2017年12月15日

古典映画『グランドホテル』(1932年)運命の交差点/ネタバレ解説・大恐慌の時代・評価

映画『グランドホテル』(感想・解説 編)



原題 Grand Hotel
製作国 アメリカ
製作年 1932
上映時間 112分
監督 エドモンド・グールディング
原作 ヴィッキ・バウム
原作戯曲 ウィリアム・A・ドレイク


評価:★★★☆   3.5点



この映画は史上初のオールスター作品です。
そんな豪華スターを配しながら、その語られる物語には「暗い影」が見え隠れします。
その理由はやはり、当時1932年に世界を覆っていた「大恐慌」のせいではないかと思うのです・・・・・・

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映画『グランドホテル』予告

映画『グランドホテル』出演者

グルシンスカヤ(グレタ・ガルボ)/ガイゲルン男爵(ジョン・バリモア)/フレムヒェン:速記者/(ジョーン・クロフォード)/プライジング(ウォーレス・ビアリー)/クリンゲライン(ライオネル・バリモア)/オッテンクラーク博士(ルイス・ストーン)/センフ:給仕長(ジーン・ハーショルト)/ポーター(レオ・ホワイト)/シュゼット(ラファエラ・オッティアノ)
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映画『グランドホテル』解説

ストーリー検証


この映画を子細に見てみれば、驚くほどお金にまつわる、暗い物語だと驚きます。
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まずは、この映画のメインキャストの1人、ガイゲルン男爵はギャンブルを元にした借金4,000マルクのために、泥棒に身を落としています。

また、会社経営者プライジングは、倒産の危険を抱え合併により活路を見出そうとします。
そして、プライジングの会社に長年勤務してきたクリンゲラインは、その命が残り少ないと知らされ、全財産を最後に使い果たそうとします。

さらに、速記者のフレムヒェンはお金のために、プライジングの愛人になろうとします。
唯一お金の心配がない、バレリーナのグルシンスカヤも、かつての人気に陰りが見え、更にはようやく掴んだ愛する人も、お金のいざこざで失ってしまうのです。


よくも、まあ、ここまで暗いシチュエーションを語ったものだと感心しますが、それはたぶん当時の社会情勢からいって、明るい人生を描くことに無理があったからだと思うのです。

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なぜなら、この映画の公開年度1932年とは、世界を巻き込んだ経済史上の大事件『大恐慌』の真っ只中で、人々が餓え苦しんでいた時期でした・・・・・・・・・
(右プラカード:市民になりたい。放浪労働者は嫌だ。)

この映画は華やかなオールスター作品でありながら、『大恐慌』の痛みが映し込まれていると、思えてなりません。

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それを最も端的に表しているのが会社経営者プライジングです。

彼は「大恐慌」でいうところの資本家で、庶民から見れば「敵視」される存在であり、この映画での彼の運命を見ていると「貧しい人々を搾取」したがゆえに、罰を受けているように見えもします・・・・・・・・

大衆芸術としての映画、特にハリウッド映画は、常に庶民の欲求を充足する形で成立しているように思えます。
これもそんな1本ではないでしょうか。

関連レビュー:『大恐慌』時代の大衆の夢
『ある夜の出来事』

フランク・キャプラ監督のラブコメディー映画の元祖
大恐慌時代の金持ちお嬢様と失業者の恋


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映画『グランドホテル』解説

大恐慌


大恐慌とは、アメリカ合衆国ニューヨークのウォールストリートの株式市場で端を発した、株価の大暴落による経済的大混乱を差します。
世界大恐慌。 1929〜33年の間、世界中の資本主義諸国を襲った史上最大規模の恐慌。 1929年10月24日、ウォール街の株式市場の暴落(暗黒の木曜日)、10月29日(悲劇の火曜日)の大暴落に端を発し、全資本主義諸国に波及した。 米国の株価は80%以上下落、工業生産は1/3以上低落、失業者数1200万人、失業率25%。
<大恐慌時代のアメリカ>

この世界的規模で混乱を引き起こし、第二次世界大戦の原因だともいわれる経済的な損失が、人々の運命をどう変えたのかが数々の映画で語られています。

大恐慌を描いた映画


『素晴らしき哉、人生!』(1946年) 当ブログレビューあり
『アニー』 (1982年)
『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』(1976年)
『シンデレラマン』(2005年)
『晩餐八時』(1933年)
『北国の帝王』(1973年) 当ブログレビューあり
『怒りの葡萄』(1940年)
『グリーンマイル』(1999年) 当ブログレビューあり
『ストリートファイター』(1975年)
『黄昏に燃えて』 (1987年)
『ナティ物語』(1985年)
『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(1946年/1981年)
『わが街 セントルイス』(1993年)
『ペーパームーン』 (1973年) 当ブログレビューあり
『モダン・タイムス』(1936年)
『オー・ブラザー!』(2000年)
『廿日鼠と人間』(1939年/1992年)
『プレイス・イン・ザ・ハート』(1984年)
『カイロの紫のバラ』(1985年)
『シービスケット』(2003年) 当ブログレビューあり
『サリヴァンの旅』(1941年)
『ひとりぼっちの青春』(1969年)
『ボウイ&キーチ』(1974年)
『アラバマ物語』(1962年)
『タバコ・ロード』 (1941年)
『天国の約束』(1995年)  当ブログレビューあり
『蒼い記憶』(1995年)
『恋人たちのパレード』(2011年)
『カメレオンマン』(1983年)
『俺たちに明日はない』(1967年)

まだまだいっぱいありそうですが、思いつくままに挙げてみました・・・・・・

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映画『グランドホテル』評価

この作品は、映画史上に「オールスター・ムービー」と「群像劇」の2つの革新をもたらしました。
それゆえ映画技術に新たな形式を刻んだパイオニアとして、未来永劫語り継がれる作品であることは間違いありません。

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しかし、1932年からもう一世紀も経とうかという今、この作品を見て楽しいかと問われれば・・・・・

私個人としては、古さを感じざるを得ませんでした。
カメラが据えっぱなしで臨場感がないとか、カット割りのリズムが悠長だとか、今の映画技術を知った眼からは刺激が少なく見えます。

安定した重厚な表現といえば聞こえは良いですが、そこにはサイレント時代の表現が、まだ重きをなしているように見えます。
象徴的なのがグレタ・ガルボで、ここぞとばかりに歌舞伎のように、得意な見栄をきります。
しかし、考えてみれば、この映画が今私の心に響かないのは、この映画がオールスタームービーとして作られながら、私個人がこの出演者にそのスター性を感じられなかったというのが一番大きいのかもしれません。

この映画で一つ発見したのは、スターという存在も、実は時代を反映した存在で、その旬の時を過ぎてしまえば後世にまでその力を波及し得ないのでは無いかということでした。

そう考えると、この『グランドホテル』の生んだ、「オールスタームービーという様式」は永遠の命を持っても、「オールスタームービー」の効力はスターのオーラの減衰と共に消えていく定めなのでしょうか・・・・・


posted by ヒラヒ・S at 17:55| Comment(0) | アメリカ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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