2017年12月08日

映画『ペーパームーン』親子共演の現実とオニール家の崩壊/感想・解説・評価・トリビア

映画『ペーパームーン』(感想・解説 編)

原題 Paper moon
製作国 アメリカ
製作年 1973年
上映時間 103分
監督 ピーター・ボグダノヴィッチ
脚本 アルヴィン・サージェント
原作 ジョー・デイヴィッド・ブラウン


評価:★★★   3.0点



この「大恐慌時代」を背景にした映画は、白黒の画面といい、詐欺をして金を稼ぐ所といい、チャップリンの名作『キッド』を思い出しました。
また、大人が子供を致し方なく連れて歩く、『グロリア』や『レオン』なども思い出させます。
いずれにしても評論家、一般ユーザーの双方から、高い評価を受けている作品です。
・・・・・・しかし、個人的印象としては、残念ながらいま一つ乗り切れませんでした。

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<目次>

『ペーパームーン』感想
トリビア「子供がタバコ吸っていいの?」
トリビア「ボグダノビッチ監督と巨匠の関係?」
トリビア「テータム・オニールのオスカー事件とは?」
トリビア「オニール家の確執・崩壊とは?」
トリビア「ペーパームーンとは?」
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映画『ペーパームーン』予告

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映画『ペーパームーン』出演者

モーゼ・プレイ(ライアン・オニール)/アディ・ロギンス(テータム・オニール)/トリクシー・デライト(マデリーン・カーン)/ハーディン保安官(ジョン・ヒラーマン)/ジェス・ハーディン(島香裕)/イモジン(P・J・ジョンソン)/フロイド(バートン・ギリアム)/オリー(ジェシー・リー・フルトン)/牧師(ジェームズ・N・ハレル)/牧師の妻(リラ・ウォーターズ)/ロバートソン(ノーブル・ウィリンガム)/駅長(ジャック・ソーンダース)/ウェイトレス(ジョディ・ウィルバー)/パール・モーガン(リズ・ロス)/法執行官(エド・リード)/リボン店の店員(ドロシー・プライス)/エドナ(ドロシー・フォースター)
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映画『ペーパームーン』感想


ライアン・オニール演じる主人公と、一人の女の子(テータム・オニール=ライアン・オニールの実の娘)のロードゴーイングムービーです。

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その道中で繰り広げられる、騒動と二人の間に生まれる情愛を描いています。


しかし、う〜ん、なぜだろ〜なんだろ〜この食い足りないカンジ。

たとえばチャップリンの『キッド』だと、とってもウエットな、ハートウォーミングな物語なワケです。

別に『キッド』を引き合いに出さなくても、『レオン』でも『グロリア』でも、さらにはブラジルの『セントラル・ステーション』だって、子供と大人が旅をしていく物語となれば、たいてい大人が邪魔に思いつつも、最後には子供に愛情を示し、お互いにかけがえのない存在になっていくというのが物語の原型です。


そこには、真の親子の関係でなくとも、人としての情愛が描かれているからこそ「人情」話になると思うのです。
それは大げさに言えば、人の「性善」を語る物語としてあるのではないでしょうか。
しかし、この映画はその相互の感情の交流の表現が細やかではないというか、ぶっきらぼうな印象を個人的には受けてしまったのです。
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本来であれば、徐々に親密になる描写が必要だと思うのですが、ほんとに少ないどころか、あえて描いてないような気さえします・・・・・・

物語中では、この主人公とこの娘が実の親子かどうか、不明確なまま物語は進みます。
娘の方は父親であって欲しいと願っていて、主人公は父親である事を認めまいとして強く冷たく当たります。

それゆえこの二人が本当に仲良くなっているのかと、心配になってしまいます。

お互いそっぽを向いていても、求め合っているという実感を、映画から私は受け取れませんでした。
そのお互いに相手を必要としているのだという、描写の少なさゆえに人情話としての説得力が落ちたように、個人的には感じたのです。


そこで作品中に、この二人の間に生まれたはずの愛情が、十分に表現されなかったワケをイロイロ考えてみたのですが・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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たぶんこの説得力の無さは、本当の親子で共演したせいではないかと邪推しています。

それは本当の親子であるがゆえに、本当の親子だとは思いたくない役を演じるときに、ドラマとして必要とされる以上に「冷たい」演技がなされてしまったためではないかと思ったのです・・・・・・・

それとも観客としても、本当は親子という情報を含んで見たとすれば、この醒めた描き方がちょうどいい目分量となるのでしょうか・・・・・
個人的には実の親子だという映画外の情報を含んで、この作品を見る事はしないので、正直良く判断できません・・・・・・
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後年のインタビューでは「アイ・ラブ・ユー」と脚本に書いてあっても、恥ずかしくて言えなくて、言ったものの最終的にカットされたとテータムは言っています。

そんな風に映画に現実世界が影響をしているのだとすれば、勿体ない気がします。
いずれにしても個人的にはやはりもうチョット、泣かせが入ったほうが説得力があるような気がするなぁという・・・

でも、どのレビューサイトを見ても高い評価の作品ですので、ぜひ見てください。
私のレビューが的外れである事を、祈って止みません。

関連レビュー:疑似母子の傑作ロードムービー
『グロリア』
ジョン・カサベテス監督の任侠映画
映画『レオン』の原典

関連レビュー:疑似父娘の暗殺者
『レオン』
リュック・ベンソン監督のアクション映画
ジャン・レノとナタリー・ポートマン出演

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映画『ペーパームーン』解説

映画『ペーパームーン』のトリビア


アディーのタバコの正体!


この映画内で、当時9歳のテータムオニール扮するアディーが、しょっちゅうタバコを吸うシーンが出てきて、心配になります。
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しかしテータム・オニールが吸っていたタバコは、ニコチンを含まない無害の物だったそうです。
父親のライアンはニューヨーク・タイムスに答えて、テータムがタバコ依存に決してならないだろうと語っています。
なぜなら、そのタバコはレタスを原料にしていて、彼女に吐き気を催させるものだったからです。

ボグダノビッチ監督とオーソン・ウェルズ


ボグダノビッチ監督を調べてみると、本当に映画を愛しているのだと、頭が下がる思いがします。
年間400本見たとか、生涯7000本の映画を見たとかいうのは序の口で、役者としてメソッド演技の教祖的な教師ステラ・アドラー女史に師事し演技を学び役者としてTVドラマに出ています。
更に映画評論家として名をなし、伝説の監督ジョン・フォードやハワード・ホークス、ジョン・ヒューストンにインタビューし、本を出版しています。
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(左から:ジョン・ヒューストン、オーソン・ウェルズ、ピーター・ボグダノビッチ)

更に伝説の俳優オーソン・ウェルズの伝記「オーソン・ウェルズ―その半生を語る」を著し、以来友人としての関係を保ち続け、この映画『ペーパームーン』にも貴重なアドバイスを受けたようです。
たとえば、映画の題名を『ペーパームーン』にしたのはオーソン・ウェルズが良いタイトルだと褒めたからだといいますし、また白黒撮影の際の忠告を聞き、赤いフィルターを使い高コントラストの映像にしたといいます。
そんな先輩を大事にするボグダノビッチは「偉大な先輩から聞いた知恵を、映画の形で還元できない自分」に罪悪感を感じていると語っています。
そんなボグダノビッチ監督に、一本でも多く映画を撮るチャンスが生まれればいいなと、願っています。

関連レビュー:オーソン・ウェルズの出演作品
映画『第三の男』
戦後のウィーンを舞台にしたクライム・サスペンス
ヨーロッパの空白を埋める第三の男


テータム・オニールの助演女優賞



この映画のテータムオニールが獲得した、10歳でのアカデミー賞のタイトルは、2017年現在でも破られていない、アカデミー賞最年少記録です。
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さらに、もう一つ、助演女優賞獲得者の映画内出演時間の最長記録でもあります。
何と、1時間40分の映画で、1時間6分58秒に渡り出ています。

演技経験も無かった彼女が、タバコで気持ち悪くなっても、出ずっぱりで頑張った甲斐あってのアカデミー賞受賞でしたが・・・・・・・・・・
しかし、テータムの2005年出版の自伝『ペーパーライフ』によれば、この時の衝撃的な事件を書いています。

なんと父ライアン・オニールは自分がノミネートされていないのに怒って、テータムをパンチしたというのです。
ナンテ・・・・・可哀そうなテータム・・・・・・
さらにその本では、幼少期からの虐待や父の薬物依存や、自らもヘロイン中毒に陥った事実が赤裸々に語られています。

父ライアンと娘テータム、オニール家の確執



テータムの2005年の自伝『ペーパーライフ』以後、その家族の確執が世間に知られるようになりました。
そしてアメリカのTV番組の企画で、2011年6月から8月にかけて関係修復のドキュメンタリーショーに二人は出演し、確執を解消しようと努めています。
2011年6月〜8月『Ryan and Tatum:O'Neals』
【大意】2週間前に父と出会って、何が起こるか分からなかったとテータム。セラピストが目標を聞き、ライアンは家族が一つになる事と答え、テータムは真実の、もっと正直な関係を求めると言う。司会者は何があったかと尋ね、テータムは父に長い間多くを言われて、大きな影響があり、ドラッグに走った。父には悪いけどと語る。ライアンは事実だと認めて、過去に我々親子の間に問題があったと語る。テータムはその過去を父が認めるのは大変な努力が必要なはずだと言う。それでも父と一緒に暮らした家のことを考えれば、狂いそうになり、悪い記憶しかないと口にする。ライアンは、テータムが悪い所ばかり見て、良かった時のことを忘れてる。悪い時ばかりじゃないと語る。テータムは母が苦しんで、いい人生ではなかった事が悲しい、母にとって良い娘でなかったことも悲しいと言う。ライアンは彼女が幸福だったこともあると言いテータムが彼女を幸福にしたと言い、私達の家族が良かった時の事を話したいと言う。私は仕事が忙しく、混乱したことも有るが、愛を持っていたと語る。テータムが、どこに行っていたのかと反論し、ライアンは責任を全て自分のせいにするのはテータムにとって良くないと語る。責任は完全に認めるが、過去のことだ、終わった、もう起こってしまったと言う。司会者が休みを挟みましょうと告げる。

このTV番組によって、二人の関係は修復されたのでしょうか?
ライアンは言います・・・・・「この番組のせいで、二人の距離は更に開いた」と・・・・・・
しかし、関係修復の努力は今も続けているとも語っています・・・・・・・

いつの日か、この二人が出る映画「リアルムーン」を見る日が来ると信じています・・・・・・・

ペーパームーン写真



「ペーパー・ムーン = 紙の月」は、写真の背景としてアメリカで1900年代初頭に流行し始め、その古い写真は、ありし日のノスタルジーを見る者に感じさせます。
この「ペーパー・ムーン」が、どのようにして広まったかは不明瞭ですが、1903年にライト兄弟が飛行機で飛び、1910年にはハレー彗星の通過もあり、そんな出来事が天空に輝く月への関心を高めたという説もあります。
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実際の「ペーパー・ムーン」のポートレイトを見てみても、月と彗星が両方映っていることから、この時期の宇宙に対する人々の興味が反映されているのかもしれません。
この映画でも見られるように「ペーパー・ムーン」写真は、町のフェスティバルやアーケード、カーニバル、見本市などの、簡単な写真ブースで撮影することがよくありました。

そんな、手軽な「ペーパー・ムーン」ポートレイトには、庶民の気取らない歴史的な風俗が記録されているように思います。
下:『イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン』アビー・ガードナーのPV

写真は「ペーパー・ムーン」ポートレイト


名曲『イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン』



この上のミュージックビデオにある「ペーパームーン」の写真を歌った曲です。
1933年にハロルド・アーレンが作曲した流行歌です。
ノスタルジックでスィートで、今もジャズのスタンダードとして演奏し続けられています。
この曲が1933年の「大恐慌」の時期に歌われたというのも、信じれば救われる的な歌詞を考えれば深いものがあるようにも・・・・・
この映画で描かれた時代に流行った歌として、劇中歌となっています。

この歌の名演集をご紹介
この歌といえばこの人
ナット・キング・コール


その娘のナタリー・コールも引き継いでいます。


しかし、女性シンガーで言えばこの人。

エラ・フィッツジェラルドの貫禄の歌


日本代表で由紀さおり


最後は映画に敬意を示して、サウンドトラックから
Paul Whiteman & his Orchestra
(3分25秒ぐらいからNG集があります)

It’s Only A Paper Moon
Say, it's only a paper moon(いわば、それはただの紙の月)
Sailing over a cardboard sea(ダンボールの海を航海する)
But it wouldn't be make-believe(でも、それは信じていないから)
If you believed in me(もしあなたが私を信じてくれれば)
Yes, it's only a canvas sky(ええ、それはただのカンバスの空)
Hanging over a muslin tree(ぶら下がったモスリンの木)
But it wouldn't be make-believe(でも、それは信じていないから)
If you believed in me(もしあなたが私を信じてくれれば)
Without your love(あなたの愛がなければ)
It's a honky tonk parade(それは調子はずれなパレード)
Without your love(あなたの愛がなければ)
It's a melody played in a penny arcade(それは安遊園地のメロディー)






posted by ヒラヒ・S at 17:26| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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