2014年09月15日

映画『薄桜記』日本映画黄金期の力!感想・解説・チャンバラの魅力!

日本映画の基礎デッサン力の証明



評価:★★★★ 4.0点

この映画は、正直、見てびっくりしました。

何がって、おかしな言い方ですが、基礎デッサン力が非常に高い・・・・・NHKでドラマとしてリメイクされたのを見た方も多いでしょうが、オリジナルはこちらです。

監督・森一生、主演・市川雷蔵、共演・勝新太郎。
原作五味康祐の小説を伊藤大輔が脚色しています。

忠臣蔵の高田馬場の決闘や赤穂浪士による吉良邸討ち入りを背景に、2人の剣士・丹下典膳と堀部安兵衛の友情や、丹下典膳の妻千春をめぐる悲恋が描かれます。

実は、撮影・音声は経年劣化がありますし、ストーリーにも「嫁しては二夫に交えず」なんて事が悲恋に繋がっていたりしますが・・・・・・50年前の映画です。
ご愛嬌でしょう。

で、基礎デッサン力の話に戻りますが、監督の演出、俳優の演技、脚本、職人技の安定感が凄いです。
照明、絵作りの美しさはタメ息が出るほどです。例えば、映像を静止画としてみた時、日本画の構図になっていてハッとするほどキレイだったりします。
ヒロイン・千春役の女優・真城千都世さんはこの映画がデビューの様ですが、場面の中で自分の役割や必要な情報を過不足なく伝え、なおかつ情感もあり、しっかりとした演技です。

そして、この殺陣の凄さは、も〜何としたことでしょう。
アクション自体の華やかさに加え、動きの中に情念の炎がユラメいています。ラストの殺陣のスゴサに思わず笑ってしまうほどでした。
 
この映画が公開当時どういう評価だったのか判りませんが映画賞を獲ったという事も無いようですし、ザックリ中の上という作品でしょうか?

それでも、このクォリティです。 
恐るべしといわせて頂きます。
 
これは昭和34年の作品。
この年は現天皇皇后の御成婚の年でした。これを期にTVが家庭に普及したという年です。
逆にいえば、この当時はTVはあってないような物で娯楽は映画が主役の座だったのです。

やはり、映画館の暗い中で大きなスクリーンで、見るためには、しっかりした画作りと、安定した演技、画面いっぱいを持たせる殺陣が、必要とされたのでしょう。

そのために積み上げられてきた、日本映画界の基礎的な力の大きさに、改めて驚嘆したのでした。
なんとこの年は約500本の映画を撮っています。
年間数百本の映画を作っていれば、多少気を抜いた所で一定の品質が維持されるでしょう。
それが職人の腕というものです・・・・・・

正直、黒沢だ溝口だというものの、この「薄桜記」を圧倒するほどのクオリティーかと問われれば、そこまで距離がないように感じられます。
だとすれば、この日本映画界の基礎力が在って、その上にほんのちょっと監督の個性を乗せただけとすら思えるのです。

やはり基礎基本がしっかりしたモノは、崩しようが無い骨格が厳然とあるように思います。

その基礎力を強くするためには、たとえば絵のデッサンは大きな紙で描けと言います。
大きく描けばデッサンの狂いが否応なくさらけ出てしまい、ゴマカシがきかないので・・・・・・

振り返って今の映画界はどうでしょう?
TVドラマの映画化が多い現状は、小さなデッサンを大きな画面に引き伸ばすようなものでしょう。
日本映画の基礎力が衰えていくのは、イタシカタナイのかも知れません・・・・・・


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ラベル:市川雷蔵 森一生
posted by ヒラヒ at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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