れた。しかし、その家族はエスターの驚愕の秘密により、恐怖の底に落とされる・・・・・・・
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映画『エスター』予告

映画『エスター』出演者

ケイト・コールマン(ヴェラ・ファーミガ)/エスター(イザベル・ファーマン)/ジョン・コールマン(ピーター・サースガード)/ダニエル・コールマン(ジミー・ベネット)/マックス・コールマン(アリアーナ・エンジニア)/シスター・アビゲイル(CCH・パウンダー)/バーバラ(ローズマリー・ダンズモア)
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映画『エスター』感想


なかなかよく出来た、ハリウッド映画という風に思いました。

だ〜ん!!!!
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テーマはいらない!
ばんんんんんん-----ぎゃ〜〜〜 次に何がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ起こるか。

予測できなければ
-----------えっ!!!!まさか!---------

観客は次を見る。
うわぁ〜〜〜ぅおぉぉおおおぉおまぃいぃいっぃがぁぁぁぁぁぁぁ〜〜

しかし、この映画の脚本は良く出来ていて!! いてぇ〜〜〜><
エスターの正体==まさかそんな〜〜==が分かった後は。。。。。はっクション;ハクション!!

アクション映画にチェンジする所なんかも、あっぅう後ろに誰か!!!!
なかなか観客の興味をつなぎ留めるのに、効果的だと、オオオオオオ〜のぉぉぉぉ〜もももももぅぅぅぅぅ 、思うのでした。

怪しげな雰囲気を演出する、<<<<血が>>>>>>カメラワークだとか、効果的でした!!
この文章と一緒で、最初は何だろう????? で、見ちゃっても・・・・・ガ〜ガ〜ガ〜ガ〜〜〜んんん!!!

何回も見てると慣れちゃうから・・・・ Orz
 
そうすると・・・・なかなか評価しずらいよね・・・・
一回目の新奇性=ユニーク性、が人の好奇心を刺激したとしても、ただ驚かすだけの作品だと繰り返し見る気にはならない。

個人的に「映画とは時代を超越した力を、その表現内に保持し得るメディア」だと信じている私には、何度見ても面白く、古びない、「永遠のユニークさ」を感じられない、この映画に対しての評価は低くならざるを得ません。

特に映画館が、シネマ・コンプレックスになってからは、一回きりの消費期限の映画が増えたヨウデ・・・・・・
関連レビュー:シネ・コンと映画の関係とは?
映画『アベンジャーズ』

世界中で大ヒットのアメ・コミ・ヒーロー大集合!
世界を救うために集められた最強のヒーロー達!!

いわんや、この映画は2回は脚本も良くて楽しめましたが、3回目はもう全部分かったの確認回でした・・・・そんなワケで上の評価です。

念のため5回まで試しましたが、途中で睡魔がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
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映画『エスター』考察

別の結末と娯楽作品の話法

この映画は、基本的にハリウッド的娯楽作品、ハリウッド的サスペンスの話法で語られていると思います。
前半の少女エスターが生む「サスペンス不可知の恐怖」の語りも、ヒッチコックの『サイコ』のように、理由が開示されない事件発生により、上手く観客の意識を引き寄せ、恐怖を産んでいて、その表現力は高いと思います。
関連レビュー:世界初の驚愕の結末!!
ヒッチコック『サイコ』
巨匠ヒッチコック監督の驚愕の傑作!!
サイコ・ホラーの地平を切り開いたパイオニア

そして、この少女の秘密が明らかになってからは、一気にアクション・ドラマとして緊迫した展開を描き、その描写も力のあるものだと感じました。
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つまり、この映画は、前半はサイコホラーとして、クライマックスはサスペンス・アクションとして、娯楽作品として標準以上の力を持っていると感じました。

しかし同時に、娯楽性を追及するがゆえに「売らんかな」の、過剰な表現も見え隠れします。
それは、冒頭の叫び声を上げる、主人公ケイトの刺激の多い描写から始まって、エスターのショッカー的行動や、夫婦の性行為の表現と言い、子供達に対する過激な攻撃シーンなど「あざとい」と言いたい位、娯楽性を重視した扇情的なシーンが続くと個人的には感じました。

そのあざとさが、最も明瞭に表れているのが、この映画のラストシーンです。
実は、この映画には、もう一つのラストシーンが有りました。
<『エスター』未公開ラストシーン>
【意訳】エスター:今晩は。私の名前はエスター。
ここで語られたラストでは、エスターが温室でケイトの下敷きになった後、もうケイトや娘マックスを追いません。
エスターは、静かに王女のように警察に投降し映画は幕を閉じます。
私は、このラストこそ、この映画にとって在るべき最後だったと思います。
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このラストであれば、エスターは女性になれない女性であり、言い換えれば「男に愛されない女性」としての悲しみから、妻であり母となったケイトに対し憎しみをぶつけたという、女性ジェンダーの悲劇を語る作品として収まりが良く、観客も単純に「エスターもかわいそうだね」という割り切りよい素直な読後感で終わるのです。
しかし、明らかにこの映画は、ドラマツルギーの完成度よりも、より刺激的な、より扇情的な最後を選んでいます。
それゆえ、この映画は、あくまで娯楽性を優先した選択により、ドラマ要素は刺激を生むための道具と化し、結果的にドラマがないがしろにされ、繰り返し視聴を困難にさせてしまったように思います。


同時に、刺激優先の混乱したドラマは、この映画を単純な娯楽作として見せる事も許さない、夾雑物を含んでしまったように思います。

その点を以下で書かせて頂きます・・・・・
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映画『エスター』解説

エスターの実話?

この映画で、ちょっと救いようがないのは、最後にエスターに「ママ」と言わせ、ケイトに「ママじゃない」と、叫ばせたことです。
<『エスター』ラスト・シーン>
【意訳】ケイト:下がって、後ろに下がって!/エスター:ママ。私を殺さないで。/ケイト:私はアンタのママなんかじゃない!
この言葉によって、この作品は、娯楽作の話法から語り得ない「テーマ性」を提示してしまったと言えます。

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つまり、母と娘、親子、肉親、養子縁組など、決して娯楽作品の中で軽々しく扱えない問題を、その関係の破綻や子の死まで含めて過激に描いてしまったのです。

更に、エスターを殺すケイトの姿を見た、娘マックスの心情を思いやれば、その将来に間違いなく禍根を残すと思われ、苦い鑑賞観を生むことでしょう・・・・・
小さな子供や、親の愛は、決して娯楽的作品で傷つけるべきではないのは、それらの公序良俗を否定するには、充分な説得を物語内で必要とするからです。

それらの説明を充分しようとすれば、娯楽作の単純明快さは失われ、娯楽作としての質の低下につながることになります。
結局この映画は刺激を生むために「母・家族・親子」を否定する物語を描いてしまい、娯楽作品として破綻を生んでしまったと考えます。

実際、娯楽作品の題材選びは、それなりに難しいと思うのは、例えば重いテーマを選べば単純な娯楽作に収まらない例は、映画『50回目のファースト・キス』でも感じました。
その映画では、短期記憶障害と言うヒロインの病気が、単純な娯楽作にするには少々重いテーマだと感じました。
関連レビュー:昨日を忘れる娘の恋!
『50回目のファースト・キス』
短期記憶喪失障害を抱えているルーシーのラブ・ストリー
ハワイを舞台にした、ハートフル恋愛ドラマ


また、本来は静かな語り口こそ相応しい実話戦争映画を、派手なアクション映画にしてしまい失敗した『ウインドトーカーズ』と言う例もあります。
アメリカ映画:アクションとドラマの関係とは?
映画『ウインドトーカーズ』

実在した第二次世界大戦の暗号部隊の物語
日本軍との壮絶戦闘シーンが生む混乱とは!?

例えばエンターテーメント作品として、『ジョーズ』『エイリアン』のように、恐怖の実体が簡単明瞭であれば、ここまでこじれなかったでしょう。
アメリカ映画:1975年
『ジョーズ』
スピルバーグ監督の描く恐怖の秘密とは?
獰猛な鮫と人間の息詰まる闘い描く大ヒット作

更には、エスターの正体を最後まで明かさず、その動機も知らせずにラストを迎えたならば、娯楽作として成立しなくとも「親と子・血縁」「幼児の性善説」に対するアンチテーゼを観客の心に呼び起こし、ヒッチコックの『鳥』のような、恐るべき傑作になった可能性もあったでしょう。
関連レビュー:不可知の不条理の恐怖の行方
ヒッチコック『鳥 』
「動物パニック」ジャンルの世界初映画!
ヒッチコック監督とパイオニアの宿命

結局のところ、語る内容と語りの口調が、ハーモニーを奏でなければ、作品としての成功は難しいと言うことかと思います・・・・・
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映画『エスター』解説

エスターの続編

いろいろ書いてきましたが、この映画の続編が決定し、撮影が始まっています。
それはこの映画が、人々に愛され求められたことの証明だと思います。
<続編タイトル/孤児:第一の殺人(原題Orphan:First Kill)>
2020年2月、ウィリアム・ブレントベルがデヴィッド・コッゲシャルの脚本から映画を監督し、デヴィッド・レスリー・ジョンソン-マク・ゴールドリックが製作総指揮を務めると発表された。2020年11月、ジュリア・スタイルズとロシフ・サザーランドが映画の俳優に加わり、エスターとしてイザベル・ファーマンが再びエスターを演じるとが発表された。映画製作者は、ファーマンが再びエスターを演じられるように、メイク・アップと遠近法特殊効果の撮影を組み合わせて使用​​すると述べた。(英語版wikipedia より)
この映画の撮影は2020年11月に始まり、この映画『エスター』の事件の前を描くことになるそうです。

上で紹介したもう一つの、ラストシーンにしておけば・・・・・・
エスターの恐るべき成長を描けたのになぁと・・・・・・



posted by ヒラヒ at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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